ホーチミンの路上にて
「で、国際の金融機関にでもいくって話だったよねぇ」
僕は亮介に尋ねる。
「ああ、そうだ」
亮介は頷く。
「じゃあ、なんで」
「ん?」
「こんなとこで乞食やってんだよ!」
僕は亮介に向かって吠えた。
ホーチミンの街中。
大量の車やバイクが通るのを眺め、クラクションが容赦なく鳴り響くのを聞きながら僕たちは歩道に座っていた。
そこらへんで拾ったザルを目の前において。
「いやな、いい機会だと思ってな。せっかくの旅なんだから一度はこういう乞食の経験もいいと思ってさ」
あっけらかんと答える亮介。
そもそもカードはチートだったかもな、とまでいう始末だ。
ヘーイらっしゃいらっしゃい、とパンパン手を叩きながら亮介が客引きをする。
「乞食はそんなことしねーよ。黙ってろよ」
ってか、カードがチートだって気づくの遅すぎだろ。
今更、無一文の旅をおっぱじめようってのかこいつは。
はぁーあ、と僕がため息をついて俯いていると「ヘイ」と女性の声がした。
顔を上げてみると20代の米国人っぽいお姉さんが二人いた。
ヒールを履いているのもあるが女性にしてはわりと背の高い方でショートパンツを履いて身につけているアクセサリーやカバンも高そうなものだった。
おそらく観光に来た人たちだろうと僕は思った。
「Are you a beger?(乞食やってるの?)」
と、聞いてきたので僕は「Yes.(そうだよ)」とぶっきらぼうに答えた。
全く恥ずかしいったらありゃしない。
すると二人の女性は「Oh, so cute!」と言ってキャッキャッする。
「Shall we play?(俺たちと遊ばない?)」
いつの間にか亮介が片方の女性の手を握っていた。
えー、と女性たちはしぶりながらも楽しそうに「この子と一緒だったらいいよ」と僕を指差して言った。
おそらくこの人たちの「play」はただの「play」ではなく大人の「play」だ。
冗談じゃないと僕は思いながらブルンブルン首を振った。
「おい、何言ってんだバカ。せっかくこんな美女たちと童貞を捨てるチャンスなんだぞ」
亮介が小突いてくる。
余計なお世話だと僕は亮介の小突きを小突き返す。
そんな簡単においそれといかないんだよ。こちとらそういうの苦手なんだから。昔のトラウマで。
と、亮介に憎しみの意を被せていたら、ふと目の端に一人の少女がとまった。
例のスリの少女だ。
僕は端から見ていたし自分で言うのもなんだけど記憶力はいい方なので特定することができた。
「おい、亮介」
僕は亮介を小突いてくいと首を少女の方にやった。
亮介もそれに気付いたらしく僕の方に頷いた。
「よし、じゃあ、フォン後は頼んだ。俺はこっちを担当する」
「了解……ってバカヤロー!」
なりふり構わずツッコミを入れた。こいつ頭に虫が沸いてんのかな?
「そうじゃなくていくよ!」
そう言って僕は亮介を引きずり連れていく。
「うっそーん!」
亮介はすごく名残惜しそうに女性たちにバイバイ手を振った。




