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#03 encount


この世界で私はルナと名乗っている。

本名は赤井瑠菜といい、16才の高校生だ。


私には2つ上の姉がいる。

もともとはその姉に誘われ、参加したこのゲーム。

遊びで参加したはずだったのだが、いつしかそれは私達に死をもたらす危険性のあるものに変貌してしまった。


デスゲーム、都市伝説として何度か聞いたことのある有名な噂。


曰く、ゲームに囚われ抜け出すことは叶わない。

そこでの死は現実世界での死と同意義だという。


私は意気消沈した。


姉は狂喜乱舞した。


相変わらず頭のネジが1つか2つ抜けている姉に、これはデスゲームだと説明するのだが一向に危険性を感じ取ってはくれない。


「姉様っ!これはデスゲームなのですよ!

下手したら死んで二度ともとの世界に帰れなくなるのです」


「もう、るなたんったらデスゲーム、デスゲームって気にしすぎよ。

大体にして、殺される前に殺せば問題なんてないに等しいわよー」


姉は頭がいい。

美人で性格も一部を除けば悪くはない。

スタイルも私と違って抜群なのだ。


一部、性格の一部分。

バイオレンスな部分さえなければ……


そのバイオレンスな性格のせいで今まで何度も死の恐怖を感じ取ったはずだ。

それだけでなく、痛みもその体に記憶されているはずなのに……


姉様は絶対止まらない。


「姉様、お願いです……

瑠菜を困らせないでください。

瑠菜は姉様と一緒に生きて帰りたいのです」


「大丈夫、瑠菜も私も死なないわ」


姉様のその言葉にまたもや騙されそうになる。

今まで幾度となくその言葉のせいで死にかけた姉様は何一つとして学んでいない。


ある時、街に構えているヤクザさん達の事務所を襲撃した。

理由は私の友人が身を売られたためだ。


改造されたエアーガンを持って事務所の周りにいるヤクザさん達を狙撃し、そのまま乗り込んだ。


地元でも有名な話だ。


その時はヤクザさんの出した刀で背中を切られ、血に染まっていたが姉様は終止笑っていた。


「でも姉様!

無事生きて帰れるなんて、そんな根拠は何処にもないです。」


「根拠とか理論上とかそんなのどうでもいいのよ。

大体にしてこんな経験この先できるかどうかわからないもの!

楽しむしかないでしょう?」


獰猛な笑みを浮かた姉様は自らの武器、拳銃を慈しみを込めて撫でている。


ある時、もし車に轢かれても無事生き残るようになる修行をすると言い、家を飛び出した。


私は必死になって追いかけたが時すでに遅し。

姉は道路の真ん中で血溜まりになって横たわっていたのだ。

とうとう姉様は死んでしまったと私は思った。


急いで姉様の元に駆けつけた。

途端、姉様は立ち上がり次は怪我をしないと言った。

運転手の恐怖が張り付いた顔を忘れられそうにない。


次の日、また同じ場所で交通事故があった。

轢かれたのは姉様。

しかし、今度は無傷だった。


姉様は絶対止まらない。



ダメ人間ですみません#03 Encount



目の前にはゴブリンが三匹、こん棒のようなものをこちらにむけてなにかをいっている。


「ギャーン、ギャッギャッン。

ププッ…」


「ギャッ。

ギャオギャンギャー!」


「ギャギャ、ギャオギョオギャーン、ギャ、…

ププッ。

ギャンギャギャン、ギャオ…ププッ」


非常にバカにされている気になるこの挑発。


ゴブリンAさんのお言葉。


「おいおい、こんなところに食物連鎖底辺のゲルがいるぜっ!

ぷぷっ…」


ゴブリンBさんのお言葉。


「マジかよ。

あんな最弱生物とかこんなところで生息できんのかよー!

