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転生悪役令嬢の生存作戦  作者: 芹屋碧
1章 転生悪役令嬢は思い出す【2学年】
11/43

11…女子会









 ――コンコン・・


 「お嬢様、王太子殿下とリュシード様がいらっしゃいました。」



 「ありがとう。こちらにお通しして頂戴。」


 侍女に返事をすると持っていたティーカップをソーサーへ戻してテーブルに置く。



 「やっと4人揃うね!」


 元気に話すアイだが、あの報告会の後から少しだけ元気がないように感じる。



 「アイ…なんだか元気がなさそうに感じるのは私の気のせい?

 良ければ今夜寮の部屋で話さない?」


 いつも元気なアイは暗い表情を見せたことがない。

 この世界に来てからずっと頑張っていた彼女だからセシリアは応援してきたし、だからこそアイのほんの少しの違和感も見過ごしたくはなかった。


 最初前世を思い出したばかりの時は、【聖女=甘えん坊】というイメージが頭の中にはあった。


 だけど、実際のアイはリュシードのサポートもあり勉強も頑張っているし、先日の協力をお願いした日以降は以前よりさらに聖魔法の特訓に励んでいるようだった。


 学園でもいつも元気で明るいし、もしかしたら小説の中のアイは頑張り方がわからない環境だったが故に甘えることしかできなかったのかもしれない。


 ――何故かセシリアはそう感じたのだ。

 

 


 「ほんと?話したい!!

 セシリアは今日は寮に戻ってくるのね?それじゃ私も神殿に寄った後で必ず戻るわ!

 夜はなそ!!楽しみ~♪」


 満面の笑みで喜んでくれるアイがとっても眩しいし子犬のように可愛らしかった。

 その笑顔でセシリアは疲れが消え去るように癒されていく。


 笑顔だけでセシリアを元気にしてしまうのだから、アイは女神様に気に入って貰えても当然だったのだろうと感じるのだ。




 「――やぁ、2人共もう話を始めてしまっていたのかな?」


 微笑みながら部屋に入ってきたハリアスとリュシードは、空いているソファに腰かける。


 当たり前のようにハリアスはセシリアの横へ腰かけ、リュシードも当たり前のようにハリアスの後ろに立とうとしたが、リュシードはハリアスに止められてアイの横に腰かけさせられた。



 「すでに何度かここで話していたけれど、今後も選抜隊として私たち4人はここで毎週会議をしながら対策を立てていく。だからリュシードもちゃんと座って会議に参加するように!わかったかい?」


 

 「――仰せのままに」

 表情を変えず淡々とリュシードは返事をする。



 「・・固いなぁ・・まあ意思疎通できれば良いけどね。

 さて、今日の報告会だったけど、やはり教会側はセシリアを気に入らないようだね!」

 早速本題を切り出すハリアスにセシリアは思わず居住まいを正してしまう。


 「まさかあそこまでとは私も知らなかったよ・・」


 ハリアスの言葉にアイは神妙な面持ちで言葉を吐き出す。



 「いーや?あのくらいは想定内だったよ。

 聖女をこの王国に留める一番良い方法は婚姻(・・)だからね。

 私の婚約者であるセシリアを教会側が邪険に思っていたとしても不思議じゃないさ。

 セシリアがアイに嫉妬して何かしないか不安だとでも思っているんだろうさ。」



 「――私は貴方と結婚なんて微塵も考えてませんけど?」



 「おや?奇遇だね。同意見だよ。」

 

 ハリアスとアイの間には何故か火花が散って見えるのは気のせいだろうか?

 向かいに座るリュシードも微妙な表情をしているので同じことを考えているのではないだろうか。



 「――まあ結婚はなんとでもなるからとりあえず置いておこう!

 これからはいかに効率よく自分たちの能力をあげて、魔神に対抗するかが大切だ。

 来週から学園も再開するし、うまく学園の設備も利用しながら特訓できるよう学長にも相談しておくよ。とりあえず毎週会議はいつするか連絡するから今後もよろしく頼む!」


 ハリアスの言葉に皆頷き同意する。



 「あと、各代表たちなんだけど、第1と第2騎士団への連絡は私かリュシードができると思う。神殿はアイに頼みたい。調査団はセシリアが適任だよね?

 皆トップの人間たちだったから、ちょっと個性的な面々だったかもしれないけど、真剣に王国のことを考えてくれている者たちばかりだから安心してくれ。


また次の会議の日程は決まり次第連絡するからよろしくね!」

 

 必要な内容を簡潔にハリアスは話すと、この後の予定が立て込んでいるのか話を速やかに終えてハリアスはリュシードを連れて部屋を退出していくのだった。


 



 ***





  ―――コンコン


 「――セシリアいる?」


 寮の自室で読んでいた封印魔法についての本をさっとデスクに置くと、セシリアは立ち上がりドアを開けに向かう。



 「――アイ、遅かったね!お疲れ様!入って入って!」


 すでに20時を過ぎてやってきたアイの顔は少し疲れを感じているようだった。色々大神官に言われたのだろうかと察してしまう。



 「お邪魔しまーす!

