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第3話 お風呂の中で思い出す、今日の小さな幸せ

あーちゃんたちが帰ったあと。


アパートの部屋は、急に静かになった。


ついさっきまであんなに賑やかだったのに。


「……帰っちゃったな」


ボクはぽつりとつぶやく。


テレビの前には、さっきまで見ていたアニメのリモコン。

テーブルの上には、お菓子の袋。


そして床には、まだ開きかけのダンボール。


そのどれもが、今日の出来事を思い出させた。


「ほえぇ……」


気づいたら、変な声が出ていた。


思い出すのは。


ドアを開けた瞬間――


『お兄ちゃーーん!』


と、飛び込んできた小さな影。


ぎゅっと抱きついてきた、あーちゃん。


「……可愛すぎるだろ」


ボクは思わず頭を抱える。


そのあともすごかった。


勝手にダンボールを開けて。


魔法少女アニメを見つけて。


「これ知ってる!」


って目を輝かせて。


それから。


一緒にアニメを見て。


「ここすき!」


って説明して。


そして。


「お兄ちゃん」


「ここ」


ぽんぽん、と膝を叩いて。


ちょこん。


当たり前みたいに座ってきた。


「……」


思い出しただけで顔が熱くなる。


「はわゎ……」


ボクはそのまま風呂場に向かった。


一人暮らしの小さなお風呂。


お湯をためて、ゆっくり湯船に浸かる。


「ふぅ……」


体の力が抜けていく。


天井を見上げながら、今日のことを思い返す。


膝の上でアニメを見ていた、あーちゃん。


楽しそうに笑っていた顔。


「がんばれー!」


ってテレビに向かって応援していた声。


それから。


いつのまにか静かになって。


気づいたら。


すぅ……すぅ……


寝息を立てていた。


小さな頭がボクの胸に寄りかかって。


あったかくて。


軽くて。


……すごく安心する重さだった。


「……」


ボクはお湯の中で小さく笑う。


「ほえぇ……」


今日一日だけで。


ボクの一人暮らしは、ずいぶん変わった気がする。


静かな生活になるはずだった。


アニメ見て。

漫画読んで。

好きなことして。


そんな毎日になると思っていた。


でも。


今日みたいに。


ドアが開いて。


「お兄ちゃん!」


って声がして。


小さな足音が部屋を走り回るのも――


「……悪くない」


むしろ。


ちょっと楽しみかもしれない。


そのとき。


ふと思い出す。


帰るとき。


眠そうな顔のまま、あーちゃんが言った言葉。


『また……あそぶ』


ボクは湯船の中で、ふっと笑った。


「……うん」


きっと来る。


たぶん。


いや、絶対。


あーちゃんはまた、このアパートに来る。


「お兄ちゃん」


って呼びながら。


ボクはお湯から上がりながらつぶやいた。


「……ほえぇ」


どうやら。


ボクの一人暮らしは――


思っていたより、ずっと賑やかになりそうだった。


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