2月の下り坂
下を向いたら、君がいたんです。
「あ、雪だ」
てくてく歩いてたら、ちらちら雪が舞いだした。
「積もらないかな・・・」
積もったらいいな。
そしたらまたあの人に会えるかな、なんていつも思ってしまう。
雪を見るとさ、テンション上がらない?
雪うさぎ作ったり、雪だるま作ったり、雪合戦したくならない?なるよね?
クラスの友人にそんな話したら
「ならない。寒い」
って一蹴されたけど。
私は、なる!
あの日も朝から凄い積雪で、喜び勇んで愛犬連れて外に出たんだよね。
友人誘っても遊んでくれないのは分かりきってたし。
一面の雪景色が見たくていつもは通らない道を選んだら誰もいなくて、もちろん足跡なんて付いてない真っ白な地面で。
そんな地面見ちゃったら、自分の足跡付けたくなるじゃない?
足跡付けてしばらく歩いたら、滑りたくなるでしょ?
それが下り坂なら、なおさら!
牡丹雪がしんしん降り続けてるし、可愛い愛犬も楽しそうだし、周りに人はいないし、言うことない!
と思って、滑りながら坂道を下ってしまってのです。
もちろん、お尻で滑ったわけじゃないから。
軽い走り幅跳びに近いかなぁ。あくまで軽い、だけど。
1、2、3!の2で踏み切って3!でブレーキかけると足が地面の上を滑るの。積もりたての柔らかい雪って滑りやすいんだよ。
凍ってる場合は、別。滑りやす過ぎて逆に危険だから、滑って遊んだりしないようにね。
あぁ、話が逸れちゃったけど。
そうやって滑って遊んでたらさ、人がいたの。
しかも、けっこう近くに。
坂だからさ、人が上ってきてたのね。
で、地面ばっかり見てた私は全然気付かなくて。
顔を上げたら男の人と目が合った、と。
「雪、凄いッスね〜」
すれ違いざまにかけられたあの声が忘れられない。
すっごい恥ずかしかったけど。
しかも変な効果音付けながら滑ってた気がする。
その上こけそうにもなってた。
人がいたのにびっくりして、おバカさん丸出しの行動を目撃されてたのが恥ずかしすぎてしばらく思考が停止したくらい。
そんな変な子見ちゃったんだから当たり前なんだろうけど、男の人は笑ってた。
人っていうか、男の子?多分年齢はそんなに離れてないと思う。
フード被ってたからはっきりとは見えなかったけど、笑顔はヤな感じじゃなかった。
むしろ、イイ笑顔でして。
声だけでなく笑顔も忘れられない、とか。
あぁ、思い出すだけで恥ずかしい。
けど、また会いたいと思う。
話しかけられたのに、ちゃんと返事出来なかったし。
会えたら、いいな。
地面を見るけど今日は雪、全然積もってない。
「今日は滑れるほど積もってないね」
「へ?・・・あ、あぁっ!」
あえた。
下を向く
目線の先に君のつま先