43…エピローグ
「―――おーっい!!ルドーー!!ドナ――!父上たちが呼んでいるよ―!」
「――レイってばそんなに急かさないでよ!やっと闇魔法が完璧にマスターできそうなのよ?」
先程まで東屋でアフタヌーンティーを楽しんでいたドナは、お茶を楽しむより魔法の特訓の方がしたかったらしく、3つ年上のルドをつれて庭園の広場をシールドで囲って魔法の特訓をしていたらしい。
「…ま―たルドを自分の特訓に突き合わせているんだろ?」
「失礼ね!!一緒に特訓しているのよっ!!」
「…」
レイとドナの喧嘩をはぁ…と嘆息しながら見つめるルドは、いつ開放してもらえるのか半ば諦めつつも想像していた。
「ーー見てみなよ!ルドが死んだ魚のような目をしているぞ?!可哀そうだと思わないのか?!」
「――え?…ルドは…私と一緒に特訓するのが嫌なの??」
ウルウルと泣きそうな眼差しでルドを見つめてくる。
正直毎度付き合わされるのは勘弁願いたいのだが、ドナといるのは好きだし、泣き顔はなぜか見たくない。
「―――…嫌じゃ…ないよ」
ルドは、自分のドナに対するよくわからない感情にガクッと項垂れつつも、ついついドナを擁護してしまう。
「ルドはドナを甘やかしすぎだよ!まだ10歳にもなっていないのに、闇魔法をマスタ―するとか…そこまで張り切って頑張らなくたっていいじゃないか!」
「――わかってないのはレイの方よ!子供の成うちにたくさん学んだ方が、いっぱい多くを学べるってお母様が言っていたもの!!!むしろやったらやった分だけ結果が出るのに、何でレイは光魔法をマスターしようとしないのよ!ルドはもうマスターしてるのに!!」
「――ルドは僕より3つも年上じゃないか!それに聖女様の息子なんだぞ?!マスターできてもおかしくないね!」
「――はぁぁぁああ?それを言うなら私たちのお父様とお母さまは大陸最強の魔法使い夫婦なのよ?!全ての魔法をマスターしているのに、その子供のレイが中途半端だなんて情けないと思わないの?」
「ーーいいんだよ!そのうちマスタ―出来るから!僕の魔法センスはきっとドナにほとんど持っていかれたに決まってる!その代わり剣術なら僕はドナに絶対負けないから!」
「も―――!!女の私に剣術で勝てて本気で喜ばないでくれる?!」
双子の兄妹の喧嘩は毎度の事である。
戻ってくるのが遅い子供たちを心配して両親たちがこちらにやってきた。
「…ドナ?お兄様をあまり困らせてはいけませんよ?」
「――まぁまぁ、ドナはリアの幼いころにそっくりだからね!すぐに誰かと競い合おうとするところなんて本当にそっくりじゃないか?愛らしくて良いと思うけど?」
「…あら?ドナが私にそっくりと言うならレイも貴方にそっくりよね?」
「え?ーーそれはレイが私に似て格好良いってこと?」
「ーー・・・。
ハリーも昔は私に勝てなくて、よく言い訳をしていたわねってことよ!
レイは何故そんなところがハリーに似てしまったのかしら?」
セシリアの揶揄う言葉に、思った以上に衝撃を受けたハリアスが、なんとも言えない表情をしながらふてくされつつ、セシリアの頬を両手でむぎゅむぎゅと撫でたり抑えたりし始める
「――ちょっとちょっと…2人共子供たちの前でしょ?こんなところでイチャつかないでよ?」
アイの言葉でセシリアとハリアスは我に返り苦笑する。
「――ドナ!あなたはもう闇魔法をほぼマスターしていて本当に素晴らしいわ!他の全ての属性もほぼ使えるなんて魔法の天才よ!」
アイの言葉にドナはドヤ顔でふんぞり返って鼻高々にしてからレイを流し見る。
「――レイはちゃんとドナの面倒を見てあげて本当に素敵よ!
勉強も剣術も、素晴らしい才能だと先生方にも褒められているってセシリアからも聞いているわ!
