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第1章 氷の壁

 初の投稿となります。やんまあという者です。

 この度小説を書くという人生初の試みをしたいと思い、せっかくなので完結まで作成・公開をするという目標を掲げ、この場での投稿に至りました。

 始めに申しますと、上でも書きましたように自分は完全に素人です。プロや本気で小説を書かれている方に対して失礼かとは思いますが、半ば趣味の範疇でこの小説を書かせていただいています。ですので作中の文法や表現に乏しく、せっかく見て下さった読者の方々に不快な思いをさせてしまうことがあるかもしれません。

 また、このサイトを利用されているどの作者様も小説の定期的な投稿をされていると思いますが、今の自分にはそれができる自信がありません。本当に自分のペースで小説を書いていこうと考えております。

 ですが、そんな自分の作品を少しでも目に通していただき、叱咤激励・ご指導ご鞭撻を下さる読者様がいらっしゃれば、それらを喜んで受け止め、今後の自分の邁進のための糧とできるよう努力します。

 どうぞ、よろしくお願いいたします。

 

 もはやそこにはヒトを含む全ての命を拒絶するかのような、荒廃した大地のみが存在していた。

 かつては黄金の国と呼ばれていたらしいこの地も、今ではすっかり白銀に染まった厳寒凍土と化してしまっている。

 永遠に続く吹雪、幾重にも連なり陸地を囲む流氷、草木さえも見当たらない乾いた大地。ヒトが文明を興すどころか、生物が命を育んでいたことさえも疑わしいこの不毛の地で、今でも奇跡的に生き延びている1人のヒトの姿がそこにあった。


「…ふぅ~っ、やっとここまでこられたぁ~!」


 それは、年端もいかぬ1人の少女であった。その身はボロボロの布を幾重にも覆うことで辛うじて寒さを凌いでいた。しかしこの猛吹雪の中でも彼女は決して笑顔を絶やさず、自身の目的地に向けてその小さな足で何日間も険しい雪道を歩み続けていたのである。

 そしてその背中にはその体と同じくらいの大きさの荷物が抱えられ、その右脇にはこれまたその小さな体に似つかわぬ巨大な古本や地図が抱えられていた。


「…あ!丁度いいところでかまくらはっけ~ん♪」


 流石に体に堪えたのであろう。少女は偶然雪道の途中で見つけた天然のかまくらに、何の躊躇もなしに転がり込んだ。


 ―ドサッ!

「ちょ、ちょっときゅうけ~い…、ハァ、ハァ…。」


 外は未だに吹雪いているが、かまくらの中はまるで人肌のように暖かく、長旅で疲弊した少女を温かく迎え入れているようであった。

 少女は背中の大荷物をクッション代わりにしながらその場に座り込んだ。

 その途端、布で隠れていた2本の可愛らしい小さなおさげがピョコッと顔を出す。そして少女は座ったまま、大事に抱えていた古本と地図を足元でそっと広げ始めた。


「う~ん…、もう少し西寄りだったのかなぁ?この数日間、人里にすらたどり着かないなんて…。まだまだ時間がかかりそうだなぁ。」


 ハァ…と白いため息をつきながら、少女はそのようなことを呟く。


 少女が小さな左手で開き、めくっている巨大な古本は、御伽話をまとめた説話集のようなものである。そしてその見開きには、長い年月によってかすれてしまった文字の列と、その中央に大昔のこの地の挿絵が描かれていた。

 それに対し、少女が小さな右手の人差し指で追いながら見ている地図は、今のこの地の場所を示すものである。

 この地はその昔、周辺の小島等を除くと大きく4つの陸地にわかれていた。“ホッカイドウ”、“ホンシュウ”、“シコク”、“キュウシュウ”という名で分かれていたことが、古本の見開きでも説明されている。

 しかしその地図にはホッカイドウとキュウシュウに加え、本来「く」の字を模るはずのホンシュウに当たる陸地が存在していなかった。代わりにホンシュウの「く」の字の折れ曲がる部分がまるで巨大な円でくり抜かれたようになっており、その円の中央にはかつてのこの地の象徴とされた“フジヤマ”とその周辺が1つの島として孤立していた。

 さらに元ホンシュウの北東部は、ホッカイドウらしき陸地と、南西部はキュウシュウらしき陸地とそれぞれつながっており、シコクらしき陸地は存在していた跡すらなかった。


「本当にこんな場所の近くに兄ちゃんがいるのかなぁ…。―へっくし!」


 少女が地図上で指差すその場所は、新たに形成されたこの地を北東側から“オツシュウ”、“ヘイシュウ”に分断している部分にある孤島“コウシュウ”のことである。そして少女が目指している地はそのコウシュウに最も近いとされる場所、オツシュウの最南端であった。


「その前に、アレをどうにか越えなくっちゃならないんだよねぇ~…。」


 そう呟きながら少女がかまくらの入り口から小さな頭をひょっこり出し、そのくりっとした大きな瞳で見つめる先にあるものは―。


 ―この世のモノとは思えないほどの巨大な氷の壁であった。


 それは近くで見ると天を突くのではと思えるほど高く、陸地を横断しているのではと思えるほど長く続く天然の国境のようであった。

 厳密に言うとこれは国境でも壁でもなく、過去に世界で起きた謎の地殻変動によって分断されたホンシュウの北部がホッカイドウとぶつかった際に生じた山脈である、と少女の古本にて解説されていた。この少女にとって壁のように見えるのは、猛吹雪によって起こる津波がそのまま山脈にぶつかりながら凍りつくことでコーティングを施され、それが長い年月の中で何層も重なることで氷の壁を演出しているように思わせている為である。


「…」


 この目の前に広がる氷の天然国境は少女が知っている山のイメージを容易く凌駕し、絶望感までも思い起こさせるほどであった。事実この壁は地殻変動が起こった時から陸地同士の繋ぎ目にはなったものの、物理的に双方の陸地からのヒトの侵入も脱出も拒み続け、今でも姿を変えずにそこで立ち尽くしているのだ。


(…何がどうなったら、こんなモノができるんだろう?)


