16 甘いひととき
「暑いわネル」
もうそろそろ離してくれたっていいじゃない?
そう思うのだが、ネルはまだ満足できないようでぐりぐりと頬を擦り付けてくる。
この様子だと本当にベッドまで付いてきそうだわ。
「ねぇネル、このままずっとくっついてる気?」
「うん」
なれた手付きで私の髪をそっと梳かしながら、
迷い無くはっきりと言いきった。
即答ね!この甘えたさん!
「リリィ、愛してる」
とろけるような甘い声でネルが囁く
宝石の様にキラキラと輝く青い瞳が真っすぐ私だけを見つめていた。
「私もよ。愛してるわ」
コツンとおでこを合わせ、じっとお互いの目を見つめあう。
絡み合う二人の腕輪から百合とジャスミンの香りがした。
んー!甘い、砂糖菓子のように甘いわ!
そっと唇にキスをして祈る様にネルが囁く。
「ずっと傍にいて」
「いるわ。ネルこそ、約束破ったら許さないんだから!」
針を千本呑み込んで貰うわよ!と脅すと、ネルが「いいよ」と言って笑った。
「リリィ。好きになってくれて嬉しい。ありがとう」
「ネルと出会えて私も嬉しい」
・・・最初はボロ雑巾にしか見えなかったけど
ネルが喜んでくれることがまるで自分の事のように嬉しい。
番なんて難しい事はもうどうでも良かった。
ネルが好き。
世界で一番、誰よりも。
ネルも同じ気持ちでいてくれる。なんて、幸せなんだろう。
幸せすぎて逆に怖いわ。
「いつかネルの秘密を教えてね」
偉大なる大魔法使い。彼が頑なに過去を語らないその理由は、多分あまり楽しい記憶がなかったからだろう。
これからは楽しい思い出が沢山出来るからね。
離してくれって泣いて頼まれたって、絶対離さないんだから!
しつこさでいうのなら私もネルに負けてないわ!・・・しぶとさの間違いかしら?
ネルにもたれ掛かりながら絡めた指に目を落とす。
花祭りで買ったブレスレットが光った。
「分かった。約束する」
頬に唇が落とされる。
ネルの事は全て知りたい。そして優しく包み込んであげたい。
それがどんな過去だったとしても。
「リリィの事ももっと知りたい」
「いいわ、何でも教えてあげる」
と言っても、隠し事をするような性格でもないからネルに教えるような秘密があったかしら?
首をかしげながら考えてみたが、思い付かない。
「好き。リリィの全部が好き」
ちゅ、ちゅ、とそこらじゅうにキスを落とすネル。
キス魔の称号は依然、変わらないままなのね。
嫌じゃないけど、ちょっと困惑する。
この人、私がいなくなったら死んじゃうんじゃない?それか、人魚のように泡になって消えるとか。
「ずっと、ずーっと一緒よ。ネル」
キスを返そうとした、
そのとき______
甘い雰囲気を台無しにするような父の困った声が聞こえる。
「あのー、ちょっと失礼しても?」
リビングに行きたいのにちょっと行けそうにない雰囲気。困ったなぁっ。
と言った様子でじわじわと扉から顔を出している。
両手で目を隠していたけれど、指の間は開かれ、がっつりこちらを見ている。
まさにガン見状態だ。
せめて見つからないようにしてよ!恥ずかしいじゃない
「お父さん!」
「いやぁ、いい雰囲気だったからさ」
頭をかきながら、遠慮の無くなった父がリビングにやってくる。
せっかくの雰囲気が台無しよ!
「流石に見ないでくれる!?」
「親としては気になるというか、なんと言うか」
もう小さな子供じゃないんだから!
見守って貰わなくて結構!
顔を真っ赤にして怒る私を見て、ネルがくすっと笑った。
胸がきゅっとなる。
もう、せっかく甘い雰囲気だったのに!
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