prologue
君こそ僕の物語
僕こそ君の物語
これぞ狂気の物語
世界を旅する。
誰にも縛られず。
何にも縛られず。
世界は感情によってその姿を変える。僕たちは世界というものをあたかもありのままの姿で存在していると思っている。でもそれは違う。一人一人の内面がそのまま世界となって表れるのだ。
自分の内面を変えれば自ずと世界は変わってくる。
旅から帰ってきたとき自分は変わっている。本を読み終えたとき自分は変わっている。元の自分ではない自分になっている。これは自分の内面が変化したということだ。内面が変わったから世界も姿を変えている。
「俺と一緒に来ないか?」
僕は差し出されたその手を取った。あいつと一緒に旅することを決意した。
なぜなら、僕はずっとずっと独りだった。
誰も自分のことを見てくれない。
街を歩く一般人、
ゴミを漁っている浮浪者、
小路の隅で佇んで座っている栄養失調者、
高級車に乗って新調したスーツを着ている富裕者、
銃や警棒を装備した警察官、
排水溝を走り回るドブネズミ。
そのような世界で僕は独り育ってきた。
けどその孤独があいつを引きつけた。
身勝手で、自由奔放で、我儘なあいつを。
そう考えると世界というのはプラスマイナスいい具合でできているのかもしれない。最もあいつといるときはマイナスの方が多いような気がするから結局、マイナスだらけのいやな世界かもしれないが。
「おーい、フォン何してんのよ。早く行くよ」
「ああ」
なんにせよあいつと出会ってから僕の人生は変わった。
イギリスの都会の裏社会で小さくコソコソ生きてきた泥水を啜って生きる茶色い小鼠のような僕が世界を駆け巡るような純白なワタリドリに変わった。
そういう意味ではあいつにはすごく感謝している。なんてことをあいつに言うと調子に乗りそうだから絶対に言わないが。紛れもなく僕の人生を変えてくれたのはあいつだ。あのときあの手を握った時から僕は本当の僕であり続けられるような気がした。
惨めでしょうもなく終わる僕をどん底から這い出させてくれたあいつ。
「そんなあいつも今やいなくなった」
そう。あいつはいなくなった。
だから僕はあいつがいないのであればどこまでも探しに行く。世界の端まで。世界の果てまで。あいつはそんな簡単にくたばるような玉ではないはずだ。
ナイフ握ってリュック背負って焚き火をくべてテント張ってキャンプしながらあいつは今も奔放に生きているはずだ。
だから僕は。
僕はどうするのだ?
旅をするのか? 続けるのか?
わからない。
ただ一つだけ言えることがある。
あいつと一緒に旅してきた約3年間で身についたあいつのスピリットを自由気ままな野良猫精神を引き継いでいる僕はどこでも大丈夫。何をしてても生きていける。
世界を旅する。
誰にも縛られずに。
何にも縛られずに。
これはそんな物語。
これぞ世紀の物語。




