五里霧中
「一体何をいってるんだ亮介は」
僕は冷や汗をかきながら尋ねる。
「僕たちがループしてるってどういうことだよ?」
「フォン。俺たちがここホーチミンに来てどれくらい経つ?」
亮介は僕に尋ねる。
「どれくらいって……」
僕は部屋を見渡す。
カレンダーらしきものを探したが部屋にはなかった。
「二週間くらいじゃないか? ハノイから陸路を伝ってここまで来ただろ?」
と、僕は答える。
「ああそうだな。じゃあ俺たちが来たのっていつだ」
「それって」
僕はなんとか日付を思い出そうとする。
でも6月のいつかということしか思い出せない。
6月の初旬だった気はするが。
「それだよ」
亮介は答える。
「俺はここ何日かとにかく日付を探した。町中至る所でそしてどこもかしこも探した」
そして亮介はこっちを向く。
「でもよぉ。見れないんだ」
「見れない?」
僕は不思議に尋ね返す。
「見れないってことはないだろ。だってこうしてテレビをつければ」
僕はテレビをつける。
しかし5分経っても今日が何日かわかることはなかった。
どのチャンネルにしても日付について伝えることはなかった。
「俺たちはよぉ。携帯も持ってないし……」
そして亮介は旅のバッグを逆さまにする。
骨董品やガム、靴べら、財布などが落ちたがそこにも日付がわかるようなものはなかった。
「俺たちは一体いつここに来たんだ?」
亮介がそう言う。
「そんなことはないだろ」
僕と亮介は部屋から出てホテルの案内人に尋ねる。
「今日って何日でしたっけ?」
ホテルの支配人はなぜか慌てた風な装いで、
「ちょっと待ってください」
と、そういって二度と僕たちの前に現れることはなかった。
「何日か前からずっとこんな感じだ」
亮介はいう。
ベトナムのホーチミンは年中常夏だ。
1年間で乾季と雨季はあるものの年中気温は三十度以上で季節の表情が薄い。
だからこうして何日かわかりづらいのは頷ける側面もある。
だが。だからと言って今日びカレンダーも携帯もテレビもありとあらゆる情報媒体が発達している中で日付を入手できないなんてことがあるだろうか?
「俺はよぉ」
亮介は言う。
「今日び探していたんだ。日付を。今日がいつなのかを。でもてんでダメだった」
亮介はそう静かに言い放つ。
「それって」
「フォン」
亮介は言った。
「俺たちももうすでに黒い霧という中にやらにいるのかもしれねぇ」




