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ローズマリーの大厄災  作者: 緒乃 巴
2.ホヴィ砂漠のエルムレス紛争
4/7

評議会の意向

____評議会 臨時会合


砂漠の白い石で囲まれた円形の議場は、昼間の砂漠に似つかわしくない薄暗さを纏っていた。


天井から差し込む光は細く、カーテンの重い布に遮られ濁っている。


「__静粛に」


年嵩の議長が杖で床を打つと、ざわついていた空気がようやく落ち着いた。その様子を確認した議長は議会を見渡してから重々しく口を開いた。


「本日みなに集まってもらったのは他でもない。議題は一点、ホヴィに関するススピロ家の動向だ」


その言葉に数人の議員が顔を見合わせる。


「まず報告を」


立ち上がったのはこの中ではかなり若い部類に入る男だったが、評議会は多数の議員によって構成されているため入れ替わりが激しく親しくない党の議員のことは覚えていなかった。


「……ススピロ家がホヴィの研究を名目に花畑への立ち入りを制限しています。研究員の選別、情報の秘匿、そして外部機関の拒否」

「外部機関の拒否?学環の協力を断ったと?」

「はい」


議会に小さなざわめきが走った。


「それは妙な話だ、学環を拒否するなど前例がないだろう」


別の議員が指を組み、慎重に言葉を選ぶ。

「研究の独占、という線は?」


若い議員は一瞬躊躇い、それから首を縦に振った。


「可能性は高いかと。ホヴィは砂漠全体の資源です。ススピロ家の私有物ではない。しかしあちらはそうは思っていないでしょう、それを“管理”という名目で囲い込む」

「接収だな」

誰かがぽつりと呟いた。

その一言が、議場の空気を変えた。

「接収……」

「そうだ、あの家ならやりかねん!」

「黄金を握っているのは自分たちだけだと?!」


議長が杖を鳴らす。


「憶測で断じてよいことではない。だが……だからといって無視できる話でもない」


別の議員が資料を机に置いた。


「これを見てください。最近、ホヴィの金に関する取引量が不自然な程に減っています。これまでこのような事例はなく、一定の輸出量を取引してきました」

「あの家が裏で流通を止めている可能性がある、ということか」

「はい」

沈黙が落ちた。やがて、白髪の老議員が低い声で口を開く。


「高々商家の分際でススピロ家は、評議会を軽んじている。己たちがこの砂漠の王だとでも言うような振る舞いだな」


誰も反論しなかった。


「王族は動かぬ。学環も排除。残るのは我々だけだ」


老議員は、ゆっくりと言葉を落とした。

「次に切り捨てられるのは、評議会ということになる」


議場に、はっきりとした恐怖が満ちた。


「手を打つべきだ」

「先に動かねば、主導権を奪われる」

「ホヴィの管理権を明確にせねば!」


声が重なり、次第に熱を帯びていく。

議長はその様子を黙って見つめていたが、やがて静かに宣言した。


「調査団を出す。ススピロ家の花畑、研究内容、全てだ」

杖が床を打つ。


「これは監査だ。敵対ではない。だが、警告になる」


その言葉に、誰かが小さく笑った。


「向こうがどう受け取るかは、別の話だがな」


議会の終了とともに、議員たちは去っていく。

その中には砂漠では珍しい赤褐色の髪を持つ男がいた。


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