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#01 GAME START



広がる視界の先にニーナがいた。

ニーナはお辞儀の体勢を取っており、どうやら俺を出迎えてくれたみたいだ。


「まだサービス開始までに時間はありますがよろしいのですか?」


AIにしても無表情すぎるその顔を上げ、こちらを見つめている瞳に吸い込まれそうになった。


「ああ、ニーナと話しをして時間を潰そうと思ってね。」


「ありがとうごさいます。

しかし、私にはご質問にお答えすることはできても私から話題を提供することはできません。」


気にした風もなく答えるニーナ。


「かまわない。

良かったらFFOについてとか話してほしいんだが、そういうのはできるか?」


「はい、問題ありません。

ただ、攻略情報等は私も知りませんので、ほぼ公式で公開された内容と変わりません。」


「そうだ。

さっきログインするとき何か新しいソフトウェアがインストールされたみたいだけど、あれについて何か知ってるか?」


そうニーナに問いかけると空中を見つめていた。

気がつくと横に椅子とテーブルがあり、テーブルの上にはティーセットがあった。


「立ってお話しするのはなんですから、よろしければお座りください。

お飲み物は紅茶でよろしかったでしょうか?」


ふと、喉の乾きを感じたことに違和感を感じた。

VRは飽くまでVRであり、必要以上の感覚はカットされているはずなのである。


しかし、疑問を感じても答えを出すことができず、進められるままに席につく。


「できれば甘めで。

ミルクティーにして欲しい」


「かしこまりました」


馴れた手つきで紅茶を注ぐニーナの姿はメイドのような服装とマッチし、とても様になっていた。


「質問のお答えですが、私には追加のソフトウェアだと知らされています」


「へー、追加…ね。

内容については何か知っている?」


紅茶で喉を潤しながら恐らくは答えられないだろう。

そう思いながらも一応聞いてみる。


「そのご質問についてはyesであり、またnoでもあります。

知っているには知っていますが、私にそれをお伝えする権限がありません。」


予想通り答えられないようだ。


「先程から感覚の制限がないようだが、この事については?」


「そちらについても、私にはお伝えする権限がありません」


少しきな臭い。


「では質問を変えよう。

確かゲームが始まってから最初にするのはキャラクターの能力設定だと聞いているが、その内容について俺は知らないんだ。

良かったらそれについて教えてくれ」


少し内容を変える。

食後で喉が乾いていたためか紅茶を飲みきる。


「おかわりはいかがですか?」


タイミング良く聞いてくれたので頷くことで返事とする。


「キャラクターの能力設定ですが、まずは最初に能力値振り分け設定、その次にアビリティの設定、そして最後にスキルの設定となります。」


「能力値の振り分けは全員固定か?」


「いえ、種族により異なります」


「アビリティやスキルについてもか?」


「はい、そうです。

能力値の項目は全種族固定ですが、アビリティやスキルは固定ではありません」


俺が質問する度に空中に目をやり、意識を失ったかのようなそれは俺に興奮をもたらす。

ニーナはAIなのに不思議と引き込まれる雰囲気や魅力がある。


「ありがとう、その他知っておくと便利なこととかある?」


「はい、五十嵐様は種族としてゲルを選ばれたので、普通のスタートと違います。

内容はお教えすることはできかねますが、何事も冷静に対処されれば概ね問題なく思います。

また、職業の設定をできない代わりに能力値の振り分け値が大きくなります」


なるほど、そういえばあの体でプレイするとしたら、何か支障が出るんじゃないか?


