突然の来訪者
「いや、だからよぉ。あいつはあまちゃんなんだよ」
亮介がだらけるように机に突っ伏せる。
「社会のことを何にもわかっちゃいねー」
亮介がこの店に入って何杯目かになる酒を飲み干してグラスを勢いよく机に叩きつけた。
僕はエリーのことについていっているんだなと思った。
「うん。僕もそう思うよ」
僕は同意する。
亮介とバーテンダーで始めた酒豪バトルはいつの間にか周りに広がり、宴会みたくなっていた。
その隙間をぬって僕は亮介と会話していた。
「だけど彼女の気持ちもわかる気がするよ。だって平穏で幸せな生活がぶち壊されたんだから。相手を恨む気持ちもわかる気がするな」
僕はこの店に入って二杯目となるブルーベリーのカクテルを飲む。
お酒が飲めない僕は当然ノンアルだが。
「だから僕は助けてやりたいんだよ。彼女を。境遇が似てるからさ」
と、そういって亮介を見る。
「えっ誰のこといってんの?」
亮介は怪訝そうな目で僕を見てきた。
「えっ」
「だからぁ、お前はなにいっちゃってんの!?」
はい? お前こそなにいっちゃってんの?
「俺はー、ね? 里美のことをいってんの。わかる?」
と、亮介はぺしぺしと僕の頭を叩いてくる。
「いや、そんなのわかるわけないだろ!」
僕は乱暴に亮介の手を振りほどいた。
「里美はねぇ、静かに指加えながら待っていると思ったらね。急に突然くわっとなって、『もう私出ていく!』って言うんだよ。発情期じゃねーんだからおとなしく黙って座ってろってんだよ全く」
亮介はいつの間にか手に握りしめていたジョッキをだんと勢いよく机に叩きつけた。
「いや、わかるぜお前の気持ち」
すると横にいたカウボーイハットの男が話に参戦する。
「女ってのはまるで虚数なんだ。実体ってもんがなくて、嘘であり真である存在。俺たち男からは全く理解できない人種なんだぜ」
そう言って男はグラスをからりと言わせた。
「そうなんだよ。意味がわかんねーんだよ」
亮介は泣きじゃくる真似をする。
もはや酔いすぎて泣き上戸になっている気もするけど。
「わかるぜまぁ、こいつを飲みな」
そういって男はお酒を差し出してくる。
「お前いいやつだな」
亮介は男から差し出されたグラスを口に傾けた。
その瞬間亮介はブフォと口に含んだ酒をぶっぱなす。
「なんじゃこりゃ!」
亮介は床に倒れ転げ回った。
「おいっ!」
僕は急いで亮介の様子を見る。
「くっくっくっ」
カウボーイの男はシニカルに笑う。
「何をしたお前!」
僕は男に近寄り睨み付ける。
「いやね」
男は帽子をくいと押し上げ、
「天下の神宮司様を拝みたくなったのさ」
と、口端を吊り上げた。




