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転生悪役令嬢の生存作戦  作者: 芹屋碧
1章 転生悪役令嬢は思い出す【2学年】
13/43

13…幸せになる権利













「・・・私・・・リュシードが好き・・・」



 「え?」


 突然のアイの告白にセシリアは目を見開いて間の抜けた返事をしてしまった。



 「えっと・・・私・・幸せになれないって決めつけてたっていうか・・この世界の人に恋しても報われないって・・ちょっと壁を感じていたっていうか・・

 だけど・・私にも幸せになる権利があるなら・・・私も恋愛したいなって・・

 恋するならリュシードがいいなって…思って…」


 余程興奮していたのか、自分の言ったことをどう説明するかあたふたと慌てるアイは、まさに恋する乙女そのものであった。

 15歳の少女は青春で恋も沢山しておかしくない年頃だ。

 きっと誰も知っている人のいない世界だからこそ、少しでも深い関係を持てる人が欲しいのもあるのだろう。

 


 「私は良いと思う。・・・実はアイと結ばれるのは小説だと多分(・・)ハリアスなんだけど、好きな相手は自分で決めてよいと思うの。」


 「うん!!私もそう思う!!小説の通りなんて嫌!・・・でも多分(・・)っていうのはなんで?よく覚えていないの?」


 「あ…いや…その…ちょうど終盤あたりまでしか読めなかったっていうか…エンディングはどうなったかわからないんだよね!

 あくまで私が読んでいた小説のまま進んだなら、多分ハリアスとアイが結婚してたんじゃないかな?っていう想定…かな。」


 「んーー・・・それなら多分結婚してない気がする!」

 口元に手をあてて真剣にアイは考察しているようだ。


 「え?なんでそう思うの??」


 「私自分を好きになってくれないと嫌だもん!殿下は私の事好きじゃないのまるわかりだからぜっっったい嫌!

 ・・・もしその小説で結婚話が出たんだとしたら、殿下しか私には頼る相手がいなかったとか、依存みたいな状態だったんじゃないかなって思う。」



 「・・なるほど・・・確かにあの甘えん坊聖女なアイだったら、他に頼れる人がいないからって思ったらハリアス様を選んだかもしれないわね!

 ・・・恋愛っぽいシーンもなかったような・・・絆の生まれるシーンは何度かあったんだけどね?」



 「うん!それなら私も納得できるよ!

 リュシードはちゃんと私を見てくれて、もしかしたら好きでいてくれるのかな♡ってわかるんだ・・何となくだけど・・・だから気になって・・気づいたら好きになってたの!

 …でも殿下とは気は合うから絆は生まれるかもしれないけど・・恋愛とかときめきとか・・・無理無理無理・・・違う・・そうゆうのじゃない!!」


 顔面蒼白で否定されるとどう反応しても誰かを傷つける発言になりそうでセシリアは言葉が出せない。

 しかしアイの本気は十分に伝わってきたのだった。


 ――でももし本当に小説のアイが好きになってくれなきゃ嫌なんだったらハリアスは?

 …ハリアスはアイをどう思っていたのだろうか?


 ふとそんな疑問が頭の中をかすめる



「――セシリアは?セシリアは好きな人はいるの?」


 自分のことは言い切ったのか、すっきりしたアイは期待の眼差しでセシリアをじっと見つめる。


 「私?・・・私はそういう人いないから聞かれても答えようがないなー・・だって私2年後までに死ぬ予定だし?」



 「!!!」


 アイは思い出したのか、何とも言えない衝撃的な表情でやらかした感を、全面に出して固まってしまう。


 「ぷっ・・・そんな気にしないで?私前世を思い出した時から気づいていたから今更なのよ?ただそんな死ぬ日がわかってて、恋愛する気分になんてなれないじゃない?

するとしても死なないってわかってからじゃないと・・難しいだろうなって思うんだよね」



 「・・・・・それは・・そうかも」


 唇を尖らせながらもアイは気持ちを察してくれたようだ。



 「ま…私は死にたくないから思いっきり足掻くし、アイも協力してくれるんでしょう?」


 「もちろんだよ!!こんな奇跡のような出会いで友達になれたのに、ぜっっったい失いたくないもん!」


 「ふふふ。嬉しい♪私もアイと友達になれてほんと嬉しいよ♡」


 2人は声をあげて笑いあいあう。



 「それじゃ殿下とはどうするの?死ぬ運命は回避するでしょう?そしたらそのあとは?結婚?」


 どうやらアイは本気でセシリアは死なないと思ってくれているようで、その先が気になって仕方ないようだ。


 「ん――…正直再封印さえ終われば私たちは婚約解消しても良いと思うのよね。元々魔神対策みたいなもので、王太子と守り人の関係は強くするべきっていう考えで進められたものだったし。

 彼も私のことは友人と思っていると思うわ。」


 「え?殿下が?セシリアを友人?…いやいやいやいやないない!」


 「??」


 「私がなんで毎回殿下と喧嘩してると思ってるの?」


 「え??…気が合わないから?」


 「ぶっぶーーーー!!違いまーす!

