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響く音

作者: 木下ひなた

誰にでも起こり得る日常ですが、実際に起こったときあなたならどんな反応するのでしょうか?

この主人公はどういう行動をとったか、ぜひ読んで確認してみてください。

ピッ…… ピッ……

無機質な機械音が部屋に響き渡る。母親が倒れたと聞いて急いで駆け付けたときには、すでに病室のベッドの上で横になり、左腕からは点滴の管が伸びていた。昔から、働き者の母親だったと思う。たまには休めばいいのにと言っても、心配してくれてありがとう、優しいね。と柔らかく微笑むだけで休もうとする気配は微塵も無かった。倒れてしまっては元も子もないではないかと、少しの怒りと苦労をさせてしまっているという悲しみ、無事でいてくれた喜びを抱えながら、母親が起きるのを待つ。


ピッ…… ピッ……

無機質な機械音が誰もしゃべることのない部屋に響き渡る。一向に目覚める気配の無い母親の隣で時が過ぎるのを待つ。時刻は夕暮れに迫るころ、茜色に差し込む光が母親を照らすのを見ると、何故だか切なさを感じてしまう。このまま起きないのではないか?日が沈むのと一緒に母親も遠くへ行ってしまうのではないか?そんなネガティブな思いを抱える自分と、今まで何も親孝行していなかった過去の自分に幻滅する。不良というわけではないし気苦労をかけたことは無いと信じているが、何かをしてあげたことは一度もないのでは?と思い始めるとネガティブな考えが止まらない。早く安心させてほしいと願いながら、母親が起きるのを待つ。


ピッ…… ピッ……

無機質な機械音が、しんと静まり返る夜更けの部屋に響き渡る。まだ目覚めることのない母親を置いて帰るのは心苦しかったので、今日は病室に泊まることにした。病室に泊まると医者に報告したとき、時間はかかるかも知れないが必ず目覚めますよ、と告げられた。幾分か心が落ち着いたのは、その言葉のおかげかもしれない。それにしても、こうして一緒の部屋で過ごすのはいつぶりだろうか。思春期特有の恥ずかしさで、母親と寝るのをやめてからになるので、もう十年以上は経つかも知れない。子供のころ大きく感じた体も、ベッドで横になる姿ではとても小柄に感じる。握りしめた手のひらからはぬくもりと安心感が伝わり、心地の良い眠気に誘われる。久しぶりに母親のそばで、手を握りしめながら眠りにつく。夢の中で、母親が起きるのを待つことにした。


おはよう。

柔らかい声が頭の中に響き渡ってくる。どうやら、母親が先に目覚め、私が起きるのを待っていてくれたらしい。母親が無事だったという安心感からか、昨日の疲れがドッと押し寄せてきた。無事で良かったという思いと、心配させないでという小言を母親にぶつけると、以前のように柔らかい微笑みを浮かべながら、心配かけてごめんねと言われる。この笑顔には勝てないなと思いながら、二人の部屋には楽しそうな笑い声が響きあった。

読んでくださりありがとうございました。

主人公は母親が倒れたことをきっかけに、母親の大切さを再認識したのではないでしょうか。

母親だけではなく、父親や兄妹・友達など、身近な人の大切さが主人公を通して少しでも伝われば幸いです。

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