泥棒少女
かれこれあって僕と亮介は約2年間、一緒に旅を続けている。
僕は亮介と二年前、僕の母国イングランドで出会ったのだけれどそれが二人旅の始まりだ。
どうして一緒に旅をするようになったか話すと大変長くなるのでそれはまた別の機会にとっておきたい。
それからというものイングランドからロシアのモスクワ、ウラジオストク、中国の内モンゴル、雲南省、そしてベトナムのハノイときて現在のホーチミンに至る。
亮介は自由奔放で束縛が嫌なのでさっきのような騒動はある意味日常茶飯事だ。
毎日てんてこ舞いで飽きはしないのだがそれでも疲れてもういい加減にしろという気持ちの方が幾ばくか優っている。
僕たちは地元の小料理屋でご飯を食べていた。
小難しそうな中年の女性が一人で切り盛りしているいたって普通の個人経営の料理屋だ。
亮介はソーイ(Xoi)というフライドガーリックや鶏肉がライスの上に乗っている料理を、僕はベトナムでおそらく一番有名な麺料理フォーを注文した。
ソーイは東南アジアなどで食される海南鶏飯という料理に見た目は似ていた。
ジャパン出身の亮介には米料理は切っても切れないのだろう。
僕はあまりライスを好きではなかった。
とりわけ、ベトナムはインディカ米を使っていることが多いためモチモチとした食感は僕には合わなかった。
部屋の高くに設置されたテレビではインドネシア対タイという珍しい組み合わせプラスなんでここでやってるんだ?というサッカーの試合が映っていた。
それをなぜか亮介は見入って「そこだいけ!」などとどっちを応援しているのかわからないが盛り上がっていた。
「さて、そろそろ行くか」
ご飯を食べ終えて会計を済ませて店を出たところで事件は起きた。
財布にお釣りを納めていた亮介に一人の少女がぶつかり二人は倒れてしまう。
僕と同じくらいの年齢だろうか、その少女は起き上がると「すいません!」と謝って去って行った。
「おいててて。なんだってんだ……」
そして僕はとっさに違和を感じ亮介に、
「亮介、財布は?」
と、尋ねた。
亮介は身を弄り、あたりをわさわさと探って、
「ねぇ……」
と呟いた。
僕と亮介はガバッと走って去っていった少女の方を見た。
少女は遥か遠くに逃げて右折して姿を消した。
「*▲■●ーーーー!! あの女ッーー!」
亮介は急いで少女を追いかける。そして僕も慌ててそれについていくのであった。




