パンとパンの比べ方
パンを買いに来た。パンが欲しかった。
それ以外に理由はない。
「いらっしゃいませー」
店員の声が響く。
入り口から曲がって左に好きなパンがある。
包装されたパンを手に取った。
記憶のパンが頭に浮かんでくる。
自分で作ったパンの焦げた匂い。苦々しい味。
まだ家にあるが、完食する勇気はない。
自分のパンの何処が間違っていたのか。
パンの見た目は一緒にしたんだ。
店員に聞いてみるのが手っ取り早いか。
通りかかった店員に話を聞いてみる。
「これってどうやって焦がしてるんですか?」
「え?」
「焦がしてみたんですけど苦かったんですよ」
「これには、隠し味を練り込んでるんです」
そうだったのか。
「教えてくれてありがとうございます」
「どういたしまして」
黒くする材料か。興味深い。
レジに行って、パンを買った。
パンに黒い物を練り込めばいいのか。
イカ墨を入れてみよう。
パンを食べながらそう思った。