あっりえねー」


ゴブリンCさんのお言葉。


「バカだなお前ら、あいつはゲルはゲルでもおそらく世界一強いゲルなんだって、きっと…ぷぷっ。

だからバカにしてやるなよ、傷つくから…ぷぷっ」


などといわれている気がする。

もしかしたら俺の勘違いかもしれないが、おそらくバカにされている。


「ニーナ、こいつらがなんといっているかわかるか?」


『いえ、わかりません。

恐らくですが、でろりーぬ様を小バカにしているのだと思います。

死をもってして償わせるべきだと』


まぁ、どっちにしろ殺らなきゃいけないんだしサクッといくか。


ゴブリン達はこちらの雰囲気が変わったとことを察すると戦闘体制にはいる。

三匹がジリジリと間合いを図りつつも、こちらを囲む位置取りをする。


ゴブリンAは俺の正面を、ゴブリンBは右側、ゴブリンCはその反対の左側。

ゆっくりと距離を縮めてくる。


瞬間、ゴブリンBが先行してこちらに飛びかかる。

こん棒なのでダメージは食らわないはずなので、その攻撃を体で受け止める。


少しの衝撃がきたが特にダメージはない。

俺は反撃に出る。


五本の触手を出して尖らせ、ゴブリンBの頭を杭で打つように突き刺す。

鈍い音がしたあと顔面穴だらけのゴブリンBから触手を抜き、こちらへと迫っているゴブリンCを視界に入れる。


ゴブリンCもこん棒を振り上げているが先にオーラアローを撃ち込む、衝撃により転けたゴブリンの胸に触手を突き刺す。


二匹を見ていたゴブリンAは声にならない声をあげてこちらに突撃してくる。

こちらも迎撃のため触手で心臓を貫く。

すると一撃でその命は消えた。


毎度お馴染み戦利品の回収とお食事タイム。


「ゴブリンを食べるのはちょっとなぁ……」


『大丈夫ですよ!

味は意外とレモン味に近い、ミカンのような感じです』


「逆に嫌だ」


うだうだしていも仕方ないので物は試しと食べてみる。

意外と美味しい味で、特に心臓の美味。

ということなんて全くなく普通に不味かった。


味としては青汁にレモンとミカンと豚肉をぶっ混んでミキサーにかけた感じだ。

しかし、心臓を食べると心なしかよく吸収できているような気がする。

あくまで気がするだけだが。


「さぁ、この調子でどんどん狩るか」


『がんばってくださいね』




雑談掲示板


112 名前:くるくるぺー(kd3b66t) 33分前


さっきゴブ森に行ったんだがマジ怖かった。



113 名前:クライス(blo47eg) 30分前


>くるくるぺー

なんか化け物でも出たか?ww



114 名前:くるくるぺー(kd3b66t) 20分前


>クライス

よくわかったな

なんか人食いゲルが出たんだが


115 名前:ぺろとん(pg5x6bd) 18分前


今からゴブ森にいこうかと思ってたところなんだが……

詳しい情報あるー?


