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ロストテクノロジーは誰のためにあるの?  作者: 維岡 真
第2部 二人の英雄伝説ーLiberal wayfarerー ホーチミン編
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Run & ChaseⅢ

彼女も女性であるからいよいよ体力がなくなってきたのか僕たちとの差が目と鼻の先まで迫ってきている。

 

 彼女が曲がり角を左にターン。

 次いで亮介、最後に僕も同じ方向へ曲がった。

 

 曲がると彼女も亮介もいないことに気づく。しかしすぐに僕は曲がってすぐのところにある路地裏への通路に入ったのだとわかった。


 僕は路地裏に入る前に屋台の裏に立てかけてあるブラシを手にとって「Sorry」と言って持っていく。

 

 路地裏に入ると亮介が屋根の上を見てぼっと突っ立っている。亮介が見ている方を見るとどうやって登ったのか屋根に登った彼女が勝ち誇って見下ろしていた。

 

 僕はすかさずその手に持っているブラシ彼女めがけて投擲した。女性に向かって思い切り投げるのは気が進まなかったが、彼女は盗人であると自分に言い聞かせその感情を抑制した。ブラシはぐるんぐるんとと回転し死角となっていた彼女にぶち当たった。


「ぐっ」

 

 彼女は呻き倒れる。あわや屋根から落ちそうなところで必死にその端の瓦を掴みぶら下がる。


「亮介!」

「わかってんよ」

 

 亮介はすぐさま壁を蹴った反動で高く飛び彼女の足首を掴みぐいと引っ張った。

 彼女と亮介が落下する。

 痛そうに地面に伏せる彼女の腕を亮介がホールドしついに任務完了。


「へっへっへ、もうお前は逃しはしない。諦めの悪い相手で悪かったな」

 

 這いずり舐めるような悪い顔で亮介が言う。成年にも満たないであろう彼女の腕を拘束し悪のような顔を浮かべる亮介。側から見れば若い女性が男に襲われている構図にしか見えないであろう。

 

 ジタバタする彼女はその動きをやめたかと思うと今度は、

「きゃー!」と言って叫び出した。

「フォン」

 

 亮介が首を使ってジェスチャーをしてくる。事情も知らない人にこの構図を見られたまずいので「ごめん」と言って僕は彼女の口を手で塞いだ。そしてついでに彼女のポッケに入っているナイフを取り上げ、膨らんでいるジッッパー付きのポッケから亮介の折りたたみ式黒財布を取り出した。


「カード入ってるか?」と亮介が僕に訊ねてくる。

 

 僕は財布の中身を確認する。


「大丈夫みたい。現金が結構なくなってるみたいだけど」

 

 そう告げると「よし」と言って彼女の腕を解いた。疲れたのか彼女はその場で座り込んでキッと僕たちを睨んできた。

「よぉし」

 

 不自然な口角を上げ、指をポキパキ鳴らし、コクコクと小さくうなずきながら、

「んじゃ、サツに突き出すか」

 

 と慈悲もない決断を行なった。言葉はわからなくとも亮介の意図に気づいたのか彼女はくるりと踵を返し逃げ去っていった。


「おい!」

 

 僕は彼女を追おうとしたけど亮介が「もうやめとけ」と僕を制した。


「いや、でもナイフ返してないし……」

 

 僕の発言に亮介は目を丸くし、そしてプッと吹き出した。

「なんだよその優しさ。お前体の3分の1は優しさでできてるだろ? 盗人に凶器を返すとか。授業中取り上げたゲームを授業後に返す先生かよ」

 

 ひひひひひと腹を抱えて笑う亮介。


「うるさいな。別にいいだろ」


「いいんだよ。こっちも現金なま盗まれてんだから。その金でナイフ買ったと思えばいいんだよ」

 

 カード残っててよかったぜガキにはまだ早かったかな、とか言いながら財布を愛で亮介は財布をポッケにしまった。

 

 おおよそ僕たちの旅はこのように奇想天外なハプニングに襲われることも多い。亮介と旅を始めて二年になるので大方慣れてきたところだ。これは僕がこの自由奔放、適当、遮二無二、変人な亮介と世界中を旅する物語である。それはさながら野良猫のように自由気ままに旅をする二人の男の物語。



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