「体があのままならプレイに支障が出るんじゃないのか?」


「システムなどはすべて思考で操作できるので問題ないかと思います」


思考操作か、高校生の時に少し授業で出たが特に問題なくできたはずだ。


「わかった、ありがとう。」


その言葉を境に暫く会話はなかった。

しかし、そろそろサービス開始まであと少しかというところでニーナが口を開く


「五十嵐様、サービス開始まで三分を切りました。

ご準備の方はよろしいでしょうか?」


「大丈夫だ、問題ない。」


「では、サービス開始とともに接続しますので暫くお待ちください」


そうして少し経ったあと、俺はこの世界から体をのみ残し、意識を切り離されることとなったのだ。




ダメ人間ですみません#01 GAME START




ニーナの言ってらっしゃいませ。

また、すぐに会いましょう。

との言葉をかけられたが全くといっていいほど黒色の画面から抜け出せない。


しかし視覚以外の体の感覚だけはある。


「おろろ、エラーか何か?」


そう呟いた瞬間ウィンドウが開く。


ようこそ、Fantasy factory on-lineの世界へ


ここは様々な種族が入り乱れ、争いの絶えない世界です。

この世界で貴方は戦争に参加するも、少し非日常な生活を送ることも、ものを作るのも自由です。

是非とも楽しんでください。


まずは始めに卵の殻を破り、キャラクターの能力設定をしてください。


なるほど、ゲルは卵から生まれるのな。

手を動かして殻を破ろうとするが、その手がないことに気がつき途方にくれる。


「どうすれば殻を破れるのか…それ以前に喋ることはできるのな」


『お困りのようですね』


「おろ、この声はニーナか?」


どこからともなく聴こえる声はニーナのものだった。


『はい、そうです。

ここのFFOゲーム中でも、オペレーターを務めさせていただきます。

今後ともよろしくお願いします。』


「こちらこそよろしく。

んで、このからを破る方法を教えてくれるのか」


『はい、魔物を選ばれたプレイヤーの方はチュートリアルから始まります。

ゲルの場合ですと形に限りがないので、触手を生やすように意識してください』


触手…だと…?

素晴らしい


触手でろーと念じるとなんか出た気がする。


『出たようですね。

では次にその形を変えてください。

こちらも念じることでできるはずです』


んじゃ、尖れっ!

