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山ちゃん

ずんだもんによる朗読のためのオリジナルホラーです。

ふざけすぎたかもしれません。

嫁の実家からの帰り道での出来事なんですよ。


その日は、久しぶりに嫁の顔を見て義父母も大喜びでした。それで、向こうで夕飯をご馳走になったんで、帰りが遅くなったんですよ。

広々とした、気持のいい道でね。田舎だから、ちょっと夜が更けると、もう他の車もいなくて。

春先で陽気も良かったし。窓も開けて、夜のドライブですよ。

そうしたら、後ろからタクシーが、すごい勢いで走ってきたんです。あいつら夜は飛ばすから。


僕は霊感がするどい方でね。いわゆる「見える人」なんです。

で、後ろから、すごい嫌な雰囲気がするんですよ。

バックミラーの中で、どんどんタクシーが大きくなる。中がわかるぐらいまで近づいて来る。


助手席に骸骨が座ってるんですよ。


「やばい」と思いました。とにかく、圧が半端ないんですよ。人外の存在感っていうんですか?

まぁ、人外じゃなくてもやばいんですけど。人骨?骨格模型?そんなもん助手席に座らせてるタクシーなんて碌なもんじゃないですよ。

それで、助手席の嫁に

「後ろから、ヤバイのが来てる。絶対見るんじゃないぞ」

って言ったんです。

嫁は、うなずいてました。実は、彼女も見える系の人なんで、ピンときたんでしょう。二人して怖い目に何度もあってきてるし。

交差点で信号が赤に変わったので、とまる。後ろからタクシー。車線を変えて、左に並んで止まった。

僕は、真正面を凝視ですよ。絶対左だけは見ないぞって。

でも、嫁、好奇心が勝っちゃたんだと思う。左を見ちゃったんだと思う。嫁が思わずって感じで、叫んだんですよ。

「えっ、山ちゃん?なんで?」

って。

「えらいこっちゃ。運転手、嫁の知り合いか?」

と思ったんで、僕も、つられてタクシー見ちゃったんですよ。

もちろん、骸骨も見えました。でも、それよりも運転手です。山ちゃんなんですよ。


山崎 邦正。


いや。そんなとこに居るわけないし、運転手の帽子もかぶってた。よく考えれば、他人の空似なんですよ。

でも、その時は本物だと思ったし、今も思ってます。嫁が叫ぶぐらいですし、僕も、パッと見た瞬間に思いましたもん。

「山崎 邦正や」

って。

「落語はどうした?」

って。

山ちゃん、頑なに前を見てる。微動だにしない。嫁の声も聞こえたはずなんだけど。

その場の全員が、山ちゃんをガン見です。そうなんですよ、骸骨も見てるんですよ。

僕は、それを見て。

「あっ、やっぱり人外だ。」

って思ったんですけどね。人骨や模型の首が動くはずないんで。

それで、骸骨が山ちゃん見てるってことは、僕達のことも見えてるはずなんです。でも、僕達のことは眼中にないんです。山ちゃんをガン見ですよ。

骸骨、顎の骨が外れたんじゃないかと思うぐらい口を開いて、ガン見。

声が聞こえた気がしたもの。

「山崎邦正やったんか!」

って。

「落語はどうした?」

って。

いや、骸骨、しゃべれるかどうか知らないですけど。


何十秒か、何分か。濃い時間でした。とにかく、みんな目が離せないんですよ。

そうしたら、急にタクシーが発進したんです。それで、信号が変わったのに気が付いて、こっちも車を出したんですよ。

タクシー。どんどん離れていくんだけど、かろうじて中が見えたんですよ。


骸骨、よっぽど驚いたんだろうね。顎の骨、まだ下がってましたもん。


ずんだもんによる朗読。

https://www.youtube.com/watch?v=6rHoBxUmtRI


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