11 花占い
「もう迷子になりたくないから」
そう言って強く私の手に自分の手を絡める。
タコか何かですか?
そんな軽口も言えないくらい、ネルは真っすぐ私を見つめていた。
その視線から逃れたくて必死に露店に目を向ける。
「あ、花占い!花占いしようネル!」
ネルの手をひき花占いのお店に飛び込む。
お店の中にはブレスレッド程の大きさの花輪が並べられている。
まず最初にこの花輪を購入し、水の張った壺の中に放り込む。
花輪は壊れやすく出来ており、水の中で散らばったその花びらを見て運勢を占うのだ。
選ぶ花輪にも勿論意味がある。黄色い花びらか、金色の帯が付いた花輪は金運。赤い花なら、恋愛運と、その種類も様々だ。
「どれにしようかなー。やっぱり気になるのは金運だよね」
お金が無い!なんて状態は脱したけれど、あればあるだけ安心できる。
そう、私には番なんてものより、お金が大事なの!
と言いながらも、赤と黄、そして黒の花輪を選択する。
赤は恋愛、黄色は金運、黒は・・・なんだっけ?忘れちゃった!
綺麗だから。という理由で選んだそれを握りしめ、ネルに視線を移す。
「相変わらず私の事しか頭にないのね」
緑と赤、青色の花輪を手に取っているネルに皮肉交じりにそう言った。
占いにまで私の色を出さなくても良いじゃない。
健康運よそれ。
数か月前には生死の境をさ迷っていたとは思えない程今のネルは元気だ。
健康運なんて、必要無いと思うんだけど。
と思いながらも、私の色を選んでくれた!と喜ぶ気持ちが隠せない。
「全く、困ったものだわ」
誰にも聞こえない様に小さく呟いた。
「じゃあ、沈めるわよ」
そう言ってまず先に私が花輪を壺へと投げる。
ぽちゃん。と小さな音を立てて花輪は沈み、赤の花は僅かに形を残し、黄色の花はそのまま沈んだ、そして、黒い花は不吉に弾け、散り散りに壺の底や水面に浮かんでいる。
「私の金運が・・・!」
沈んでいく私の金運に思わず絶望の声が出る。
暫くこの金欠は続くらしい。
なんてこったい大問題!
壺の奥に沈んだ黄色い花を悲し気に眺める私と違って、占い師は興味深そうに黒の花を眺めていた。
そして、意味深な言葉を口にする。
「これはこれは・・・。お嬢さん。気を付けなされよ」
「え?」
占い師の神妙な様子に、思わずきょとんと呆けた顔をしながら問う。
黒い花って、どんな意味があったっけ不幸?
「これは、裏切りのサインだよ。しかもとても強い」
「裏切り?」
それって、幼馴染からの婚約破棄?それとも、もっと別の事?
詳しく聞こうと占い師に詰め寄ると、とたんニカっと笑って、「冗談じゃよ、冗談。当たるも八卦、当たらぬも八卦。それが占いってものよ」と言った。
「何よ、怖がらせないで!」
恐怖のあまり私の鉄拳が火を噴くわよ!
ほっと安堵の息を付きながら視線をネルに移す。次はネルの番だ。
「ネルはどんな結果なのかしら」
健康運はばっちりだと思うけど。
ネルが花輪を投げる。
ぱっちゃん
水面に花輪が付くと同時に大きく花輪が跳ねて弾ける。
緑も、赤も青色も。全て粉々になって沈んでいった。
三人の息が止まる。
・・・ふ、不吉だわ!
黒猫が前を通り過ぎるより不吉だわ!
思わず占い師の顔を見る。ネルも爆散した花輪に困惑の表情を浮かべていた。
「こんな結果は初めてじゃ!」
驚きのあまり椅子から転げ落ちる占い師。その椅子の足は四本あるところが三本しかない。
そんな不安定な椅子に座っているからよ!
思わず叫びそうになりながらも占い師の反応が気になって仕方がない。
他は兎も角、どうして緑の花まで砕け散ったの?
当たるかどうかなんてわからない、ただの子供の遊びの花占い。
けれども、どうにも気になった。
「不吉じゃとーっても不吉じゃ」
「何が不吉なの」
椅子に座りなおした占い師をじっと見つめる。
一体何が、どうして不吉なの?
グッと占い師と私の距離が近づく。
ネルが不快そうに眉を顰めたのが分かった。
息が詰まるような、時間が暫く続いたかと思うと____
「さあ?」
占い師はけろっとした顔で首を傾げた。
さあ?って何よさあ?って!期待した私が馬鹿みたいじゃない!
ズコっと足を滑らせる私に占い師は笑って言った。
「占いなんて、そんなもんさ」と
花占い、現実にあればやってみたい・・・。
仕事運と、金運を。
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