よし、尖った気がする。


それで殻をひたすら刺す。

しかし、からが破れる気配なく、寧ろこちらの触手が負けているような気がする。


『硬さを変えなければ破れませんので、触手の硬さを硬くしてください』


なるほど、そりゃそうだ。

今の状況だと俺の硬さはニーナのおっぱいだから、これだとおっぱいを殻に叩きつけて壊そうとしているようなものか。


いや、なにそれ楽しい。


イメージするは我が家の包丁。

あのフォルムを真似て造る。


できた!気がする。


それを殻に刺しまくる。

少し光が見えたので、そこを中心に穴を広げると殻が破れる。


ずるずると破れた卵から這い出るとそこには様々な植物と半径10メートルほどの湖があった。


『お誕生、おめでとうございます。


<クエスト:誕生> を、クリアしました。


ここはゲルの種族を選ばれた方のスタート地点となります』


回りを見渡すが案の定ゲルの存在は見当たらなかった。


『では、キャラクター能力の設定にはいります。

最初にプレイヤーネームを設定してください』


あー、確かに本名でやるわけにもいかないか。

ニーナには苗字で呼ばれてたから気が付かず、なにも考えていない。


「でろりーぬで登録しておいて」


『かしこまりました』


ニーナの言葉のあと少し大きめのウィンドウが開いた。

そこにはスキルやアビリティ等の情報が乗ってある。


『今でているのが能力設定画面となります。

基本的な操作は思考操作でおこたなってください』


「ありがとう、少しの間見てみるよ」


まずは能力の振り分けからだ。

現状の値が以下の通りである。


HP:100

MP:40

腕力:20

耐久(硬度):π

知能:30

精神力:50

速度:3


アビリティ:液体生物

スキル:捕食


アビリティの【液体金属】は物理ダメージの軽減と硬度変更の上限を上昇。

スキルの【捕食】HPやMPを回復し、一時的に全能力を上昇させる。


てか、速度……


「ニーナ、他種族のプレイヤー初期能力値の平均は大体いくらくらいだ?」


『種族にもよりますがHPやMPは100~200前後。

他の能力は大体20~30の間だと思われます』


なるほど、そこから導き出される答えとは。

速度ぇ……硬度とかπですやん……


「で、硬度のπはなんなんだ?」


『はい、そちらの方はゲルの種族には限界まで上がるので、設定されないので本来は表記されないのですが、πで申請しておいたのですが承認されたようです』


「あ、そうなんだ」


何でそんな申請したの……

まぁ、気を取り直して能力値でも振り掛けるか。


振り分けれるポイントは100のようだ。

レベルアップ毎に10もらえるらしい。


正直なにに振ればいいかわからない。

いっそのこと速度に全部寄付したい気分だ。


「これはあとでも振れるのか?」


『はい、いつでも可能です。

右下にある終了を押せば次のアビリティ選択に移ります』


ならとっとと次にいこう。


そして、アビリティの一覧を見てみる。

右下には200pと表記されているので、これが習得のためのポイントなのだろう。


10レベル毎に10ポイントもらえる他、イベントで獲得できるようだ。


アビリティは自動的に発動されるものや、常時発動されているものしかないようで、なかなか獲得できない貴重なものなのだろう。


種族選択時、自動的にアビリティが決まる。

これは選んだ種族にあったものが選ばれるようだ。


ということは最初に出されるこの選択が重要というわけだが……

まぁ、気に入ったやつを適当にとればいいか。


基本的に10~50ポイントを使うみたいだ。

適当に気に入ったアビリティを選び200になるよう調整する。


スロースターター(50):戦闘開始時に速度の値が10以下の場合、戦闘開始後10秒毎に速度が大幅上昇する。


下剋上(30):戦闘開始時、能力値に20以上の差がある場合、戦闘開始後から終了までの間、その差分能力が上昇する。


硬度解放(30):硬度が解放される。


格闘チャンピオン(20):近接攻撃のダメージに補正がかかり、格闘センスが上昇する。


飛脚(20):移動系のスキルアビリティに補正がかかる。


加速(20):戦闘開始後5秒毎に速度が上昇する。


剛力(15):能力値の腕力に110%の補正がかかる。


消化活動(15):ドレイン系のスキル効率が上昇する。


こんな感じでいいだろうか。


「よし、次はスキルか」


スキルの数はアビリティをさらに越えた量があるようだ。

ポイントは50あるようなので、レベルアップ毎に10ポイント獲得できるそうだ。

取得できそうなものを探す。 


咆哮(20):スキル発動から一定時間、敵に与えるダメージ量が増加する。


ステップ(10):ステップの性能が上昇する。


ジャンプ(10):ジャンプの性能が上昇する。


オーラアロー(10):魔法の矢を発射する。精神力が高いほど威力と速度が上昇する。


この四つにしよう。

主な攻撃は殴る蹴る刺す何でもござれな感じで。

一応遠距離攻撃の手段としてオーラアローを習得した。


あと残るのは先伸ばしにしていた能力値の振り分けか。

アビリティとスキルの構成から 

腕力に80で残り20はHPにでも突っ込むか。 


「よし、できた。

あとはなんとかなるだろう」


『お疲れさまでした。』


「しかし、ニーナの姿は見れないのか?」


どこからともなく聴こえてくる声。

声もかわいいが顔もみたい。


『いえ、ウィンドウを開き設定を変えていただけば可能です。

また、とあるクエストをクリアすることにより、オペレーターを使い魔として契約することができます。

使い魔は召喚することができ、戦闘にも参加できます』


「へー……とりあえず設定するか」


設定をオペレーターの表示有りにすると右端辺りにニーナの画面が写る。

やはり無表情だが、今日は心なしか何時もよりもマシに見える。


『でろりーぬ様、運営からコールが来ていますので、接続いたします』


すると急に画面が現れた。

デスクに座る一人の人物が写されている。

その人物は黒いスーツに白衣を来ており、顔には茶色の紙袋を被っていた。

ちょうど目の辺りに穴が開いており、そこで視界を確保しているのだろう。


『皆さん始めまして。

私はこのゲームの製作者のレボという。

もちろんニックネームだがね。』


その男はひとりでに喋り出した。


『この度はこのゲーム、FFOを買ってプレイしていただき誠にありがとう。

是非とも私たちが作ったこのゲームを楽しんでくれたまえ』


丁寧言葉のようでいて、全くそうではなく。

穴の空いたところからはなにも窺うことができなず、眼はこちらを見ている。


『まぁ、前置きはこれくらいにして君たちに伝えなければいけない重要な話がある』


