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4 面倒な番

「リリィ、お皿を用意してくれる?」


「はーい」


お母さんに頼まれて、私は意気揚々とキッチンへ向かう。

しかし、私の手がお皿に届く前に、ふわりと勝手にお皿が浮き上がり、テーブルの上に綺麗に並んだ。


「ちょっと、私の仕事奪わないでよ!」


私の仕事を次から次へと奪っていく彼に抗議の声を上げる。

家の事を手伝う事は私にとっての楽しみであり、家族との絆を深める大事な時間だ。


それを奪っていくなんて、嫌がらせにも程がある。


また脛を蹴ってやろうとネルに近づくと、彼も一歩私に近づきそして___


すりっと私の頬にすり寄った。


「っ、」


突然の行為に忌々しくも、どくんと心が歓喜の声を上げるのが分かった。


ちょっと待って、急に甘くならないでよ!


驚いてネルを突き飛ばす。

が、ぴくりとも動かない。ネルは頬を私にすり寄せながら、満足そうに笑った。

甘すぎる距離感に息が詰まりそうになる。


「”番”は相手に尽くすものなんだよ」


低くて優しい声が耳をくすぐる。


今まで農作業を手伝っていたのも、お皿を綺麗に並べたのも、全て私の為って事?

だとしたら、ネルは本当に馬鹿だ。勘違いにも程がある!


だって私、そんな事一つも望んでないんだもの!


「頼んでないわ!」


大きな声で抗議する。

しかしネルはクスリと笑って言った。

 

「嬉しいくせに」


「そんなわけ、無いでしょっ!」


その言葉が悔しくて、やっとの思いで蹴りを入れたが、ネルは察していたようでするりと私から離れていく。


離れていかないで・・・なんて思ってないんだから!


「思ってない、思ってないんだから」


小声でブツブツと文句を言いながら私は席に座る。


その横に、ネルが当然といった顔で座るのをみて、更に私の機嫌が悪くなる。


「隣に座らないでよ」

 

「じゃあ、どこに座ればいいんだよ」


父の隣には母がいて、小さなテーブルの上では必然的にネルは私の隣に座るしかない。

けれど、そうだとしても、何かがとっても気に食わない。


「ネルなんて、床で座っていればいいのよ。犬みたいに」


つん、と突き放す様にネルに言う。

母は、「まあ、落ち着きなさい」と私を諭すけれど、私の気分が良くなる事は無かった。


そんな私を見て、ネルはため息を吐くと、私の手に指を絡める。

また心臓が跳ねる音がした。


「・・・俺は、隣が良い」


薄いブルーの瞳が真っすぐ私の方を見ている。

甘くて、とろけるような声だった。


熱のこもったその視線に一気に頬が燃え上がるように赤くなっていく。


思わず、「私も」なんて言葉が漏れそうになった。

危ない、危ない。


”番”と言うのはどうしてこうも面倒なのだろう。


幼馴染の顔が脳裏に浮かび、あの日のことが再生される。


「番なんて碌な物じゃないわ」


冷たく吐き捨てるように呟く。


運命だから。そんな甘い言葉は私は信じない。

でも、どうしても惹かれてしまう事は否定できない訳で。


自分の心を勝手に決められているようで、本当に腹が立つ。


私には私の「気持ち」があるというのに。

誰かを好きになるのも、嫌いになるのも全部私の選択でありたい。


「そう?俺は悪くないと思ってるよ」


サンドウィッチにかぶりつきながらネルが呟く。


ちょっと顔が良いからって、ふざけないでよ!そう言ってやりたかったけれど、慰める様にネルが肩をすり寄せるので、私はぎゅっと唇を噛み締めるしかなかった。


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