 なんだか部屋に入るの初めてですっごく嬉しー♡」


 

 「確かに初めてだね!学園でほぼ毎日一緒にいるし夜は会わないよね。」


 すでに二人は親友のように話ができる関係であったが、お互いプライベートにまで干渉しあうことはなかったので本当に新鮮な気持ちになる。


 10代の少女なら、怖いものなしに周りとの距離感を考えず近づいて、パーソナルスペースに踏み込んできては喧嘩して…また仲直りして…そんな学生生活を前世では送っていた記憶がある。


 アイも距離感はいつも近いから、プライベートにもズカズカ入り込まれるんじゃないかと心配になったこともあったけど、そんなことはただの杞憂で終わった。


 いつも仲良く接してくれるけれど、ちゃんと接触頻度など弁えてくれているのをセシリアは感じていた。


 もしかしたら知らない世界で友人を失いたくなくて、踏み込めないのかもしれない。そう思うとより彼女に寄り添いたいと思ってしまう自分がいるのだった。




 「セシリアの部屋は本当に女の子の部屋っていうよりシンプル!!っていう感じだね!!」


 ニコニコ屈託なく笑うアイはすごく楽しそう。



 「私は色々物を置くよりは必要なものだけあったらよいと思っているからね。本も買うより借りてきちゃうし。」


 部屋の中はベッドにデスク。デスク用の椅子と鏡台。食器棚に衣装棚、2人掛けソファとテーブルが置かれている。装飾品はほとんど置いておらず、デスクの上の本棚に必要最低限度の本が収納されている程度。

 広さは30㎡ほどのこじんまりとした部屋ではあるが、他の平民の生徒は12㎡ほどだと聞いたことがあるので寮の中では広いようだ。


 貴族の中には執事や侍女を連れてくることもあるようだが、セシリアからしたら勉強時間などの時間に誰か傍にいる生活は嫌で堪らなかった。


 そのためパーティがある時だけ、邸(タウンハウス)から手伝いに来てくれることになっている。


 セシリアはアイをソファに腰かけるよう勧めると、クッキーの入ったトレイと紅茶を用意する。



 「食事はもう食べたの?」



 「――うん。大神官様と一緒に夕食は食べてから帰ってきたよ!」



 「そうなんだ!それじゃ帰ってきたの本当についさっきだったんだ・・」



 「あー・・うん。そうだね。」


 夕食までフリード大神官と食べなきゃならないなんて大変だなとセシリアは勝手に心の中で同情してしまう。


 

 「――紅茶をどうぞ♪クッキーも良ければデザートに召し上がれ♪」



 「わぁ♡美味しそう!甘いものは別腹だよね!!」



 「わかるわかる♪アイはどんな甘いお菓子が好きなの?」



 「私?私はクレープが好き♪学校帰りによく原宿で買って友だちと食べ――・・・ってそんなこと言ってもわかんないよね。あはは」


 アイは苦笑いしながら盛り上がる気持ちを紛らわすようにクッキーを頬張る。



 

 「私も原宿のクレープよく食べたよ?大学生の時に!マリ〇ンクレープとかよく並んだな~」



 「―――え?」


 笑っていたアイの顔から表情が消え唖然としている。


 「ふふ。・・・私前世日本人なのよ♪」



 「――うそ・・ほんと・・に?」

 

 一言一言が重く、震えて声が途切れ途切れになるアイを、セシリアは微笑みながら頷く。

 

 

 「ほんとほんと♪よく山の〇線も利用してたよ♪」


 大きい口を開けて歯が見えるくらいに笑うセシリアは、普段の大人びた姿が嘘のように幼い少女のように見えた。



 「――っセシリアっ!!!わたし・・わたしっ・・・」


 隣に腰かけるセシリアに飛びつくとわんわんと赤子のようにアイは泣き崩れ言葉にならない言葉を吐き出そうと藻掻くように泣いていた。



 「――大丈夫。1人でこんな日本と全く違う世界でよく頑張ってるんだから。泣きたいときはいっぱい泣いちゃお♡」


 優しく抱きしめ返し、アイをあやすようにセシリアは言葉で寄り添うのだった。






 「―――私ね・・・最初に話した時から・・・不思議と違和感感じなかったの・・・

 セシリアが優しいからなのかなって・・・思ったけど・・・それだけじゃなかったんだね。」


 涙を流しきるかのように泣いていたアイは、落ち着いてくると少しずつ自分を納得させるように話し始めた。



 「セシリアだけが私を否定しなかったから・・殿下もリュシードも否定はしなかったけど・・あの人たち苦笑いするじゃない?」



 「ふふ。・・・そうね」

 想像ができたセシリアは思わずクスっと笑ってしまう。



 「・・でもセシリアだけは、いつも私と同じ目線で一緒にいてくれて・・独りぼっちじゃないって思えたの。


 聖女なんて言われたってさ?私まだ高校生になったばっかの何にも知らないガキなんだよ?


