たった一人の……
最近、個人の作品が書き終わりましてほっとしていましたら、RIN様から催促が。正直に言います。。。忘れておりましたm(_ _)m
どうぞっ!
第十九章(ちゅーぼー。)
『結局、レフトは指示を聞いてくれなかったね…………。殺し屋殺し“元”組長さん』
ハルノの声は微笑んでいるようだった。それは――ライト自身が笑顔だったからなのかもしれない。
「全くだ。俺の指示を聞かない奴は初めてだな」
ライトの苦い過去。それは最後の任務にすべてのメンバーを失ったことだった。すべてはライトの“指示通り”に動いた結果だ。その結果はいうまでもなく、この左手のざまだ。
左手などの小さなモノを失うばかりか仲間を、“最愛の人”を亡くした。
『案外、ライトの指示通りじゃないほうが生き残っちゃうかもよ』
「あはは、言えてる。その前に俺が生き残らないとな」
ライトが引き締まって笑いが下手になるのは当然だった。殺し屋の経験がライトに囁くようだ。
――奴からは逃げろと。
対峙するのは人間味のないサイボーグ――【ギテーム】。
ただ運が良いのか悪いのか。今は“殺し屋”ではないのだから喧嘩上等だ。
生きた心地のしないライトと生き物を逸脱した【ギテーム】。
先に仕掛けるのはライトの方だった。一つ身体を低くすると盛んで無音の呼吸。足音のない滑走移動。【ギテーム】が右腕を振り上げた直後――【ギテーム】の右側へと身体を滑り込ませる。殴打に腕を伸ばしたとき肘は外を向く。
つまり、内側への調整は出来ても外側の負荷に非常に弱くなる。
「――――ハッ!」
無理矢理にライトの顔面を狙った【ギテーム】の肘関節を極めて逆側へとへし折った。そのまま後ろに回り込み手慣れのナイフでズバっと首をかっきる。
「……実際、こんなもんか」
ライトが残心のつもりでサイボーグを見ると切り裂いた首からは金属がむき出しになったのみ。下半身はそのまま腰から上がギリギリと180度半回転した。右腕も柔軟に元通りになると、
『ライト、避けてっ!』
なにも見えなかったのに左義手の声に従って、ただバックステップ。
――すると頬に赤い線。
その場に立ち尽くしていれば、ライトの顔は無残に断面を見せていただろう。
「なんだよ…………今の」
知覚できない速度は痛みを伴わない。それこそがさらに恐怖を生むというものだが、すかざずライトは拳銃を握った。今度は無駄撃ちを避けて狙いは“目”だ。視覚を潰すが一手をババンと抜き撃ちするも。
【ギテーム】がその弾丸を避けて見せた。
その時ライトは感じた…――コイツは学習してる。すべてはオウム返しのような攻撃。
装甲車の打撃には打撃を。ライトの切り裂きには同じく斬撃の予兆。
ならば残るは関節技。――もしくは目潰し。後者の線が色濃い。
「ハルノっ! なんとか出来るか?」
『歯を食いしばってね。男の子なんだから』
――――【放電 Lv.0】(シュロム)
「――あぁあぁぁあああああっぁ」
放電しない雷は自身を焦がす帯電となる。それはライトの身体を痺れさせて全身の至る痛覚神経を劇的に刺激する。それは強烈な痛みとなって――一瞬、意識が飛びかけた。
飛びかけたはずだった。
【ギテーム】の動きが特別遅く見えた。さっきまで見えなかった視覚が今、サイボーグを補足している。右腕の二指がライトの目にどんどんと肉薄して潰そうとしている。
『ライト、どんな気分?』
「最悪だ………………だけど、最強な気分だ」
【ギテーム】の肘に再び打撃を入れると次は関節を逆側にへし折る――――どころかライトの左義手が肘から先を捥いだ。痛覚だけで無く全神経の活性化がライトの動きを代えた。
「コイツのライフって無限だろ? っと」
