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ロストテクノロジーは誰のためにあるの?  作者: 維岡 真
第1部 赤い窓に宿りし君ーdisplay you on the red windowー
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午前の講義

 朝の食堂は混んでいた。

 植島らと同じ同期の霊気力者の卵たちが詰め掛けている。育ち盛りの彼らにとってこの無料の朝食は見過ごすわけにはいかない一大イベントであった。

「はっはそんなことがはっは」

 米を盛大に頬張り豪快に笑いながら食しているのは亀山かめやまだった。亀山は他の同期と食事をし朝起きた味噌カツ事件について話をしていた。

「しっバカ声が大きい」

 話をしている同期の軽部かるべが声を抑えるよういう。

「いや、だって味噌カツ程度でそんなぐはっ。味噌カツだよ味噌カツどふっ。なんで味噌カツなんかでそんなバカな喧嘩しなきゃデュフ。ってか味噌カツどこにあったの?」

 味噌汁、漬物、昆布の煮物を交互に頬張っては放出する。そんな彼はダイ○ン掃除機であった。

 ちなみに同じ食堂に植島も磯松も吉川もいた。植島は一人黙々と食事をし、磯松と吉川はいがみ合っていた。もっとも歪んでいるのは磯松だけで吉川へらへらとそれを受け流していた。

「あの二人がいざこざを起こすのはいつものことだけどよ、今日はよりによってあの植島をも巻き込んじまったんだぜ? 今日の特務訓練で何もなければいいけどよ……」

 軽部が心配そうな口調で話す。その様子に亀山は、

「味噌味噌とぅふ。味噌煮にカツバーガー。味噌田楽どぅふ」

 亀山はなおもぐわはははぐわはははと笑い米粒を盛大に発散させていた。


「えーであるからにしてお寿司。それもまたいとけんぴ」

 午前の座学の講義。

 真面目に受けているのは何名かの者だけであり多くは鼻くそをほじったりニンテンドーDSをしたり、チャンピオンを読んだりしている。

 亀山は豪快に笑い、磯松は寝て、植島は寡黙に講義を受けていた。

 各々が各々特性を持ちながらも皆霊気力者であることに驚きを隠せない。

 皆20代前後の若者であり、国家によってその地位が保証されているのであった。彼らの生活はこの寮生活に縛られているものの休日の外出は自由であり縛りは比較的薄かった。しかし、もし外に霊気力者であることがバレるような行動をとれば重い罰が与えられていた。有事の際にのみその異能力の行使が許可されており、その他の使用は一切禁じられていた。ちなみに有事というのは自らか仲間の命が危険に晒される場合に限り、その他の者が命の危険に犯されていても使用は一切禁じられていた。

「とまぁそうであるからにして何か質問はあるかね諸君」

 初老の教官がそういうと一人の学生がすっと手を挙げた。

「また君かね菅野くん」

 教官は渋い顔をして菅野に言った。

「納得のいかない箇所が少なくとも4箇所ありました」

 講義の後に菅野がこうして質問するのは日常茶飯事であった。真面目に講義を行う教官ならまだしも今回のような半分不真面目な教官の時は正直鬱陶しがられており、「怠惰泣かせの菅野」というあだ名すら一部の教官の間でついているくらいだった。

「この霊気力の祖と言われるオズマンデ=グリーンという人物なんですが、最近の研究特にユラーン博士の”霊気力の開闢”という論文では別の人物が霊気力の発見者ではないかと述べられており、そしてそれが通説となっていると思われるのですが……」

 菅野と教官がやり取りをしている時に亀山が隣で雑誌を読んでいる吉川に声をかけた。

「おい」

 ひそひそ話をする亀山に気づいた吉川は雑誌に目を通したまま「なんだい?」と質問をする。

「なんで味噌カツどぅふ、なんか植島のベッドだはっに擦りつけたんだ?」

 笑いを抑えるのが必死になりながら亀山が訊ねる。

「そりゃお前」

 吉川は雑誌を置いて手を頭の後ろに回し、

「あいついつも一人で寂しそうだから」

 と、答えた。

「どぅふ」

 ついつい亀山のこぼれ笑いが大きくなる。

 

 そして午後の特務訓練を迎える。


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