 すごいことなんかできるわけない・・でも皆期待するように見るから・・笑ってなきゃって・・」


 拗ねるように告げるアイは話している途中から黙り込んでしまう。



 「・・私・・実はアイのこと知ってたの。」

 突然のカミングアウトにアイは俯いていた顔をすごい勢いで持ち上げて驚愕する。



 「――は?どういうこと???」



 「ふふ・・・なんでかはわからないんだけどね?私が前世で生きていた時に読んでいた小説がね?この世界だったんだ。


 信じられないかもしれないけど、その小説には【三島愛】っていう高校1年生が召喚されてこの世界にやってきて、魔神と戦う物語だったんだよ。」



 「・・・私が・・出てくる物語??」



 「――そうだよ。不思議だよね。あの時は沢山小説を読んでいたから、何も疑問にも思わなかったけど、この世界でアイが神殿に現れた時に、私も前世の記憶を取り戻して倒れちゃったんだ。」



 「――だから3日も目覚めなかったの?」



 「・・・多分?ね・・でも、私が読んだ小説のアイはね、甘えん坊で泣き虫で、ハリアス様におんぶにだっこでいっつも誰かに頼っていたの。

 だからきっと今世もそうなのかな?ってちょっと心配はしていたんだけどさ、全然違ったよね。

 出会ったときから一生懸命だったし、いつも明るくて頑張って、聖魔法だって小説だと使えるようになるのは2年後なんだよ。ふふ。

 それなのにもうちゃんと聖魔法使えるじゃない?

 私すごく嬉しかったんだよ。そんな頑張り屋さんのアイと友達になれて♪」



 「―――っ私も!!!私・・多分甘ったれなのその通りなの!!

 セシリアがいなかったら・・多分きっと頑張れなかったから・・きっと笑って胡麻化して・・逃げてたと思う。

 ・・だって日本にいた時の私はまさにそんな感じだったから・・」



 「そうなの?」

 セシリアはアイの言葉が想定外で思わず目を見開いてしまう。



 「――うん・・私・・3姉妹の末っ子でね?いっつもお姉ちゃんたちがなんでもできたから頑張るの嫌になっちゃって、高校も適当に行けるとこ選んで、適当に友達作って・・笑って・・みんなと楽しいことだけして過ごしてたの。

 お姉ちゃんたちやお母さんにはすっごい怒られたけど、それもまた嫌だったんだよね・・なんでわたしばっかり!・・って・・

 タメ同士で遊びまわってGW(ゴールデンウィーク)明けにこれからどうしよっかなーって思って原宿うろうろしてたら・・いつの間にかこの世界にいたの。

 知っている人誰もいなくて、なんでここにきちゃったのかわかる人もいない・・・

 あんなに嫌ってたお姉ちゃんたちやお母さんの顔がすぐに浮かんだんだ・・あぁ・・なんで真面目に話聞かなかったんだろうって。

 きっと悪いことばっかりしてたから、知らない世界に飛ばされちゃったのかなって・・・」



 「私も前世を思い出した時に、自分の行いが悪かったからこの世界に転生しちゃったのかなって思ったわ!・・ふふ・・同じね!」



 「・・・同じ・・・セシリアも・・・おなじ?・・そんなにしっかりしてて綺麗で何でもできちゃうのに?」


 

 「同じよ。私も前世はずっと仕事ばかりしてまともな恋愛もしないで28歳まで仕事か小説か?のどっちかしかない生活しかしていなかったから、きっとちゃんと恋愛して結婚しないでアラサーまで生きてたから駄目だったんだ・・って後悔したわ。」



 「・・・私たち・・・詰んでるわけじゃないってこと?」


 

 「私はそう思っているわ!

 だってやったらやった分の成果がこの世界では手に入るもの!!

 アイだって頑張った分聖魔法使えるようになってるでしょう?

 周りとの関係だってうまくやっていると思うわ!」



 「・・・ほんと?」

 上目遣いで見つめてくるウルウルの瞳のアイがかわいい!・・・可愛くてたまらない!

 まるでポメラニアンのよう!




 「ほんと♡・・きっと私たちは友達になる運命だったんだわ。きっとそう!そして努力して幸せになる権利があるのよ!」




 「・・・幸せになる・・権利・・」



 「えぇ、私は諦めないし、アイも一緒に幸せになれるわ!きっとよ!」

 

 自信満々で返事を返すと、何故かアイの顔はみるみる赤く染まっていく。




 「・・・私・・・リュシードが好き・・・」



 「え?」


 突然のアイの告白にセシリアは一瞬理解できず、目を見開いて間の抜けた返事をしてしまったのだった。




 


 





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