 セシリアが大好きだからだよ!!」


 「??だから友人として――」


 「違う――!!セシリア…鈍感すぎだよね?絶対鈍感!

 あれだけ火花散らして私と殿下奪い合いしてるのに気づかないなんて!」



 「…え?…まさかハリアス様が私を恋愛対象として見てるなんて…言わないよね?」


 「言ってるけど?」


 「いや、ないない!!絶対ないから!!」


 「…なんで言い切れるの?」


 「だって…小説で私はハリアス様に嫌われているのよ!私悪役令嬢なんだもの!!」


 「は?悪役?誰が????」


 「私よ!!」


 「…はは…それこそないわー…学園のマドンナ的セシリアが?高嶺の花なセシリアが?誰にでも優しくて頭良くて魔法の天才のセシリアが悪役??どんな冗談??」

 

 あまりにも思いもよらない言葉だったのかアイは呆れ半分で吐き捨てるように言ってしまう。


 「冗談なんて言っていないわ!!セシリアはハリアス殿下に恋して執着して、聖女様に意地悪して、挙句魔神に憑依されてハリアス様と聖女様に殺されるんだもの!」


 思わずカッとなって叫ぶように暴露してしまった。

 …言ってはいけない本人の前で…


 「え?…私が…セシリアを殺す??」


 「…小説の…中の話よ…」


 「…でも…信じてるよね?…セシリアは私に殺されるかもしれないって…だから自分を悪役だと思ってるんだよね?だから殿下を好きにならないようにしてるんでしょ!」


 「…」


 アイのいうことはその通りだった。セシリアには返す言葉も見つからない…何を言ってもアイを傷つけてしまいそうだった。


 「…前世を思い出してからずっと一人でそんなこと考えてたの?」


 「…私のせいで…人類が滅亡なんて…嫌だもの」


 「…私と殿下のことが…怖かった?」


 「――それはないよ!私は2人のこと大切な友人だと思っているわ!!」


 「私もセシリアが悪役だなんて思ったこと1回もないよ。親友だって思ってるもん…それに…殿下は絶対セシリアが好きだから…

 いっつも私がセシリアと話している時セシリアを見る殿下の目は恋する目だもん!」


 「…そんなこと――」


 「あるよ!…だって…リュシードが私に向けてくれる目とおんなじだから!!」


 「え?」


 「言ったでしょ?私は好きになってくれないと相手を好きになれないんだ。臆病だから…リュシードはすごく私にあったかくて熱の籠った目で私を見守ってくれてるの!あれは友達だからなんかじゃないって私は信じてる!」


 「…アイ…」


 「セシリアが自分のせいで人類滅亡したら嫌だって思う気持ちはわかるよ。でもね、自分の人生じゃん?自分の好きになる人くらい自分で決めようよ!

 さっき私にも言ってくれたでしょ?魔神再封印するんでしょ?なら生きるんでしょ?

 そのあとのことを今絶対考えなきゃいけないわけじゃないけどさ?今殿下がセシリアを想う気持ちや、セシリアが誰かを想う気持ちは、ちゃんと大切にしたほうが良いよ!!」


 言葉を震わせながらも真剣に語るアイの瞳には怯えるセシリアが映っていた。


 …私…怯えていたの?…小説の未来から逃れたくって…相手の気持ちからも、自分の気持ちからも。


 きっとそんなセシリアをアイは放っておけないんだろう。


 (…親友って・・・こういう関係なのかしら)


 胸の奥が暖かくなって嬉しさがこみ上げてくる。

 きっと1人だったらこの気持ちには気づかなかった。

 自分が恋して執着する未来を恐れて、ハリアスに嫌われたくなくて、魔神に憑依されたくなくて

 その根本の自分の【心】に蓋をしていた。


 そんなセシリアをアイは叱咤してくれる。

 お節介と思う人もいるかもしれないけれど、私にとってアイの言葉は救いでしかない。


 自分の間違いを正そうとしてくれる友を、私は愛さずにいられない。



 「アイ…私の友達になってくれてありがとう。

 …本当に…きっとアイに言われなかったら、私自分から逃げ続けていたわ。」


 「すっごい逃げてたよ!言ってることと思ってること違うんだもん!」


 ぷくっと頬を膨らませていてもそこには愛情しか感じられない。


 「私…ちゃんと今を受け止めるわ。だからこれからも仲良くしてね?」


 「当たり前だよ!親友だし!仲間だし!命を預けあうんだからね?絶対切れないんだから!!」


 2人の心の中に、もやもやとしていた小説の中の未来の暗示の恐れも今は感じない。


 前向きに励ましあう彼女たちは、今を必死に生きて楽しむ!ただそれだけなのだ。




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