sing-gung
もしも
あのときに戻れたのならば
君は一体 どう応えたのだろう
色んな気持ちに蓋をして
優しい笑顔を 返したのだろうか
浮かんでは消えていく君の笑顔は
いつだって どこか非現実的で
降り注ぐ激情の嵐にも
君だけは ただ凪いで
柔らかい
ひたすらに柔らかい君の纏う空気すら
今は とても冷たくて
初めから 分かっていたんだ
ふわふわとした君の気持ちは
いつも ここに居ないこと
嘘憑きの君と 嘘吐きの僕
そう 0か100か
どちらかしか選べないこと
ちゃんと分かっていたのに
ああ 寂しいだなんて
きっと思うことすら 僕には許されなくて
偽りから始まった物語に
造られた結末は 酷くお似合いだから
始まりと同時に
動き出したカウントダウンを
ただ 見ないふりをしていただけなのだから
このハリボテのストーリーに
独り目を閉じたまま
こぼれ落ちたインクで打つ
滲んで曖昧なピリオドを
もしも
あのときに戻れたのならば
君は一体 何になりたかったの
自分というフィルター越しに見る景色に
何を望んでいたというの
私の前に立つ虚像にだけ
いつも愛おしげに視線を合わせて
体温のない偶像にさえ
温もりを見出だして
柔らかい
ひたすらに柔らかい君の謳う言葉すら
いつも ただ通り抜けて
初めから 分かっていたんだ
きらきらとした君の気持ちは
いつも 私宛でないことを
嘘吐きの君と 嘘憑きの私
そう 空っぽか 空しい熱か
どちらかしか あり得ないこと
ちゃんと分かっていたのに
ありのままを見てだなんて
きっと思うことすらも許されはしなくて
主人公の居ない物語に
台本を持たされただけの黒子が 醜く踊る
幕を下ろす
そのときを ただ希う無人劇に
素敵な起承転結など 必要ないのだから
誰のためなのかも分からないまま
履かされた赤い靴で踏むステップ
その軌跡に流れ落ちる赤に
独り目を見開いた
逢いたい
相対
嗚呼 痛い
どうか
どうか
もう一度
もう二度と
はなさないで
もう 苦しいだなんて
口に出すことは許されなくて
するり 滑り落ちていく言葉は
ずっと 交わることはなくて
零れ落ちていく雫の
互いの眼に写る その色すらも
きっと お揃いになることはないのだから
嘘に疲れて ひび割れた想いも
嘘に憑かれて 枯れ果てた心も
連ねて 書き連ねて
綴じて 閉じて
いつか目を開く その時まで
いつか心を開く その時まで
いつか君が拓く その時まで
目を閉じると、大抵、ろくでもない話が、浮かんでは消えるものでして。