料理店にて
パーティーがお開きになる前に僕と亮介は退散することにした。
ビルの下まで送迎の人がついてきてお話をしたり僕たちは笑いながら時を過ごした。
1階の大広間に到着し、表玄関に止めてあるタクシーに向かった。
「それでは本日はありがとうございました」
コーヒーショップで僕たちを誘ってくれた藤原が付き添いで来てくれた。
「いえいえなんのなんの〜」
亮介はヘラヘラと返事する。
こういう誰に対してもカジュアルに接することができる亮介は素直にすごいと思うことがある。
そうしてタクシーを待っている時だった。
「離してよ」
少女が叫ぶ声がそこに聞こえた。
「なんだ?」
声のする方向を皆が向くと、警備員に捕らわれ騒ぐベトナム人少女がいた。
そしてその少女を僕たちは見覚えがあった。
「あれは……」
財布を盗んだ少女だった。
「離せって言ってんのよ」
少女がすごく抵抗したためか警備員の手から逃れ走り出す。
「コラ待ちなさい!」
警備員が後を追う。
「ちょっと!」
僕は近づいてくる少女に声をかけた。
少女は僕たちに気づき、驚いた表情でこちらを見るとばつが悪そうにして、そして脇を駆け抜けてビルの中へ入っていった。
「どうしたんでしょうか?」
藤原は困惑した顔で走り去った彼女を見ていた。
「ちょっと失礼」
すると突然亮介もフラフラとビルの中に入っていった。
「亮介!?」
僕は慌てて後を追った。
「離してよ」
中に入るとスーツ姿の男たちに少女は拘束されていた。
「聞き分けない奴だな」
男たちがジタバタする少女を押さえつける。
ベトナム人の少女はそれでも喚き散らしていた。
「おいおい物騒だねー」
酔っ払った亮介が陽気に近づいていった。
「なんだ貴様は?」
男の一人が亮介に尋ねる。
「いやね、俺もちょうどそいつに被害被っていたところでさ、ちょいと用があったんだ」
それならもう返しただろ、と少女は目で亮介を睨んだ。
「なんだ。それなら黙って見ていろ」
と、男の一人が素手を振り下そうとした瞬間亮介がその腕を掴んだ。
「何をする?」
男の向き先が亮介になる。
「いやー、少女に暴力はいけないんじゃないかな」
と、亮介はプハーと息を吐いて男にかける。
「うっ、酒くせー」
亮介の息に男は目をそらした。
「ほんじゃ、ま」
と亮介は少女を抱えて戻ってきた。
「離せ」
と少女は引っ掻こうとするも亮介はニコニコしながら千鳥足で戻ってきた。
僕はおおごとにならずに済んで良かったとため息をついた。
「だからなんであんなことをした」
料理店で僕と亮介と少女は向かい合っていた。
少女の前には料理が置いてあるが彼女はそれに手をつけようとしなかった。
「あのねぇ君。これは質問じゃなくて尋問なわけ。取調室ではカツ丼と決まっているようにホーチミンではソーイでしょうがこのバカちんが」
亮介が呆れながら言う。
少女は亮介に怒ったのか席を立った。
「待って」
去っていこうとする彼女に僕は声をかけた。
「確か4区がどうのこうのって言ってたじゃない。その話差し支えがないようなら話してよ」
ナイフを返した義理もあるのか彼女は僕の言葉には耳を貸してくればつが悪そうな顔をし、席へ戻ったのだった。




