14…サプライズ
長期休暇も終わり、あっという間に学園生活も過ぎていく。
その間も選抜隊の会議は毎週行われていたし、魔獣調査も引き続き行われていた。
セシリアは封印魔法について時間を見つけては研究し、より強度の高い封印ができないか思考錯誤している。
ハリアスとは時間がないながらも、学園で4人で会う以外に2人で出かける時間を月に2回ほどお茶会とは別に作ってくれていた。
アイとの女子会の後から、自分の気持ちに向き合いたいと思えるようになったセシリアであった。
…しかしそれで困っているのはハリアスとの関係性だったのだ。
元々友人関係としても良好だったのに、2人きりの時間が増えたことで特別な表情に気づけるようになってしまった。
…恐らく…恐らくだが、ハリアスの自分を見つめる眼差しには熱が籠っているように感じるのだ…。
ハリアスは【ハリー】と呼んでほしいとあれから何度も迫ってきて、今では視察の時だけでなく学園でもニックネームで呼ばされている…
呼ばないとむすっと怒るけれど、呼んだら呼んだでものすごく嬉しそうに微笑むから、寿命が縮みそうなほど心が動揺してしまう。
――非常によくない…良いわけがない!!
だって元々推したいくらいにハリアスのことは好きなのであって、恋心じゃないから許されるって思っていたのだ…。
しかしセシリアも恋多き年頃の少女なのである。
熱くて甘い眼差しを毎日向けられたら、こっちまでその気になってしまいそうだ…。
しかも美男子!!100人中100人は絶対そう答えるであろう美男子なのだ…平静でなんていられるわけがない。
おかげで意識してしまい、ハリアスと行動を共にするときは心臓がいくつあっても足りないのでは?とすら思うのだ。
付き合ってもいないのにこんなに気持ちが揺さぶられるということは、両想いになんてなったら小説の通りのセシリアになりそうだ…
――いや…たとえ一途に恋したとしても、嫉妬に駆られてライバルを毒殺しようとか、とんでもない執着は見せないとは思うけれど…
そうはいっても、魔神グリムディアの圧倒的な魔力のプレッシャーを思い出すと、弱みは少しでも少ないに越したことはない。
アイはあれからお互いの恋バナが楽しいらしくて、よく寮の部屋に泊まりに来るようになった。
それはそれですっごく楽しいからよいのだが、ハリアスのことを聞かれるとどんどん恋しているかもしれない自分が恥ずかしくて、真っ赤になってしまうのがいたたまれない。
気づけばあと2週間もしないうちに2年生は終わりを迎えようとしている。
あっという間の日々を思い出しながら、寮から学園に向かう道を歩いていると、突然ぐいっとセシリアは腕を掴まれ建物の影に連れ込まれた。
(――――え?!…何?!)
体格からして明らかに背の高い男性なのだろう。目の前には相手の制服のネクタイとネクタイピンが目に入る。
なぜ女子寮と学園の登校用の道に男子生徒が?!
(――まさか犯罪に巻き込まれた?!)
思わず相手が敵なのかと思い魔法を手に込めた瞬間、パッと掴まれた腕が離される。
「――セシリア待って!攻撃しないで!私だ!ハリーだ!」
「――え?…ハリー??」
聞き馴染んだ声に思わず見上げると、そこに立っていたのはハリアスだった。
「ごめんね。…どうしても2人で話したくってリュシードを撒いて、ここでこっそり待ってたんだ!」
にこっと爽やかにハリアスは微笑む。
「そ…そんな微笑まれても駄目です!なんでリュシード置いてきちゃうんですか!」
「え?…邪魔だから♪」
セシリアはハリアスの言葉に頭が痛くなり思わず目を閉じてこめかみをおさえてしまう。
「――リア。お誕生日おめでとう!」
ハリアスの言葉に目を開くと目の前には美しい6本のバラとカスミソウの花束があった。
「…これは…」
「誰よりも最初にお祝いの言葉を直接伝えたかったんだ。誰にもまだ言われていないかい?」
「…ぇ…えぇ。」
「よかったー。朝早くからここに待機してよかったよ!」
「…それは…リュシードが可哀そうなので今後はやめてください…」
「えー…善処するよ。」
ハリアスの善処するはあてにならないとセシリアは受け取った。
「…花束…ありがとうございます…」
とった行動はめちゃくちゃだったけれど、わざわざ自分のために花を届けてくれた気持ちがセシリアはとても嬉しかった。
「喜んでもらえてよかった♪これも受け取って♡」
ハリアスは小さな小箱をそっと開けると、中には魔法の込められた小さな一粒の宝石のネックレスがあった。
「これ…魔法が付与されてますね?」
「さすがリア!よくわかったね。この石は王家で管理している魔法を付与できる特別な石なんだ。
その石に聖魔法を込めたから、きっと魔神と対峙するときもリアを守れるんじゃないかなって思ったんだ」
「ハリー…こんな素晴らしいものを…私のために?」
「リアにしか贈らない。私にとってリアは特別だから」
ハリアスの顔はじっとセシリアを見つめたまま熱いまなざしを向けている。
その眼差しから視線を逸らすことなんてセシリアにはできるわけがない。
次第に近づく眼差しに囚われてしまったかのように鼓動は早鐘を打ち、頬は熱を持って思考を妨げていった。
――もしかして…
「リア…あいし――」
「み――つ――け――た――!!!」
―――びくっ!!
咄嗟に2人は離れ、声がする方向へ振り向くと、そこには恐ろしい形相をしたリュシードが佇んでいたのだった。




