カウボーイハットの男
床でのたうち回る亮介に対峙する僕とカウボーイハットの男。
「なんでって亮介を狙った?」
僕は奴に尋ねる。
「くっくっく」
男は可笑しそうに笑う。
周りは今だにお祭り騒ぎで僕たちの様子に気づかない。
「さっき言っただろう。神宮司亮介と言う男に興味があったのさ」
男は瓶の酒を一気に傾けてテーブルに落ち、
「いやぁ、噂に違わぬ男だったわけだ」
男はそう言ってニヤリと笑った。
「亮介に何をした?」
僕の問いかけに男はさらに笑って、
「お前知ってるぜ? 今神宮司と旅をしているお供の男の子だろ? 確か名前はローゼンフォンとか言ったっけな」
白い歯と金歯を見せながら男が言う。
「いい加減にしろ」
僕は瓶を叩き割ってその割れた先を男に向ける。
「僕だってそこらへんのいい子の坊ちゃんじゃないんだ。いつまでもそんな様子なら手加減はしない」
すると男はやれやれといった様子で、
「ちなみにさっきの酒だが毒入りなんかじゃない。ただのブラッディメアリーというトマトジュースをベースにした酒だぜ」
「えっ?」
よく見ると確かに亮介が飲み干したグラスは赤く、床に吐いたかに見えた血もトマトジュースのようだった。
「ただしーー」
男はニヤリと笑った。
「少々タバスコを入れさせてもらったがな」
そこで亮介が立ち上がり、
「ナンジャコリャーかれー!」
と叫んだ。
爆笑する男にベロを出す亮介。
僕はぽかんとする他なかった。
「僕たちを狙いに来たんじゃなかったのか?」
僕の問いに男は、
「だから言ってるだろ。神宮司という男を確かめに来たと」
そう言って男はかしこまった様子で帽子を取り、
「ウィンガー・V・ジュニアという。以後お見知り置きを」
と言って帽子をくるりと回し白い歯を見せてシニカルに微笑んだ。