116 名前:芽々鬼 17分前


詳しく聞きたい


117 名前:くるくるぺー(kd3b66t) 11分前


パーティー組んでゴブ森の結構奥までいってたんだ。

すると叫び声が聞こえて、そっちの方向にいったらゲルが心臓をジュルジュル食べてて恐怖のあまりとんで帰ってきたww


118 名前:クライス(blo47eg) 5分前


ハイハイ、嘘乙

ゲルとかないわ

釣り針でか過ぎ


119 名前:くるくるぺー(kd3b66t) 1分前


ほんとだからな。

俺も目を疑う光景だったから今思うと幻覚だったかも…


まぁ、気を付けるに越したことはないと思われ。




ゴブリンを狩る。

一匹、二匹、三匹、四匹………


「レベル上がるのが遅くなってきたな」


『いえ、むしろ他の人と比べると早い方だと思われますよ』


「ふむ、まぁなにいっても狩り続けるのみか」


『そうですね、でろりーぬ様は一日中狩り続けられるのですぐに上がるでしょう。

あと2レベルくらい上がればボスも楽だと思いますよ』


確かに。

俺の場合はダンジョン内ですべて賄えるが他のプレイヤーは一度街に戻る上に、夜は町から出にくいしな。

そう考えると魔物系の種族は特だな。

ひとりぼっちだけど。


「さて、じゃんじゃん狩りますか」


再び、ぴょこたんぴょこたんと森のなかを進む。

大きな木下に落ちている木の実を見つけ、搾り取るように水分を吸いながら食べていると奥からプレイヤーが歩いてきた。


「姉様、やはり帰りましょう……」


「るなたんは心配性だねー。

なにか出てきたら姉さんが殺してあげるからダイジョーブ!

襲いかかってきてもこの銃で頭を撃ち抜いてあげるし」


銀色に鈍く光る二丁の銃をうっとりとした目で見つめる姉と、きょろきょろと回りを見渡しながら怯えている妹。

二人はどうやら姉妹のようだ。


久々のプレイヤーか。

しかし女の子二人とか危ないな。

むしろお姉さんのほうがデンジャラスな発言してて危なそうだけど。


などと考えているとふと妹の方から視線を感じる。


「姉様、姉様。」


「なんだい、るなたん」


「あそこに奇妙でかわいいゲルがいます」


こちらを瞳を大きく見開き、指差す妹のるなたん。

黒く長い髪の毛をストレートに伸ばし、横の髪の毛をみつあみにしている。

目は少しきつく、慎重は低いロリ体型だ。



るなたんかわいい。

そのきつい瞳で俺を罵ってください。


「やめときなって、ばっちぃ。

こないだもゲルを捕まえようとして失敗したでしょ?」 


姉のほうは対照的に髪の毛が短くショートにしており、慎重も170程だろうか。

さらち体型も女性らしいそれだ。

目元がよく似ているのでほんとの姉妹かもしれない。


「でも姉様。

この子は攻撃してくる気配はないですよ?」


「やめときなって、急に襲われるよ」


二人で会話しながらこちらへの距離を縮めてくる。

るなたんは俺に興味津々なようで一時も目を離す気配がない。


その反対に、姉のほうは終止こちらに警戒しており、いつでも撃ち殺せるようにこちらを狙っている。


るなたんがあと1メートルというところでしゃがみこちらに手を伸ばす。

スカート姿のるなたんのはパンツが丸見えということにも気がつかず、伸ばした手を叩いている。


真っ白なその布生地に不思議と体が吸い寄せられていくのを感じる。

これが女性の神秘とでもいうのか!?


「おいでおいでー、こわくないよー」


眼福、眼福ー。

できるだけ眺めているためゆっくり近づく。


『でろりーぬ様、いつか不幸に会いますよ…』


気にしない、気にしない。

これは神が与えたもう祝福なのだよ、ニーナ君。


あと一歩でるなたんのところ。

というところで体が宙を舞った。


ふんわりと浮かんだ先には姉の獰猛な笑み。


「調子にのってるなよ?

