アデニウム王
_____王都
豪奢なシャンデリアが光に照らされ輝いている。
ホヴィ砂漠には階段などが少ない平屋の造りが多いが、そう言った家とはた天井が高く異なりこの城は天井が高い。城と名の付くのだから一般に想像するもので言えば、当然と言えば当然の造りだろう。
常ならば厳かな雰囲気であるはずの場所が、今日に限ってはどこもかしこも慌ただしく、どこか騒然としていた。
「陛下!」
その中に飛び込んできたのは両手一杯に資料を抱えた若い女性と、その後ろからゆったりと歩いてくる一人の老人。
「アデニウム陛下、どうかご無礼をお許し下さい」
「よい何事だ」
「評議会経由の情報にございます。正確には評議会に近しいものからの情報のようですが……」
そう言って側近に手渡された書簡を広げたアデニウムは眉間に皺を寄せ、手にした書簡から顔を上げた。
「__それで?」
「そこに書かれている通りでございます。ススピロ家がこのホヴィ砂漠に関する責任から距離を取り始めていると」
王の指が肘掛を少し叩いた。
「ススピロ家は長きに渡りこのホヴィ砂漠を管理してきた。私たち王族に変わってな。今更その責任を放棄する理由は無いはずだ」
そう、事実ススピロ家はその財力と権力を元に王族に変わりホヴィ砂漠の権力図で常に頂点に降臨し続けてきた。
「しかし陛下、近頃の奴らはあまりに独断的すぎます」
別の老臣が口を挟む。
「評議会とも距離を置き、我々の言葉に耳を貸さず、そして何より金の輸出量を減らしています」
「……つまり、お前たちは何が言いたい」
臣下の言わんとしていることは分かっているのだろうアデニウム王は態と疑問を口に出す。ススピロ家と王族は良好な関係を築いてきた。たとえ王族が傀儡状態だと揶揄されようと、彼らは報告義務を怠ったことはなく形式上の上下関係を遵守してきた。
それは紛れもない事実だ。
故にその事実を知っていてなお、それを口にできるのかということだろう。
しかし、その暗黙の了解は破られた。
「最悪の場合、ススピロ家は我らを、民を切り捨てるつもりでしょう」
沈黙。
その場の誰も口を閉ざした。
「………評議会はどう行動するつもりだ」
「ススピロ家に監査を、との事です」
「……監査か」
再び口を閉ざす。
「それは対立を生むだろうな。だが、止めることもできない。いずれこの争いは民を巻き込むことになる」
「しかし、何もしなければこのままススピロはこの国を見捨て、民は”王族も我々を見捨てた”と矛先はこちらに向かいます」
「……立場を示さなければならないな」
「……いいだろう、直接ススピロ家を問いただす」
側近は目を見開き、周囲の臣下は沈黙した。
「この砂漠を捨てることが真実ならば、王として見逃すことはできない。だが、もし評議会の誤認であるなら………」
その先の言葉は続かなかった。それは確かにアデニウム王の中に疑念の種が植え付けられたからだろう。