死ねば“偽物”の身体は翌日完全に復活する。つまり、これだけで勝ったとはいえない。左義手以外はもろい人の肉体であるライトは即座にバックステップ。体内電撃により加速した能力が【ギテーム】のカウンターを躱す。
「俺にもライフ無限とか無いわけ?」
『そんなモノあるわけないでしょ』
ライトの提案にハルノは呆れた声を出す。今はなんとか余裕がある。これも殺し屋時代にはなかった義手の特別な力のおかげだ。とはいえ、その他の部位は脆い人間。たいしてサイボーグに弱点は見られない。
「せめて全身金属はずるくないか?」
『【ギテーム】にはないものがライトにはあるよ』
ハルノは秘策とばかりに企みいっぱいの声をだす。
「人間性とか?」
ライトは大雑把に答えを言うと、
『わかってるくせにはぐらかさないでよ』
ライトとハルノの思想は直接的には繋がってはいない。それでも“二人の愛”に言葉は要らなかった。
※この時、シンジは背筋に寒気を感じ、何気ないストレスが溜まったことだろう。
◆◇◆
「子供たちに殺し合いをさせて楽しいか?」
「よくここが分かりましたね。さすがは“佐野”さん」
男性と女性の声が行き来した静かな個室。学生に見えない二人の大人が睨み合って構えていた。
それは“ガイ”も知らない校内の隠しルートの先にある“校長室”である。
「黒埜学園という名称ですぐにわかったさ。今頃になって子供に会いたくなったかい。黒埜校長先生。いや、ライトの“生みの親”というべきかな」
佐野は拳銃を校長へと向けるとその姿を暴いて見せた。十五年前、ライトを拾ったときに走り去った背丈と同じ女性。その体躯。後ろ姿から見えた肉付き。佐野が間違う訳がなかった。
「本当に最強の殺し屋なのですね」
「捨てた息子に会うがために死者を生き返らせる黄泉の空間の創ったんだな?」
それが世界を狂わすと分かっていても彼女はそれをやったのだ。確信犯というべき存在。それは正義と悪で語れぬ行事。
「そうですね。私はただ息子にあうがために二十歳までの死者が生き返る学園を創立しました。ただ息子に会うことが出来なくて…………息子は生きているんだって実感しました」
校長は長い黒髪を垂らして穏やかな顔をしていた。想定外の未来予測に怒りをぶつけるのではなく想いにふけているようだ。
「そんな、あなたの私欲で多くの若者が狂った」
“佐野”はそんな悪気のない彼女を問いただすのではなく、罪をただ突きつけた。
「すべては息子を――ライトを見つけるための学園制度です。本名を探らせるのも生き返らせるのも。私が本名を語ることで捨ててしまった我が子に自ら償って、ライトを生き返らせることも」
佐野と黒埜学園長にはお互いに信じたい子の姿があるに違いない。母として自分が身を挺してでも守るのが息子だ、と思うのが非情にも子供を捨ててしまった学園長の覚悟だったのだ。
「ライトは死なない。ライトの仲間たちもな。それを“育ての親”である私が一番わかる」
だが、佐野が見てきた。ライトの姿は違う。
どんなに汚れ仕事をしようと決して絶望をしない。どん底から光を求め続けるそんな強い男になった。それはライトをずっとそばで見てきたからこそだ。
「――まったく。私の計画がすべて水の泡ですっ……………………。ライトを育ててくれてありがとう。そして、さようなら。一目でいいからライトのことが見たかった」
ライトをこの学園に誘導したのにもかかわらず、体育館には一度も来てはくれなかった。そんな未練を残して死ぬのに、
――“大人”の私はもう生き返ることはできない。
だって“佐野”の姿を知る標的はいないのだから。
ちゅーぼー。でした
次回は2017/12/23零時。私の次回更新はクリスマスを過ぎてますね。
サンタさんっ! 私に絶対に寒くならないコートをくださいなっ!
皆様は何を願う?