いつまでるなたんのパンツのぞいてるなよ?」


すると急いでスカートを押さえながらその場にぺたんと座り込むるなたん。


落下と共にゆるゆるな体の中へと銃を一丁、銃口から突っ込まれる。


ガンッガンッガンッ


一発、二発、三発と撃ち込まれる。

しかし、俺には物理軽減がある。


などと軽く考えていた。


重力にしたがい落ちていく。

もう少しで地面、といったところで蹴りあげられる。

どうやら先程もこれと同じように蹴りあげられ、宙に浮いたのだろう。


るなたんは唖然としながらこちらを見ている。


「しぶといね、このゲルっ……!」


少し苦虫を噛み潰したような顔をしたが、今度は二丁の銃口を突っ込んだ。

その瞬間、顔に笑みが浮かぶ。

俗に言うトリガーハッピーのようだ。


ガガンッガガンッガガンッガガンッ


一丁から四発、計八発もの銃撃を受ける。


「あだ、あだだだだ、あだだだだだだ」


さすがのゲルでもこれは痛かった。

HPも25%削られている。


そこで漸く、るなたんの意識が確りとしたようだ。


「姉様!やめてください!」


不意に止められたからか、再び落ちるところを蹴りあげられる寸前に足の方向が代わり、サッカーのシュートのように蹴り出される。


ベチャッ


木にぶつかるがたいしたダメージはなし。


「どうして、るなたん!

姉さんはるなたんを助けようとしたのよ……?」


「やりすぎです姉様っ!

この子は魔物なんですから…そ、そのぉ……」


「なんだい?るなたん」


ニヤニヤしながらるなたんを見つめる姉。

姉から顔を背け、こちらに走り寄るなたんに抱き上げられる。


ふぅ…いい感触。


「姉様は何かにつけて乱暴すぎます!

この子も生きてるんですから乱暴は禁止です!」


「はいはい、まぁその子もおとなしいし、なにもしない限りは暴力を振るわないわ」


「わかってもらえて嬉しいのです」


「るなたんは相変わらず変なものが好きね」


ふにょふにょ…柔らかいでござる。


「変じゃないのです!

この子はかわいいですよ」


「うっそー、それただの液体でしょ」


ふむ、腕とかはぷにぷにしてるが胸のほうは寂しい感じだな。

だが、むしろいい。


「姉様こそ変です。

そんな武骨なフォルムをした危なっかしいものが好きなんて…」


「まぁ、価値観は人それぞれよね」


ぷにぷにはぷにぷにでも、これはただのぷにぷにじゃあないな。

未成熟なその体から産み出される天然物。

この質感が出るということはゲーム内だけではなく、現実世界でも本物のロリ娘ということになる。


実に興味深い。

このまま抱かれながらついていくか。


『でろりーぬ様……あとでプレイヤーだと言うことがばれても知りませんよ?』


「あれ?

そういえばニーナの声って他の人には聞こえないのか?」


『はい、そうですよ。

これはシステムでもある個人チャットのようなものですから、本人以外には設定しない限り聞こえることはありません』


なるほど、そら便利なことですな。


「姉様、そろそろ帰りましょう。

私の1つの目的は達成しましたし」


「まだよ、姉さんは達成してないし」


「わかりました……私だけが目的達成というのも気が引けますし…

その代わり危険になったらすぐに逃げましょうね?」


「わかってるわよー。

んじゃ、先に進みましょ」


その言葉を後にゆっくりと森の中へと進む。

ゴブリンに出会いつつも二人は順調に片していく。


るなたんは魔法による攻撃。

主に氷と闇の属性のようで、物理魔法攻と純魔法攻撃を使い分けているようだ。


姉のほうは相変わらず銃のようだが、どうやら比較的近接もこなすようで、蹴り技が結構な頻度で繰り出される。


ゴブリン三体を処理したあと、二人は回復にはいる。


「姉様、MPポーション持ってますか?

少し心もとないのです」


「ごめん、MPポーションは持ってないわ」


「なら、次の敵を倒したら町のほうに帰りましょう。

ポーションが無い状態では戦いたくはないのです」


おっと!るなたんがお困りのようだな。

るなたんの腕から離れて地面に降りる。


「あれ?げるちゃんどこいくのです?」


ちーっとばかし待ってな!

すぐに木の実とってくるぜ! 


