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話し合わない僕らはタイトルをつけない。  作者: 夜更かしした僕らは夢をみない
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きれいな左手

今回はchuboyでございます!

更新ペースを上げようとのことで第一週と第三週水曜日も更新との事でした。そう考えると今週大変ですね。

物語も大変になっていきそうなのでRINさんと頑張っていきますよー(>_<)

第三章(ちゅーぼー。)



 ――学校を初めて訪れた次の日の朝だ。


 黒埜学園の付近のマンションで住むようにライトは誘導された。拳銃を持つような物騒な学園の近隣に住まわせるなんて“義手”が本当にライトの味方なのかどうかも疑わしい。


「おいっ? 義手。なんで俺の一クラス全員の殺人事件がニュースにならない」


 これはライトの癖だ。情報は身を護る智力となる。ソファに腰を下ろし歯を磨きながらテレビのリモコンを操作していた。――が、詮無しに賢いらしい義手に問いかけた。


『主が殺したのはガラクタです』


「あんなに血が通って個々に動いていた人間アレがか?」


『えぇ、そうです。あれはデモンストレーションですよ。失礼ながら主をテストさせて頂きました』


「自分の身を守るために人を躊躇なく殺せるかどうかのか?」


 皮肉っぽく義手に毒を吐いた。歯磨きを続けているため声音は弱いがひどくあきれた声。


『罪を感じることはございません。もともとそう教育された人間もどきなのです』


「そんなものをつくって何をしたい?」


『そんなのは“学園長”に聴いて下さい』


「またあの学園に行けって?」


『あなたがそれを求めているのです』


 いい加減機械音にあきれた。何も言わずテレビの電源を落としソファを立ち退いた。洗面所に向かい口をすすごうとすると、


『主。奥歯の磨きが足りません左手の一時的操作権限を拝借いたします』

 すると左手が勝手に動き出し、奥の触れないようにしていた歯を刺激した。


「いってぇぇぇええ! 虫歯を刺激するんじゃねぇ」


『なるほど、麻酔成分を分泌。反映効果を予測。“痛み止め”』


 するとライトの身体はほんの少し浮いたような気がした。左手が勝手に動き左手が口の中を何かしているのだろうが感覚が麻痺してよく分からない。しゃべろうと思っても上手く舌は回らず。

 ただただ洗面台の鏡の自分とにらめっこを続けた。歯磨きをしているのは間違いない。


『主、お待たせいたしました』


「まったくお節介が俺も自動で動くなら“義足”の方が楽で良かったよ」


『主が助けた青年の事でしょうか? 我はあの義足とは全く違う電脳経路と中枢機関をもっておりますので同族ではないことを補足しておきます』


(確かにアイツの場合は脚が機械となると勝手に歩いて無理矢理に学校。公衆の面前でいきなり自己紹介。はい、どーぞのパターンもあり得るわけだ。移動は楽そうだがお気の毒に)


「で、あの学校にある俺の探していたモノっていうのは?」


『“ホンモノ”でしょうか…………?』


「なんだそれ?」


「自分で命を削って探し出せって?」


『何も無条件で殺しに来ることはございません。学園の一生徒として“校則”を護れば良いのです』


「じゃあ、その“校則”っていうのは?」


『“学園長”にでも聴いて下さい』


「つまり、俺には登校する以外に選択肢はないって訳だ」


『――それは主の自由ですよ』


「あっ、そっ! どうせならやっぱり義足に無理矢理、連れられる方が良かったよ」


(何が自由だ。選択の自由が俺にあっても、選択肢が一つしかないんじゃねぇかよ)

 余計に心苦しい気持ちに唾を吐いた。たまたま洗面台だったがそれがどこであれ関係なかっただろう。この義手がしゃべる限りライトには不幸が降ってくる。


「シャワーを浴びる、外れろ」


『我は防水ですのでお構いなく』


「あぁ、クッソっ!」


『昨晩も言いました。やはり主はバカ……ギギギッギg……』

 ――――――――――――。


 シャワールームを出て、ワイシャツに袖を通し学校指定のブレザーとパンツを仕方なしに着た。ブレザーの中はなんでも良いらしいが命をやりとりをするときは正装をするのが…………前職の名残だ。


