新たなる幕開け
ーー事件から6ヶ月後。
植島、磯松、亀山は新たな宿舎にいた。
三人となってしまいだいぶ色褪せてしまったがそれでも彼らは新たな礎になるべく訓練を再開しようとしていた。
右腕を失った磯松もその後義手になり霊気力が使えなくなったが、それを補う体術で対霊気力戦闘要員として訓練を積むことにした。
亀山は1年間は目が見えないがそれでも治る予定であり最近では「光が舞い込んできてるぜとぅふ」と笑っていた。
そして植島は。
内臓の修復も完璧ではなかったが、車椅子ながら自身の能力を使うことができていた。医者によれば彼の能力自身が修繕に役立っており常人の倍以上のスピードで体が治っているとのことであった。
三人になった彼らは準備をしていた。
新たなる時代の幕開けに。霊気力が核となる世界構造への変化に。
始まった彼らの戦いは終わることなくそして沈むことはない。
失ったものは数え切れないがそれでも彼らは新たなる世明けの幕開けへ、そしてその幕が開いた時に異能の力の暴走を抑えることができる要員のために研鑽を積むのであった。
真っ赤な窓に映ったその残像が消えかかるように静かな灯火はいまかいまかとその時を待ちわびていた。
そして月日は流れ約20年後ーー2035年。
永田町内閣官房。
この日首相を含めた内閣メンバー及び秘密裏に招かれた各国の重鎮と民間企業の重鎮。
「霊気力を世の中に公表する」
と米国の外務大臣が言う。
「ちょっと待て」
「それはあまりに危険すぎる」
各国の重鎮が揃って否定の言葉を入れる。
「しかしこのままでは世界経済に限界がくる」
外務大臣は声を大にして言った。
「とにかく人類には新たな指針が必要なのだ。それはリーダーシップなどと言うチンケなものではない。かの産業革命がそうであったように世界大戦がそうであったように人ではない何かが必要なのだ」
彼の言うことを黙って聞く者、そして否定をする者賛同する者。それぞれの思惑が交錯する中で一人の男にタクトが振られた。
「Mr.神宮司どう思われるかね?」
日本の財閥の頂点に君臨する神宮司財団。
その総帥にして政府をも掌握する日本の長の意見が求められた。
彼の名前は神宮司龍士。彼はふんと鼻を鳴らすと、
「もう既に時は遅い」
と、一言言った。
「今世界の裏では霊気力、ひいてはオーパーツが主役になっている。世に暴き出されるのも時間の問題。それより問題は……」
「問題は?」
神宮司は黙って席を立った。
周りからため息と失望の声が聞こえた。
「いいのですかあのような形で席を立って?」
彼の補佐で高取元治が訊ねる。
「さっきも言ったろう。すでに時は遅いとそれに」
神宮司はひたと立ち止まり、
「わしの放った矢ならもうすでに動いておる」
と言葉を後にした。
そして物語は。
2035年ベトナムのホーチミンへと続く。
第1章 ーdisplay you on the red windowー (完)