いつも通りぴょこたんぴょこたん跳ねながら例の木の実を探す。

木の実は赤色をしたHP小量回復する物とMPを小量回復する青色の物がある。


少しいった先に青色の木の実を触手で拾い上げる。

赤色の物もあったので回収。

両方合わせて8個、一個につき4個ずつ揃った。


皿のようなものを触手で作り出し、そこに木の実をのせ、るなたんのところへと帰る。

さすがにぴょこたん跳ねるわけにはいかないので歩いてだ。


「あ、帰ってきたのです」


「なんか木の実のせてるけど食べれるのこれれ?」


姉の方から疑わしい目を向けられるが、そんなことでめげる俺ではない。

触手で青色のほうをるなたんに差し出す。


「わぁ、ありがとうです!

ではいただきますです」


「やめておいた方がいいと思うなー」


るなたんはなんの疑いもなく青色の木の実を口に放り込む。


「もぐもぐ、これすごくブドウっぽいですよ姉様」


「ほんとにぃ?ならひとつ貰おうかな」


姉が皿に手を伸ばすが、ひらりと避ける。


「あ、このゲル逃げるなっ!こらっ!」 


ひらりひらりと手を避けながら、触手で赤色をつかみそちらを渡す。


「えー、こっち?

なんか不味そうな色をしてるんだけど……」


「姉様、折角ゲルちゃんがとってきてくれたのですよ?」


「はいはい、食べるよ」


ひょいっと口に放り込むと姉の顔が笑顔に染まる。


「ちょっとこれイチゴじゃない!?

おいしいわぁ」


「姉様よかったじゃないですか。

イチゴ好きなのですよね?」


「あったり前じゃない!

よしよし、いいこだよー」


姉に頭を撫でられるが乱暴だ。

やはり撫でられるならるなたんがいいな。


『でろりーぬ様……まるでペットのようです……』 


ニーナよ、るなたんのためなら俺はペットにでもなるさ。


『いつか…いつか必ずもとに戻ってくださいね……』


ニーナの声に頭のなかで反応するとるなたんが驚いた声をあげる。


「あー!MP回復してるのです!」 


「あら、こっちはHP回復してるわ」


ふふふふ、今更気付いたのか?


「げるちゃんはすごい子なのです!

お姉ちゃんも一緒に誉めてあげてくださいです。

しつけは最初が肝心なのですよ!」


「げるちゃんすごいわねー」


「姉様棒読みです!

もっと心を込めて!」


二人で頭の部分を撫でてくる。

ポリポリとほほの部分をかいて恥ずかしさを演出する。


「姉様、姉様っ!!

いまみました?

照れましたよー、この子!」


「人間の言葉がわかるのね」 


「みたいなのです。

これは連れて帰って捕獲するしかありませんね」


「やめときなよ、街で蛸殴りにされて死んじゃうわよ?」


なんと、人の街とはそれほどまでに物騒なのか。


「そんなわけありませんよ。

こんなかわいいゲルちゃんをいったい誰が攻撃するというのです?」


まぁ、名もなき青年に切りつけられたけどな。


「大体魔物とかって街にはいれるの?」


ニーナ、魔物って街にはいれるか?


『可能ですよ?

というよりも、でろりーぬ様はプレイヤーじゃないですか』


ハッ!Σ(゜□゜)

そうだった、野生に帰っていたせいですっかり忘れてたけど俺はプレイヤーじゃないか。


「そ、それは…むりなのです……」


「なら、置いていくしかないわね」


こ、このままではおいていかれてしまう!?


悲しそうな顔をしたるなたんはとうとう俯いてしまった。


「でも…でも……」


クソッここまでか…


「あ、確か魔物と契約するアビリティとスキルがありました!」


「折角のポイントをこの子のために使うの?」


「この子の為じゃないのです!

私のために使うのです!」


おお、なんということだ!

こんなとこに解決策があるとは運営もやってくれる。


あれ?俺プレイヤーじゃね?


「ステータスオープン」


なにやら操作しだしたるなたん。


や、やめろ。

やめるんだ。

貴重なポイントをこんなところで……


「習得しちゃいました!」


あぁ


「はぁ、るなたんはまったくもぅ…」


『いえ、普通に契約できますよ?』


え、そうなの?