『【音声プログラム修復】。アァ――――アァアアア――。マイクテスト完了。結局、学校に行かれるのですね』


「お前は本当に“イカれて”いるのですね」


 全く相性の悪い機械だ。自分のが賢いと言い張るのに何も情報を与えない。高見の見物。

 これがホントに“頼れる機械”なのだろうか?


『主、お気をつけて行かれるように』


「主と呼ぶのも堅苦しいのも辞めろ。お前は“学園長”やらと繋がっているのか?」


『それは違います。私は個体として動いています』


「だったら、ライトで良い。それと堅苦しい話し方は辞めろと言った。二回目だぞお前バカ――――、」


『ライト、学校に行くよ。ほら早くしないと遅れちゃうよ』

 機械が怒りを認識するとは思えないが急に声は“女性の肉声”へとなった。機械音ではないと思う。ライトに『現代の音声プログラムの知識』はないのでなんとも言えないが聴いているのには申し分ない柔らかい女性の声だ。


「分かったよ。俺の命の“ほんの少し”はお前に任せるからな」


『ラジャーー』


 ――――ライトっ、必ず私を見つけてね。

 その声は学園内のどこかで発生していた。


 六日間の“黒埜学園”の潜入で実践から掴んだ情報と日記を自分のノートにまとめておくことにする。



 ※※※※※※※※※※※



 ――学園潜入一日目。

 ライトが完全に破壊したはずの教室は完璧に修復されていた。生徒の数も元の三十名。

 ライトが生徒を殺した時、顔面は識別出来ないほどに破壊されていたので同じ生徒なのかはわからない。

 この狂気の沙汰に警戒して俺は“学園長”に会わないこととする。

 この日は全校生徒との接触を避けトイレに丸一日籠もっていた。

 気づいた不快な点は二つ。

 授業に参加していなくても何も起こらないこと。

 そして、もう一つは下校時刻になっても学園から去る人数は少ないこと。



 ――学園潜入二日目。


 ライトは今日は朝会が始まってから少し遅れて教室に入った。

 前に立つ教師の話を真面目に聴いていて、俺の遅刻に無反応。これがどうやら“偽物”と言う奴らしい。特別へんな行動もなく殺気も感じなかった。授業には参加して放課はどこかに閉じこもる。ぼっち的な行動だが学園生活が送れていた。



 ――学園潜入三日目。


 今日は昨日と全く同じ行動を取ってみた。しかし、同じ行動を取っていたのは俺一人。“偽物”といえど人間性の強い生命体なのかもしれない。



 ――学園潜入四日目。


 今日は早朝から登校した。すでに俺以外の生徒は揃っていて他の生徒はやっぱり登校どころか下校すらしてないのかもしれない。放課の時間。様々な生徒が“名前を教えてくれないか”としゃべりかけてきた。“放課”になって突然だ。俺はあえてガン無視を決め込んだ嫌な奴だがどの生徒もただただにこやかに着いてきて授業が始まると着席した。

 殺気よりも執着心がなんだか恐い。



 ――学園潜入五日目。


 今日は名前を聞いてきた生徒を放課後、校舎裏に呼び出してみた。校舎が直線の一本道のため校舎裏も逃げ道のない一本道だった。

 無作為に選んだ女子生徒だったが、時間にちょうどぴったりに待ち合わせ場所にやってきた。“なんだか、緊張するね”など言ってきて俺の個人的でイレギュラーな呼び出しに偽物が順応していることに驚いた。やはり、名前を聞いてくるので『先に名乗れ』というと、“カンナ”と言った。だったらと“サノ=ライト”と名乗った瞬間、



 ――――――――バンッッ!!!!!!


