決戦後
植島が目をさますとそこは病室であった。
白い部屋にベッド。心拍数を測る機器が音を立てて動いていた。
植島は呼吸器と自身の体にたくさんのホースが刺されていることを感じた。
生きているのか。
それが初めの感想であった。
「おおっなんと」
見知らぬ白衣の男が入ってきた。髭を生やしメガネをかけた小太りの中年男性。おそらく医者であることは間違いなかった。
「奇跡の生還だ」
と笑顔でその医者はそう言った。
植島は喋りたくても呼吸器のせいで喋ることができなかった。
その植島の様子を察知したのか医者は、
「ああ、まだ動かない方がいい。なんせ君は体の内側から修復しているんだからね」
と、言った。
後でわかったことなのだが植島が最後に戦っていたのは無意識であった。無意識に自身の体内に電流を流し傷を塞ぎ、そして神経を強制的に動かしていた。傀儡の人形のように自身の体を意思とは関係なく自分の霊気力で彼は動かしていた。
「まったく限界の体を動かすなんて無茶をする」
と医者はため息をついた。
植島は仲間の様子が気がかりだった。
「後で知った人たちが来るからそれまで安静にしていること」
と、医者は病室から出て言った。
聞きたいことが山ほどあったが深い眠りが彼を襲った。
次に目を覚ますと見知った顔があった。
相田教官であった。
「よぉ無事か」
植島は体を起こそうとし、相田にサポートされて上体を起こした。
そしてゆっくりと呼吸器を外し、
「はい」
と呟いた。
「そうか」
相田は優しく微笑んだ。
「みんなは?」
植島の問いに間の表情が一瞬曇った。
「羽柴は敵と相打ちになりお前の同級生達もほとんどやられちまった。のうのうと生き残っちまったのは俺とお前と磯松と亀山くらいなもんだよ」
植島は被害の状況が計り知れなかったがそれでも磯松と亀山が生きていることに安堵した。
「一連の事件は政府によって伏せてもらった。洗脳と結界の霊気力で道路の陥没は水管工事のせいにしてもらった」
と事の顛末まで教えてもらった。
「さて」
相田が一呼吸置いて尋ねる。
「お前はどうした? 今回の一件でお前達を縛り付けるものはなくなった。家に戻ると言っても俺たちは止めることはできない」
生き残ったものとそうでないもの。
どちらにせよ家族はただ事ではなくそれを政府がどう始末するのかわかったことではなかった。
「しかし、それでもまだお前が霊気力の道を極めたいというのであればまたプログラムは再開される。三人になっちまったけどな」
と相田はそう言い残し、
「っと、怪我明けに話すようなことじゃなかったな。また来る」
と病室を後にした。
「俺は……」
一人残った病室で植島はそう呟いた。




