米原死す
前回のあらすじ
崩壊前の世界に戻った米原とエーコは、三種の神器を使って女神を倒した。
「涼様ぁ〜、お弁当できました〜」
エプロンを着たエーコが猪の丸干し弁当を抱えて走ってきた。
「愛妻弁当ね!ラブラブですわね〜」
エーコの母、A夫人がニヤニヤしながら話しかけてくる。
女神との戦いから半年が過ぎた。
半年の間にアシヲ(佐藤A)は、初めての村周辺を統治して【イズモ大国】を作って王様になった。アシヲはやればできる子なのだ。
俺、米原涼の米原王国は、元スルガ大陸の海上をはじめ周辺諸国を吸収し、【ヤマト大国】と改名した。
現在、イズモ大国とヤマト大国で世界のほとんどを治めている。
俺は今、自分の国であるヤマト大国ではなく、イズモ大国の首都【初めての村】に住んでいる。
それは何故かと言うと、
「涼様、お腹の中のエヒメちゃんが早く帰って来てねって言ってまチュよ〜」
エーコが妊娠7ヶ月になり、安心して出産する為に里帰りしているのだ。
「産まれるまで女の子かどうか分からないぞ?男の子だったらどうするんだよ?」
A姫だからエヒメちゃん、まぁ、男の子だったらA王子だからエオウジ?呼びにくいな!
ちなみに、四天王達やシロも妊娠で療養中だ。
四天王達のはモチロン俺の子だ。
シロのはアシヲの子だ……たぶん。
「じゃあ、行ってくる。パパッと倒して夕方には帰ってくるから、あまり無理して動くなよ?」
「はい!行ってらっしゃ〜い!」
エーコが大きなお腹を抱えながらブンブン手を振った。
「さてっ、待ってろよ邪神!」
俺は鞘に入った神剣を腰にさして、はじめての村の裏にある、黄泉比良坂ダンジョンに向かった。
「あれ?涼様、神剣忘れてます〜?」
家に戻ったエーコが、祭壇に飾られた【剣】【鏡】【勾玉】を見て、不思議そうに首をかしげた。
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俺はダンジョン入り口をふさぐ岩の前まで来ていた。
「ここに邪神が居るのか、神剣で弱らせて捕まえてやる!」
俺の作戦はこうだ。
ダンジョンにいる邪神を神剣で叩きまくってチートを奪い、捕まえて村に連れて行き、エーコに鏡でトドメを刺してもらう。
本当はエーコをダンジョンに連れて来た方が良いのだが、お腹の子供が心配なので、この方法をとった。
「さて、行くか……」
俺は入り口の岩を横にずらした。
「邪神!観念しろ!!……っえ!?」
飛び込んだ俺が見たのは、広い部屋にギッシリと詰まった、数え切れないほどの邪神の群だった……。
俺はとっさに神剣を鞘から抜いたが、その剣は、エーコの神剣ではなく、女神に貰ってから一度も使った事がなかった、俺の普通の勇者の剣だった。
あ……鞘の形が同じだから間違えて持って来ちゃった……。
そして、米原涼は死んだ……。
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ブクブクブクブクッ!
気付くと俺は、海の中に潜っていた。
視界の先に見覚えのある少女がいた。
弟橘!
そうだ、車道の手すりが崩れて海に落ちた高校の同級生、弟橘姫を助けるために海に飛び込んだんだった。
「「ぷはぁっ!」」
俺は必死に彼女の手をつかんで水面へと顔をだした。
「大和君……」
彼女は驚いた様な顔で俺を見つめてきた。
そう、俺の名前は大和建人、普通の何処にでもいる男子高校生だ。何かさっきまで違う名前で呼ばれていた気がするが思い出せない。
長い夢をみていた様な気がしてボーッとしていると、彼女が涙を流し泣きはじめた。
「何だろ……、何故か大和君、助けに来てくれないって思って諦めてた……。ちゃんと助けに来てくれたんだね。ありがとう」
海から顔だけを出したまま2人見つめ合う。2人とも学校の制服に海水が入ってしまっているが全然気にならない。
彼女が涙で、ぐしゃぐしゃになった顔でキスをして来た。
俺達、付き合ってもいないのに、全く抵抗がなくて、ずっと昔からそうしてたかの様にいつまでも続けた……。
これで本編はおしまいです。
最後まで読んでくださり本当にありがとうございます!
あと1話だけショートストーリーと、あとがきがあります。
あと少しですがよろしくお願いします(๑′ᴗ‵๑)




