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転生悪役令嬢の生存作戦  作者: 芹屋碧
3章 悪役令嬢は立ち向かう【最終章】
30/43

30…闇魔力に魅入られた者









 神殿での魔獣殲滅後、セシリアが目覚めたのはその日の夜であった。

 目覚めると高品質な肌触りのベッドに自身が眠っていたことに気づく。

 天蓋は見たこともないような繊細な細工が施され柔らかくて薄い布が幾重にも重なって垂れている。

 視線だけで周りを見回すと、斜め左に小さな寝息を感じ取り気だるさの残る自身を少し動かしながら視線を向けると、そこにはハリアスがベッドにつっぷして眠っている姿があった。



 「――ハリー?」


 よくよく室内を見回せば、どうやらハリアスの私室であることがわかる。


 (…何故私はここに??)


 自分が何故この場にいるのかが理解できず、どうやってここまでやってきたのか記憶を必死で辿っていく。


 (――確か神殿の広場でブラックドラゴンと対峙して…殲滅させた後大神官を捕縛して…その後は???)


 どうしても思い出そうと思っても、捕縛した所までしか記憶を辿ることができす、冷たい汗が背中を伝う感覚がする。


 (…まさか私はあのあと気を失ったの??)


 目が覚めて今が何日で何時なのかもセシリアにはわからない。

 何故ハリアスが自分に寄り添ってくれていたのかすら全くわからないのだ。


 (――あの後どうなったんだろう…)


 ブラックドラゴンと戦った時、初めて聖魔力で魔法剣を発現させた。

 いきあたりばったりで思い立った行動で、上手くいくとは本当は思っていなかった。それでも女神(ネフレテ)様と対話した時に感じた聖魔力であれば自分にでも扱えるような気がしたのだ。

 

 セシリアの勘は見事に当たり、自分でも魔法剣を発現させることができたのだ。更には自身の魔力を流し込むことで更に大きな魔力となって魔獣を殲滅することに成功した。

 これは、選抜隊の4人全員が聖魔力を扱えるという大きな成果となった。

 魔神(グリムディア)に対抗する為の策が幅が広がることでできることはきっと増えるはずだとセシリアは内心期待している。

 ただ魔獣1体殲滅するだけで気を失ったのであれば、まだやらなければならない課題も多いことがわかる。


 色々な懸念点を頭の中で整理しながらぶつぶつ呟いているといつの間にか目を覚ましたハリアスがセシリアの手をぎゅっと握りしめていた。


 「――え?」


 「やっと気づいてくれたね。さっきから呼びかけていたのに返答がないからどうしたのかと思ったよ…」


 苦笑しながら声をかけてくれるハリアスはセシリアの手を握ったまま離そうとはしない。


 「ごめんなさい…ちょっと考え事をして…」


 「――体調は大丈夫そう?」


 「えぇ、まだ気怠さはあるけれど大丈夫そうです。私…どのくらい眠っていたんですか?」


 「半日くらいかな?…もう夜中になってしまったね。」


 「…やっぱりその位は眠ってしまっていたんですね…あの後どうなったんですか?」


 ハリアスの話では、ブラックドラゴン殲滅後はすぐにその場の復旧作業が急がれ、フリード大神官はすぐに魔力抑制の鎖に繋がれて王宮の牢に投獄されたらしい。

 今回の件は信用できるものに任せると国王陛下に選抜隊が一任されており、すでにリュシードが尋問にあたっているらしい。

 しかし、闇魔力に心が蝕まれていたようなのでアイの浄化を先に行うと、フリード大神官は闇魔力に魅入られていた時の記憶は曖昧にしか覚えていないとのことだった。

 フリード大神官の供述によると、幼少期から女神(ネフレテ)様を盲目的に信仰していた為、2年前の魔神(グリムディア)の石碑定期調査で大神官が石碑に近づいた際に、その盲目的な信仰心が魔神(グリムディア)に付け込まれたのではないかと話しているらしい。

 憑き物が取れたようにはっきりと謝罪を繰り返す大神官が嘘を言っているようには見えないため、様子をみつつ今後どうするかは選抜隊で検討することとなっているようだ。


 アイもリュシードも今は王宮に泊まっていて、明日また選抜隊と宰相、バトネ公爵と王国騎士団団長2名の8名で今後どうしていくかの会議をもう一度行うことになっている。


 「――ハリーの聖魔力…とても扱いやすかったです…ありがとうございます。」


 話を聞き終えた後、改めてネックレスの魔法石のお礼を伝えるセシリアを嬉しそうにハリアスは見つめ返してくれる。


 「リアの役に立ったんだから本当によかったよ。また魔法石に魔力を込めてあげるから、後で預からせてね?」


 「ありがとうございます。お願いしたいです♡」


 「今日はもう遅いから明日ゆっくり皆で話をしよう。もう少しおやすみ。」


 「はい…でもハリーは?」


 「私は実はまだやらないとならないことがあってね。今夜は仮眠程度しか取れそうもないんだ。だから今夜はリアがここで眠ってほしい。良いかい?」


 ハリアスはやることが山積みなのにも拘らず、セシリアのそばについていてくれたようだ。その気持ちがとても嬉しかったことは言うまでもない。

 彼のベッドを占領するのは申し訳なかったが、ハリアスの好意を無下にするのも躊躇われたので、ありがたく寝かせてもらうことにしたのだった。




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