魔法だってほぼ全て使えるようになったのだから、焦らずゆっくり頑張ったらよいのよ!」
「――うん!」
先ほどまでしかめっ面をしていたレイもアイの褒め言葉で元気になったようだ。
ーールドは次は自分の番かと期待の眼差しでアイを見つめている。
「――ルド、お前は自分の事より2人を優先に考えて父さんは誇らしいよ。ただお前も素晴らしい才能を持っている。我慢するばかりじゃなく時には反抗して喧嘩したって良いんだぞ?子供のうちはそれが大切なコミュニケーションになるからな!」
「――父さんっ…?!」
「ーーあらぁ?滅多に口出さないリュシードがルドにアドバイスするなって‥今日は大雨でも降るのかしら?」
「ふふ…アイったら…リュシードだって子供たちにアドバイスしたい時だってあるはずよ♪」
揶揄い混じりに言うアイを、楽しそうに微笑みながらセシリアも会話に混じる。
「お父様!!お父様たち4人は英雄なのでしょう?…僕やドナも大人になったら素晴らしい【英雄】になれるのかなぁ?」
「あぁ、きっとなれるよ!お父様たちも、幼い時は沢山の失敗を経験して大業を成し遂げたんだ!
そしてレイとドナは、私とお母様の力をしっかり継いでいるからね!
ーーきっと私たちよりも強く素晴らしい【英雄】になれるはずだよ!」
自信満々に答える父の言葉にレイは期待で胸を脹らませ、キラキラの眼でドナとルドを見る。
「――僕たち!!頑張って素晴らしい【英雄】になろうね!!」
「――当然よ!」
「――そうだね。」
3人は力強く拳を振り上げると、アフタヌーンティーを楽しんでいた東屋に向かって競争するかの様にかけていく。
「――きっと…あの子たちは英雄になれるわよね…?」
「――あぁ、なれるさ。」
「そうね…奇跡的にも女神様と魔神と同じ魔力を強くもって生まれてきた2人よ。
…きっとこれからのこの世界を守るために頑張ってくれるわよね。」
「――そうよ!ルドだってきっと2人を見捨てないわ!あの3人ならきっとこの新しい世界を守る存在に成長してくれるはずだわ!」
ーー女神が魔神と共にこの世界に溶け込んでからすでに18年程経っている。
これまで継続して王国内の魔力調査を行ってきて、女神と魔神の影響は出てはいないーーと思いたかった。
しかし、魔力の流れが徐々に変化を伴っていることをすでに彼らは気づいていた。
ーーただ魔力が増えているなら問題はなかったが、ここ数年で魔神の力が感じられるようになってきたのだ。
みたこともない魔獣のような獣が各地に現れ、彼らはすでに幾度も討伐を行っている。
ーーこれは女神が魔神と上手く世界に溶け込めなかったことが原因なのか?
それとも魔神の執着が女神の力をも超え初めてしまっているのか?
それは誰もわからない。
しかし、物語から解き放たれたこの世界は、これからもっと変わっていくのだろう。
それが平和へと導くのか…それとも…
ーーハリアスとセシリアの子供である双子たちは、奇跡的にも2人の神の力を強く受け継いで生まれてきた。
1人は光魔法と全属性を持ち、1人は闇魔法と全属性をもっている。
ーーこれは偶然?…否、きっと偶然ではない。
神々に最も近づいた私たちだからこそ、力を託されたのかもしれない。
そう思った方がしっくりくる…
これからも調査は続けていくにしても、きっとこれからの世界を担っていくのは子供達になるのだろう。
ーー転生した悪役令嬢は思う。
今、自分にできる全力を尽くすのだと。
そしてその傍らには愛する夫と、親友である聖女と頼りになる騎士がいてくれる。
ここからは、次代を継ぐ子供達の才能をどこまで引き出せるのか。
セシリアは楽しみながら作戦を練るのだった。
fin
最後までご覧くださいましてありがとうございます。
セシリアは無事に生存することはできました。
しかし…やはり女神の甘さと言いますか…
彼女は愛するものを手放せないと言いますが…
そのことによって世界は魔獣の存在する世界へと変貌を遂げてしまうわけですが、
流石に女神も罪悪感を覚えたのか次代の子供達に願いを力で託しています。
…しかしこれがまた新たな悲しい結末を引き起こす原因になるとは思いもしない女神…
続きをいずれ執筆しようと思っていますが、
闇魔法は扱いによって悪にも善にもなり、1番の特徴は魔獣を操ることができるところです。
しかし、あくまで魔獣を操るのは闇に囚われた強い魔力を持つもののみ。
…ドナは最高の魔力と魔力センスを持って生まれたことで更なる高みを目指し、執着心、人々に畏怖される存在へと変わっていきます。
そのドナを必死で止めようとルドは行動しても2人の道はすれ違ってしまう。
悲しい悲恋が世界を滅亡に導くのか。それとも…
かなり胸が痛くなる展開のため、元気な時にいずれ執筆したいなと…思っています。




