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The GUN  作者: 中井
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蘇る正義感と隠れた完殺願望

亡命者の護衛作戦で使った銃のメンテナンスをしていた。

しかし思うように手が進まない。

作戦中にめぐみが言った言葉が頭の中を跳ね返り回っている。


「薬に適性がなければ、死ぬ。」



珍しく俺の心は静まっている。


しばらくこんな気持ちになったことはなかった。


おれの運命を決めたあの日、この国に対する憎しみだけがおれの中にあったが、なぜか今はちがう。

これまでにない感情だ。

強いていうなら正義感?みたいな感じだ。

薬を投与して、他人を生贄にするなど正気の沙汰じゃない。


なぜかおれの中には

「殺してしまわなければいけない。」

という考えがあった。


最近調子が悪いのか戦いを望んでいる気がする。

銃を握ると敵をぶち殺したいと思う。

演習をしていると楽しいと思う。

体術訓練は投げ飛ばされると、無意識に反撃に移る。


もはや握ったことないような銃でも100メートルからの射撃で5センチ以内に収められる。


隠れていた人格が出てきたようだ。

自分でも気持ち悪い。


おそらく学校で先輩を殺したのはこの感覚なんだろう。





メンテナンスを終えて自室に戻ろうとしていると、兵舎の廊下で隊長と旺田少佐が話していた。


「ハンブラビ帝国の人体研究所を近々落とす。」


どうやら強行作戦が開始されるらしい。



フェンリルコンバット大隊は国防軍の中でもかなりの権限を持った部隊だ。

フェンリルコンバット大隊は上層部の指令を待たずに独断で敵を攻撃できる。


火虎大佐はそんなフェンリルコンバット大隊の隊長である。

その気になればこの国の首相でも殺しかねない。



そんな隊長が敵施設の壊滅を開始しようとしていた。


まぁどうでもいいことだ。

下された命令を俺はこなすだけだ。


少し軍人くさくなってきた。

それもいいか、軍人だし。




とりあえず人体研究所が撃滅されれば亡命してきた人たちが喜ぶかもしれない。


めぐみにこのことを伝えておこう。


めぐみは基地内の特設宿泊施設で他の亡命してきた人たちと暮らしていた。

とりあえずめぐみにあってこのことを言った。


「もうすぐハンブラビ帝国の人体研究所に攻撃を仕掛ける。」


するとめぐみは前とは違った柔らかい表情をして俺に言ってきた。


「ありがとう、これで私のような目に合う人が減るわ。」



よく自分以外の人間の心配が出来る。

まるで天使ではないか。

自分なら他人の心配はまずしない。


それとめぐみの柔らかい表情がやけに魅力的に見えた。

なんでかな、これまで屑女しか見てこなかったから普通でもいい女に見えるのかな。

いやちがう、めぐみがガチでいい女なのだろう。


どうでもいいことばかり考えてしまった。

しばらくめぐみと楽しく喋っていた。すると基地の警報音がいきなりなり始めた。



敵が襲撃してきた。


隊長は敵の追撃隊が亡命者たちを強襲することを恐れて基地の中の特設宿泊施設に彼らを泊めていたのだが、どうやら隊長の感が当たったようだ。


しかしあることに気がついてしまった。


桜木大尉と犬神中尉と佐々木兵曹長は今日は非番で基地にいない。


旺田少佐は愛銃をメンテナンスに出していて出撃できない。


前衛で敵を引きつけることができるのは俺しかいない。


あ〜あ、死ぬかも。

それでも行くしかない。

メンテナンスしたMP5を手に握って基地の外に単体で出た。

後衛はすでに隊長が準備を整えている。

隊長がスタンバイしてるから大丈夫だろう。







大丈夫じゃなかった。

敵は最新鋭の軽量装備で忍者のように斬り込んできた。

MP5の弾丸が敵の顔スレスレを通過するが、直撃しない。


敵はガチの特殊交戦部隊を送り込んできた。


俺のMP5は景気良く弾丸を撃ち出してはいるが一向に当たらない。

そのうちスペアのマガジンも使い切り、敵の反撃が来る。

隊長が何人か始末したが、それでも敵は10人以上残っている。


サイドアーム(予備のピストルなど)に手を伸ばしてホルスターから抜き出した。

サイドアームはM1911 というピストルで口径が大きく致命傷をつくりやすい。


敵が攻めてきた。

10人以上が一斉に俺に向かって突撃してきた。

その瞬間、目の前の光景が明らかに変わった。


体が無意識に反応して行く。

敵が体のどこを狙っているかよくわかる。

そこに弾丸を撃ちこまれる前に体を移動させて弾丸をうまくかわす。


勝手に手が動いて敵の顔面に45口径の弾丸を撃ち込んで行く。


何も考えていないが体が動く。


ズドンッズドンッと音がすると敵が確実に綺麗な穴を開けて死ぬ。


口から暴言が飛び出る。

「その程度かドテチン野郎どもが! あの世で仲間同士ケツでも舐めてろ!」


気がつくと周りには瀕死の敵と完全な死体が転がっていた。


瀕死の敵は俺に助けを求めているのか俺に手を伸ばす。


そんな敵に俺は

「地獄で命乞いでもしてみろ、この馬糞野郎。」

なんて酷い言葉で言ってから引き金を引いた。

ズドンッ


なぜだろう、数ヶ月前まで虐められてた糞ガキがこっちの世界ですでに功名を挙げている。


おかしくなりそうだ、自分がおかしいのか、この巷がおかしいのかさっぱりわからない。


「お前、エグい動きしてたな。入隊数ヶ月の若造とは思えねぇよ。」

隊長から無線が入った。


「体が無意識に反応して敵を撃ち殺したんですよ。」


「それは実力じゃねえな、生来より持って生まれたそれだ。 なんて言うんだ、え〜っと、そうだ才能だ。」


こんな才能自分でも手に余す。

このわけのわからん才能が先輩を殺した。


何故かこの才能が素晴らしく思えてきた。

これがあればしたいことができる、俺を社会から捨てた連中を撃滅できる。


この才能があれば、ハンブラビ帝国でも撃滅できる。




まるでサイコパスだ。





しかし何故か大きな銃を使うと当たらない。

MP5はそんなに大きいわけではない、さらには命中精度もいいはずだ、だが当たらない。


逆に古いはずのM1911 がびっくりするほど当たった。


どうやらピストルなら当たるらしい。

武器を新調しよう。

新しい武器はM1911二丁とSAAと言うリボルバーだ。

これさえあれば近々ある作戦にも対応できるはずだ。


この時から俺は敵を殺すことしか頭になくなった。


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