 少女が考えれば考えるほど謎が深まるばかりの壁の起源。そしてそれは彼女の脳を疲れさせるには十分すぎるものであった。


(ん、こんな場所だと流石にまずいけど…、1分…だけ…。)


 そして彼女は多少の暖がとれているとはいえ、夜のように暗い猛吹雪の中で熟睡を始めてしまった。まだ体が未成熟な上に、長い雪道でかなり体力を消耗している少女にとって、それは死へダイブすることと同義である―はずだった。


 ―


「…んん、ふぁあ…。よく寝たぁ~…。」


 少女は奇跡的にも瞼を開くことができた。それはすなわち猛吹雪の中で無事生き延びたことを意味する。しかしその場で完全に覚醒した少女は流石に驚きを隠さずにはいられなかった。


 ―ガバッ!

「…って、あれ!?あたし生きてる!それに…ここどこ?」


 あの時少女は猛吹雪の中で偶然見つけた天然かまくらの中で、不本意ながらも瞼を閉じてしまっていたはずだった。しかし目が覚めた少女がいた場所はかまくらの中ではなく、レンガの壁でできた民家の中の、少女にとって少し大きめなベッドの上であった。


「―おや、目が覚めたようだね。」


 少女が半身を起こした状態で右に顔を向けると、そこには知的で穏やかながらも力強い雰囲気の女性が以前少女の着ていた服を抱えて立っていた。その後ろでは暖炉の薪が時折パチパチと音を立てている。

 女性の左目は眼帯で覆われているが、対となる右目はしっかりと寝起きの少女を捉えていた。


「あれれ?それあたしの服…じゃあ―あれ!?いつの間に着替えてる!?」


 少女は着ていた服の感触や、おさげのほどけたこげ茶の髪にやっと気づき、先ほどとは違う理由で慌てはじめる。


「ハハハ、あの状態から起きれば驚くのも無理はない。まずは水を飲んで落ち着くといい。」


 そう言いながら隻眼の女性は一旦少女の着替えをソファの上に置き、小さなテーブルの上にある瓶とガラスのコップを持ち、水を一杯注いでそのまま目をパチクリさせたままの少女の手元に差し出す。少女は遠慮する間もなく受け取るとそれを一気に飲み干した。


―ゴクッ ゴクッ

「…ふぅ~、ありがとうお姉ちゃん。…え、えっと―」

「まずはお嬢ちゃんのことを教えてもらおうかな。たまたま野暮用で私が通りかかったあの猛吹雪の中を独りで過ごしていた挙句、下手すれば死んでいたかもしれない状況は尋常ではないからね。」


 女性は少し厳しい口調で少女の話を遮った。それに少し怯んだ少女であったが、この女性が自分を助けてくれたんだと確信し安堵を覚えたことで、自身のことを話し始める整理ができた。


「―あ、あたしの名前はカナ、阿佐美カナというの。」

「阿佐美カナ…ちゃんだね。カナちゃんは一体なぜあの吹雪の中を歩いていたんだい?」


 女性は再び穏やかな口調でカナに問いかける。


「あたし…、兄ちゃんを探しているの。あたしが本当に小さかった頃からいたのは知っていたんだけど、ハッキリとは覚えていなかったからあんまり気にしてはいなかったの。でもある日、突然あたしの夢の中に出てくるようになったの!それから居ても立ってもいられなくなって、つい最近あたしの住んでいた町の皆に内緒で出てきちゃったの。」


 カナはつい安心して余計なことまで口走ってしまった、と思った。こんな理由だとただの家出娘と思われてこのまま保護され、町に引き返すことになるかもしれない―。

 しかし女性は顔つきを変えずに、カナの話に聴き入っていた。まるでカナが今何を考えているか既にわかっているかのように。


「…そうか、兄さんに会うためにずっと歩いて来たんだね。兄さんは…カナちゃんにとってそんなに大事なヒトなのかい?」

「あ、でも本当の兄ちゃんじゃないの。あたしがまだ本当に小さかった頃、いつもあたしの面倒を見てくれていたみたいなんだけど…。あたしが覚えているのは、兄ちゃんの名前が『天舞てんまクロス』ということだけ…。」


 少し切なげな表情を見せたカナだが、その後すぐに笑顔を見せる。


「でもね、夢に出てきた兄ちゃんの話をあたしの祖父ちゃんにしたら、祖父ちゃんがこの地図と本を見せてくれて『もしかしたらここにいるかもしれん』って教えてくれたの!きっとあの壁の向こうに兄ちゃんはいるんだって思って、すごく嬉しくなったの!」


 そう言いながら、カナはベッドの上から自分の荷物の置いてある方を指差した。


「あたしは祖父ちゃんにこの本と地図をもらった時からずっと手放さずに持ち歩いているの。あの壁を越えて兄ちゃんと会うまでの間のお守りとして。それと…。」

「それと…?」


 いつの間にか女性はカナの瞳に負けないほど右目を大きく開きながら、その先の話を聴き取ろうとしていた。


「…日本がこんなどうしようもない世界になってしまった、その真実を知るために―。」

 素人の書いた初の文章を最後まで読んでいただき、ありがとうございました。しばらく続きますので、今後もお付き合いして下さると幸いです。

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