『はい、ただしルナさんがでろりーぬ様のレベルを上回っていたらの話ですが』


るなたんのレベルはいくらだろう。


「じゃあ使いますね。

ゲルちゃんは少しの間じっとしていてねー」


手を伸ばす、るなたんと。

呆れている、お姉さんと。

身構えてる、げるちゃん。


俺、ゲーム世界で美少女と契約しました。


『どうやらルナさんの方がレベルは低かったようですね』


契約の失敗により、俺がるなたんのマスターに図らずともなってしまったのである。


「どうしよう、姉様…」


「はぁ、お姉さん呆れたわ。

自業自得ね」


「うぅ、姉様の口からその言葉を聞くとは思わなかったのです…」


まぁ、俺としたら嬉しいけどな。


『なんという変態…早くなんとかしないと……』


なんとでも言うがいいわ。

しかし、るなたんとしゃべれないものか。


『契約が成功すればできますよ』


ふむ、ということは今はできないのか?


『いえ、契約が失敗したといっても主従が逆転しただけですので、おそらくは可能かと思います』


「おーい、るなたん」


「は、はひっ!?」


急に聞こえた声のせいで飛び上がり回りを見渡するなたん。


「ん?どうしたの?」


姉には聞こえないのか?


「るなたん、るなたん。

聞こえるか?」


「姉様っ!声、声が聞こえます」


「声?声なんて聞こえないわよ?」


ふむ、姉はどうやら本当に聞こえてないようだな。

顔が困惑に満ちている。


「るなたん、俺だ。ゲルだ。」


「もしかして、ゲルちゃんっ!?

姉様、ゲルちゃんの声が聞こえますっ。

なんか想像してたのと違います!??」


お、やっとわかってもらえたか。


「るなたん…あまりのショックに心を病んでしまったのね……」


「姉様っ!ふざけている場合ではないのです。

ゲルちゃん、本当にゲルちゃんなのですか?」


「ああ、そうだ」


「す、すごいのです。

ゲルちゃん、お名前はなんというのですか?」


わくわくがとまらない。

そんな顔をしながら、るなたんはこちらに詰め寄る。


「で、でろりーぬという」


「でろりーぬ、デロちゃんなのですね?」


デロちゃん…


「るなたん、本当に聞こえるの?」


「だからそうだといってるじゃないですか。

デロちゃん、私、契約に失敗してしまってデロちゃんがマスターになったんだけどもとに戻せますか?」


ニーナよ、契約は破棄できるか?


『えーっと、できなくはないですが、そのばあいだとでろりーぬ様が魔物使いのアビリティとスキルをとらなければいけませんよ?』


「るなたん、どうやら無理のようだ。

役に立てなくてすまないな」


るなたんは俺の謝罪を聞いたあと全力で謝罪したあとに顔の前で手をブンブンと振る。


「そんなことないのです。

むしろ失敗した自分自身が悪いのです」


るなたんはいい子だな。


「るなたんが一人でしゃべってる…どんどん変な子になっていくわ」


「姉様だけには言われたくないのです」


「よし、じゃあ契約しよう。

俺は契約を解除できるまで、るなたんを助けるために戦う。

こう見えても俺は強いからな。

代わりにるなたんは俺の言うことをよく聞くこと」


「契約結びますっ!」


はやっ!?そんなんでいいの?


「後悔はしないか?」


「はいです!」


この子かわいいものならなんでもいいのかな…


「これからよろしくなのですよ、デロちゃん」


「こっちこそよろしく、るなたん。

あと、お姉さんも」


「姉様、デロちゃんがよろしくと言っています」


触手を姉に伸ばし握手を試みる。


「ええ、よろしく」


無事手を握ってくれた。

どうやらこの人は一応コミュニケーションを理解しているようだった。

でも少し、ほんのすこし、じみに不安だった。


こうして、ゲーム内で初めての仲間兼友達を俺は手に入れたのである。



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