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プロローグ

ブックマーク、評価等よろしくお願します!

なお更新は日曜日と金曜日を予定しておりますので気長に待っていただければ幸いです。



それは何回目か分からない素振りの最中に起きた。


突如の轟音とともに、はるか山の頂からまるで何かの生き物の様に全てを飲み込む土石流が起きたのは・・・。



剣の道を歩んで早50年と半年。

世間からは現代の宮本武蔵など呼ばれ、数々の武勇伝を残し生きる伝説など謳われた私だが、案外終わりを迎えるなど一瞬だった。


物心着いた頃から木刀を振り続けていた私の手はそんじょそこらの刃物程度では傷すらつかないほど剣ダコで硬くなり、体を構築する骨や筋繊維は最早人間のそれとは思えないほどに発達を遂げている。


誰にも到達できない高みへと、振り返りもせず私は今まで剣だけを振り続けていた・・・。


目指すは歴史上最強の剣士。



今までもそれに恥じないように自分の腕を上げるため、妥協などせずそれだけを目標にやって来たのにそれももう無駄になってしまったのだな・・・。



徐々に近ずく土石流に、私は焦ることなく自らの運命を受け入れ50年もの間振り続けた愛用の刀を地面に突き刺す。


この刀ともさまざまな思い出がある。


ある時は襲いかかって来た暗殺者を又ある時はテロリスト、そして自分に向かってきた銃弾などをまるで紙を切るように一刀両断に出来るほどの業物。


代々受け継がれて来たこの刀と一緒に逝けるのならば私もそれで本望だ。



どこまでも蒼く澄んだ空を見上げて目を閉じる。


轟音を鳴り響かせながら忍び寄る土石流に飲み込まれ呼吸が苦しくなってきた。



身体中に無数の石が当たり痛みで目の前が暗闇に包まれ、そして私の命は潰えたのである・・・。




??????



目の前には小さな青い炎が静かにメラメラと燃えていた。


これはなんだ?と手を伸ばそうと試みるが、体がピクリとも動かない。そんな炎は段々とこちらに近づいてくると私の胸の中へと消えて行き、突如として頭から鈍器で殴られたような痛みが襲いかかって来た。



不意の激痛に顔を歪ませ、段々と呼吸も荒くなって行く。痛みには慣れている方だと自分は思っていたが、今感じたこの痛みは今までで感じた痛みの中を遥かに凌駕するものだった。



そうそれはまるで小さな穴に無理矢理、入りそうもない大きな物を入れるように。



しばらくの間その痛みが続いていると今度は私の体が何かに引っ張られるかのように、移動を開始する。



見知らぬ誰かの記憶が頭に入り込み私の記憶と混じり合って行く・・・。



頭が何かにねじ込まれるような感覚で吐き気に襲われるが今は吐く暇もない。



そうして私の意識は最悪な状態で覚醒をした・・・。


見たことのない天井。

ぶら下がるシャンデリアのようなもの。

そして周りには私を心配そうに見つめる数々の人々が存在していた。


な・・・、なんだこれ?わ、私は一体・・・。この人たちは誰だ?なぜ体がうまく動かない・・・?



「ああ・・・!お嬢様ああああ!ようやくおめざめになられだのでずねええええ!」



と目の前には俗に言うメイド服を着る赤毛の少女が涙と鼻水を垂れ流しながら、



「じいやああああ大変心配したのですぞおおおおお!」


これまた俗に言う執事服を着た初老の男性が目にハンカチを当てながら、



「「うううううううう!アリス姉様あああ!ぶじでよかたああああ」」


私の側まで駆け寄ったまだ幼く可愛い双子の子供達が、



「本当に良かった・・・。アリスどこか痛い所はないかい?」

「何かあったら母の私に言うのよ!心配したんだからね!」


ガバッと私に抱き着く異様に顔が整った2人の男性と女性がそれぞれ私に向かってそんな事を言って来たのである。



なぜこの人たちは私のことを『アリス』と呼ぶのか・・・?


私は一ノ宮 剣蔵 と言う名があり、決してアリスという名前ではないのだ。


そしてまず私はどう見ても男のはずだ。

お嬢様でもお姉様でも無い、ましてや60近くなる初老の男性を少女に見間違えるなどこの家族は一体何を血迷ったのだろうか・・・?


ひどく混乱するなか、私はふと目の前に立てかけられていた鏡に写る自分の姿を両目で捉え思わず「へ?」と可愛らしい間抜け声を上げてしまう。



普段から聞き慣れたしゃがれた声でなく少女特有のソプラノな声。


しかしながら今の私は鏡に映る自分の姿に衝撃を打たれそんな事も考えられなくなっていた。



割れ物を扱うようにゆっくりと自らの頬に手を伸ばして、ペタペタと触る。



「う・・・そ、なんで?」


そこには艶のある長い黒髪を携えたまるで雪の妖精のような美しい少女が、自らの頬を触る姿があったのだから。


「ほ、ほんっとうに私なのか・・・?」


ボソリと誰に聞かせることもない様な小さな声で呟くと又も激しい頭痛が襲う。



「うう・・・」

「!!。アリス大丈夫か!?」

「「お姉え様ああああ!!」」



と周りが心配する声を上げる中私の意識は又も深淵の闇の中へと溶けるようにして消えたのだった。

次回は金曜更新です。


そろそろもうひと作品である『友人Aはラブコメ見ながら無双する』も近々更新する予定dwす。


「続き読みたい」「はよ更新しろ!」と少しでも思ってくださった方がおりましたら是非感想や誤字報告等、ブックマークよろしくお願します。


最後にここまで読んで頂きありがとうございます。

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