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9 お互いの色

「賑やかね!」


馬車を下りたその先は花祭りの会場だった。

沢山の花々が飾られていて、どこから出てきたのか不思議に思うくらいの人で溢れかえっている。


会場の入り口近くに並ぶ露店は全て花冠のお店だ。

花祭りに来たのなら、まず最初に買うのは花冠だと決まっている。


「まずは花飾りよね」


でもこの花冠を探すのがまた大変なのだ。

黄色の花冠、青の花冠や赤と黒を混ぜた花冠など、種類がとにかく多すぎる。

その中から”お気に入り”を探さなくてはならない。


まず、百合の花が入っているのは当然として・・・後はどんな色の花冠にしようかしら?


立ち並ぶ露店に目をさまよわせていると、ちょんちょんとネルが私の裾を引っ張った。


「俺が作った花冠は?つけてくれないの?」


寂しそうにネルが問う。


その姿は捨てられた子猫の様に哀愁が漂っており、思わずうんと頷きたくなる。


んぅ!面が良い!ネルの花冠つけて歩きたい、いや、駄目よ。つけたくない!

心の声と必死に格闘する。


「それじゃあ意味無いの!」

 

このお祭りの最大の醍醐味はここで花冠を買って、それをつけて祭りを楽しむ所なんだから!

悪魔の囁きには負けないわ!


私の言葉にしゅんと項垂れるネル。


思わず、「帰ったら付けるわ」と口にしてしまっていた。


「絶対つけてね。約束だから」


「仕方ないわね」


約束してしまったからには仕方がない。私は嘘つきが大嫌いだもの。

指切りげんまんして、約束する。が、その約束を後で後悔する事になった。


ネルの作った花冠は、それはもう、こんもりと家に入りきらない位大量だったのだから。




「ネルはどれがいい?」


赤の花冠をネルの頭に乗せながら尋ねる。

しかし、どの花冠を乗せてもネルは同じことしか言わなかった。


「リリィと一緒が良い」


「あなたはいつもそう言うわ!」


もっとこう、自我とかないの?


リリィ、リリィって私の後をつける暇があったら自分の好きなものくらい自分で見つけなさい。と言ってしまいたくなる。


「あなた、私以外にもちょっとは興味を持ちなさいよ」と言いながらも、彼の中心が私であることに歓喜の声を上げる私がいる。

 

でも、それじゃあ困るのよね。特に今!


「好きな色とか無いの!?」


ああもう、このロボットみたいな青年を誰かどうにかしてくれ!と天に祈る。すると、その願いが女神さまに通じたのか、ネルがそっと私の髪を手に取った。

___そして髪に軽く口づける。


「この色と、あと翡翠色」

 

き、き、キザだわこの子。これからキザ男って呼ぼうかしら。


なんて誤魔化してみたけれど、胸の高鳴りは止まらない。


お互いの色が入った花冠を選ぶのは、恋人同士の証である。そして、その先には花祭りのジンクスがあった。

≪お互いの色の花冠をつけて花祭りを楽しむと、永遠の縁で結ばれる≫というジンクスが。


絶対に、ぜーったいに阻止しなくてはならない。これだけは。本当に。

 

しかし、他の色を提案してみてもネルは、「駄目。この色が良い」と頑なに曲げない。

 

結局ネルの花冠は、ミルクティー色の花と翡翠色の花が入った花冠に決定してしまった。


「リリィの花冠にも俺の色を入れて欲しいな」


するりと私の手に自分の手を絡め、ネルは耳元で甘く囁いた。


「い、嫌よ」


甘い、悪魔の様な囁きを否定し、他の花冠を探してみるが、目に入るのは、淡い青色の花の入った花冠ばかり。


冗談じゃない、ネルと永遠の縁で結ばれるだなんてごめんを通り越しておとといきやがれって感じだ。



「違うの。これは絶対違うんだから」


唸る様にそう言いながら、手に取ったのは白い百合と淡い青の花、そして黄色の花が入った可愛い花冠。


「ちゃんと俺の色が入ってる。嬉しい」

 

花冠が落ちてしまうのでは?と不安になるくらい私にすり寄るネル。その喜びように胸がきゅっと苦しくなる。


だから、これは違うんだってば!と心の中で叫ぶがその言葉が声になる事は無かった。


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