 このノートを書いてる時点で生きてることは明白だろうけど。目の色を変えてうらやましそうに、そして狂ったように笑って発砲してきた。一般人の拳銃より俺のナイフ捌きの方が上回ったようで彼女は首を裂かれ血の華を咲かせた。

 彼女がどうなるのかマンションまで持ち込もうとしたが彼女を校門まで持って行くと突然消えた。



 ――学園潜入六日目。


 ようやく情報戦にきりが付いた。俺の予測通り、“カンナ”は再び教室にいた。

 なんとなくだが“校則”とやらが掴めてきた。


  ――校則一。 この学園で本名を名乗ってはならない。

  ――校則二。 この学園ではどんな学園生活を送っても良い。

  ――校則三。 この学園では殺人は許可されている。


 ※※※※※※※※※※※※


 それをまとめ終える。

 すると、左手が勝手にペンを持ち、丁寧な字で続きを書き出した。


 ※※※※※※※※※※※※


  ――校訓。

 この学園には“本物”と“偽物”が存在する。“本物”は学園の行き来も自由に出来、何もしなければ普通の学園生活を送れます。

 死者は“偽物”となり、学校を出られない代わりに何度殺されても学園内に生き返ることが出来ます。ただし、記憶は消去されます。

 “本物”は自らの望むモノを見つけ出しこの学校を出なさい。

 “偽物”は“本物”を殺したとき、“本物”となることが出来ます。

 ただし“偽物”が“偽物”を殺したとき、殺人を犯した“偽物”は永遠に消滅する。


 ※※※※※※※※※※※※

                   ――――――――――――――と。


 それを見てさらにライトはもう一度ペンを持った。



 ※※※※※※※※※※


 最後に、筆者、サノ=ライトの見解を残しておこう。


 つまりこの“黒埜学園”は死者と生者の行き着く学園。

 転校生は死者かもしれないし、生者かもしれない。

 “本物”と“偽物”を見分ける方法は“名前”だ。死者は記憶を失った時点で名前を忘れる。だからこそ校則を知らない転校生に“自己紹介”を求めるのだろう。

 しかし、それは“本物”も同じ事をするに違いない。自分の探したい相手を見つけるために名前を聞くのは当然のことだ。


 『君の名は?』


 その質問になんと答えるのかは非常に頭を使う心理ゲームとなるだろう。

 それこそがこの“黒埜学園”。いわば三途の川のような場所の成り立ちだ。


 このノートを拾った者は“本物”と仮定する。俺の言葉を信用するのであれば会いに来い。俺は三学年の三組にいる。転校生が生者だと祈る。筆者が死者ではないという証明はすでにこのノートで明白だ。


 ※※※※※※※※※※


 ライトは珍しく机の上で寝落ちしたらしい。朝日に目をつつかれながら自然と身体を起こした。


 ライトが転校してきて一週間になる。学園から支給されたブレザーを着て七回目の朝日。この季節は日の出は早く日没は遅い――――夏。


「――――懐かしいなぁ。平穏がまったく帰ってこない」


『今日も学校に行くの?』


 義手の女性の声ももう慣れた。なじみやすくて賢すぎるところが玉に瑕だが、パートナーとして刺激のある方が飽きないだろう。


 ペンを“左手”で持った。そしてノートのタイトル欄に向かって近づけ、


「“転校者を救う会”と丁寧に書いてくれ」


『りょーかい』


 そして、達筆な左手に記入を任せた。


 殺ししか出来ないライトだがこの純白な左腕と、新たな学園で殺しから出来る“救い”をしてみたいと思う。


 学校で今日、ノートを落としました。


今回は力強い一話かなぁと思います。特に補足することもないですが、僕は右利きです(=_=)

関係ないですね(^_^;)ぜひともお楽しみいただきたいと思いますm(_ _)m


次話2017/10/7(土)0時更新予定(^_^)/~

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