レボは突然大袈裟に手を組み、その上に顎をのせた。


『我々は以前からこの計画を進めていた。

そして、まず第一にこれは国家が認めて行っていることだというのを念頭に置いて話を進めていきたい』


今までの雰囲気がガラリと代わり、刺すような視線を感じる。


『このゲームをプレイしている者たちは少なからず耳にしたことがあると思う。

今、この時を持ってデスゲーム開始とさせていただく』


『まぁ、急に言われても追い付けないだろうから順を追って説明する。

以前まで我々の会社はオフラインのゲームを主に製作していたのだが、ある時国からの依頼を受けた。

それが今回のデスゲームを主催すると言うものなのだが、この依頼の理由については詳しく話すことはできない。

ただ1つ言えることはこのデスゲームは国家プロジェクトであり、君たちは強制的に参加させられるということだ』


心が震える。

デスゲームとは名前の通りだとすれば命を懸けるものだろう。

不謹慎ながらも俺はチャンスであると考えた。


冷えきった氷河期を終えるためのゲーム。


『君たちの怒りはもっともだろう。

だが、国もこのような強硬手段をとると言うのは理由あってのことだ。

君たちが日本人だというのなら、是非ともその侍の心で生き残ってほしい。

私たち日本人は闘争を忘れ、刀を捨て、牙を抜き、今では世界中から金づるだと言われる始末。

闘争がない国が悪いとは言わないが、それではいづれ滅び行くだろう。

その滅びを止めるため是非ともこのゲームで侍の心を取り戻してほしい』


『ゲーム中は街に引きこもり、誰かがクリアするのを待つもよし。

自らが全線に出て、囚われの同志を救うもよし。

ここではすべてが自由だ。

生きる残るか死ぬか、その結果は君たち次第だ。』


裏がある。


俺は真っ先に思う。

誰もが気づけることだが、それを探るすべはない。


『クリアするための条件は追々知らせるとしよう。

まずはその体に馴れ、生きるすべを身に付けることだ。

私からは以上だ。

頑張ってくれたまえ。』


それを最後に通信が切れ、画面が閉じられる。


「ニーナ、知ってたのか?」


『はい、申し訳ございません。

ロックがかかっていたため、お伝えすることができませんでした』


「構わない、それがルールだったのだから」


『怒らないのですね。』


少し落ち込んだような顔をするニーナに驚きを隠せない。

彼女は今まで常に無表情だったので、余計にインパクトがあった。


「そんな顔、出来るんだな。

大丈夫、怒っていない。

寧ろこれをチャンスだと喜んでいるところだ」


『あ、はい。

こちらのロックも解除されましたので。』


少し下を向き恥ずかしそうに答える彼女。


『これからよろしくお願い致します。

しっかりとサポートさせていただきますね』


「こちらこそよろしく。

で、まずは何をすればいいのやら」


確か、キャラクター設定を終えると職業やらバトルスタイルやらを決める筈なのだが、生憎ゲルにはそのような習慣がないようで途方にくれる。


『まずは近くのモンスターを倒しレベルをあげるのがよろしいかと。

そうでした、このゲームにはメール機能や先程使ったビデオ通話機能に加え掲示板などのツールを使うことができますので、活用してみてはいかがですか?』


「結構機能が多いんだな。

掲示板は今どうなっている?」


『掲示板はですね……ひどく荒れていますね。

皆さんがある程度の落ち着きを取り戻すまではまともなやり取りは行われないでしょう』


「一応見せてくれるか?」


一瞬で画面が広がる。

酷い荒れかただ。

確かに急にこんなことになれば恨み言の1つでも出るだろう。


「これは酷い。

しばらくは使い物にならないな。

そうだ、他プレイヤーのことを調べることはできるか?」


『申請……承認されたようです。

どのような検索をしますか?』


「魔物を選んだプレイヤーの数を頼む」


『かしこまりました。

検索……終了。

合計で三人と判明しました。

うち一人はでろりーぬ様です』


意外と少ない数に驚く。

もう少しいてもいいのではないだろうか。


「なるほどな。

で、他二人の種族はなんだ?」


『一人はドッグのチワワタイプのようです。

もう一人は妖狐を選ばれたみたいですね』


チワワとかこの世界で生き残れるのかと。

妖狐の方は強そうだな。


「ふむ、なら基本的にプレイヤーはヒューマンタイプという訳か。

何故それほどまでに魔物タイプが少ないんだ?」


ニーナは少し空中を見つめる。


『はい、それは事前情報によるものだと思われます。

魔物タイプはバトルスタイルが大幅に削られ、このゲームの自由度を活かせないためだと思われます。

また、職業に就くことや戦争に参加することができません』


「なるほど、その代わりに能力値が少し大きいわけか。」


『そうなります。

ここまでの情報だと魔物タイプでプレイする場合はソロプレイが基本となりますので。

しかし、魔物タイプは本来そうではありません。

覚醒システムをつかうことでヒューマンタイプになることも可能です』


「覚醒システムか、条件は?」


『クエストのクリアか一定以上の能力値又は熟練度の達成です』


「しかし、それは元々ヒューマンタイプだったとしてもできるんじゃないのか?」


『いえ、それは無理です。

元々がヒューマンタイプの場合は転生システムでのみその種族の格を上げるのです』


違いがよくわからないが何か理由もであるのだろう。


「ふむふむ、まぁとりあえず魔物は悪くないという訳か」


『はい、しかもでろりーぬ様は非常に運がよいのかこの時点で恐らくトップレベルの能力値と思われます』


「それは行幸。

とりあえず狩りにでも行きますかね」




ズルズルと体を引きずる。


「しかし、俺に眼はついてないだろうけど、どうやって見えてるんだ?」


またもや検索しているのか空中へと眼がいっている。

もしかしたら今ならあのデカメロンに触れることが可能なのではないだろうか。

等とバカなことを考えてみるが、行動には移さない。


『申し訳ございません、その情報は検索しても出てこないので私にはお答えすることはできません』


「あー、かまわん。

少し気になっただけだから」


すると目の前に薄い青色のゲルがいた。

俺よりも小さいようで子供をみている気分になる。


「これ、倒すの?」


『いいえ、殺してください』


何と残酷かなこの世界。


小さな体の真ん中には綺麗な赤色の玉が埋まっているのだが、あれがゲルの核なのだろか。

ズルズルと体を引きずり、移動するその姿は辛いながらも懸命に生きようとする弱者そのもので、俺にはとても殺せる自信がない。


「で、出来ない。

何故だ、こんなのいってしまえば少しぬるぬるする液体じゃないか」


『殺さなければやられるのはでろりーぬ様ですよ?

しっかり頑張ってくださいっ……!

この世界でチャンスを掴むのではないのですか?』


そうだ、俺は……

でも…俺には……


するとその当事者であるゲルがよってくる。

ゲルは触手を伸ばしつんつんとこちらを突いてくる。


「そうだよな、争いなんて不毛だよな。

一緒に遊ぼうセリーヌ」


『でろりーぬ様、それはそのセリーヌの攻撃です。

HPが順調に1 づつ削れてます』


「なん…だと…?

き、き、き、きさ」


『きさ?』


「貴様の体液は何色だああああああああああああああああああっ?!!」


『薄い青色のようですね』


もうこいつは知らんっ!

確実に殺してやるわ。


触手をせーっい!

最高の固さにして力の限りをつくし、セリーヌの体を貫く。


ブチブチといった音と共に引きちぎれ飛び散る青色の体液。

俺の渾身の一撃に耐えきれなかったのか、セリーヌのHPが0になったようで、核だけを残しでろでろと地面に吸い込まれていった。


「あぁ……あああ………あああああ…

セ、セリーヌ?

セリーヌ?

セリーヌうううううう……あぅあぅ…

何故、こんなことに。

何故こんなことになるんだっ……!


『殺したのはでろりーぬ様ですけどね』


「俺はただ仲良くしようとしただけで、セリーヌが……この世界は残酷だよ、ニーナ」


『そのようですね。

ですが立ち止まっているだけではダメです』


ふと、ニーナの視線が核へと向く。


『たべてください』


「え??」


『その核をスキルで捕食してください』


「ニーナさん、ほんま鬼やでぇ」


スキル捕食を発動する。

すると自動で体が動き、触手で核をつかみとったあと体の中に入れる。


核は俺の体の中でジュウジュウと音と泡をだし、溶けていくようだ。


『初モンスター討伐、初捕食、初体験、おめでとうございます』


「ありがとう……」


俺はそうしてはじめての体験を無事終え、セリーヌと1つになった。


ニーナ、君は突っ込みに向いているかもしれないな。




暗い部屋に3メートルほどの投影型のディスプレイが光を放っている。 

そこには数個のデスクと一人の男の姿が。

その男性の顔には妙な紙袋が被せてあり、表情は窺い知れない。


「やっと第一段階終了というところか。

計画段階ではうまくいくと思わなかったのだが…

しかし、息をついている暇はない……か」


独り言をこぼしながらその男が視線を向かわせたのは投影型のディスプレイだ。

ディスプレイは数多くの画面が分割されて詰め込まれており、そこには様々な人々が写っている。


「まだまだ状況は落ち着かないようだな。

だがそれも仕方なくはあるか。

しかし、中には冷静な人間もいるようだな。

果たして優秀なのか一本ネジが外れているのか判断はつかないな」


ふとディスプレイを見回していた男の視線が止まる。


「ふむ、これはこれは……実に興味深い。

ゲルに妖狐、それに、チワワか。

またまた一癖あるものを選んだな」


腕を組ながら考えるそぶりをした男は再び視線を動かし始める。


「全体的にやはり未だ混乱のなかだな。

果たしてこの中の一体何人が最後まで生き残り続けるのか」


腕を下ろし、後ろにあるデスクへと歩き出す。

そのデスクにあるのは1つのヘッドギア。


「さて、ゲーム始まった。

行く先を決めるのは閉じ込められた若人たちの役目。

私は暫し傍観へと移らせてもらおうか。」


紙袋を外し、ヘッドギアを着ける男。

こめかみのボタンを押し、起動する。




「……GAME START」






おまけ




主人公のステータス


名前:でろりーぬ

種族:ゲル


HP:200

MP:40

腕力:100

耐久力(硬度):π

知能:30

精神力:50

速度:3


アビリティ:【液体金属】【スロースターター】【下剋上】【硬度解放】【格闘チャンピオン】【飛脚】【加速】【剛力】【消化活動】


スキル:【咆哮】【ステップ】【ジャンプ】【オーラアロー】


アイテム:なし






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