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ばくやく令嬢しか勝たん  作者: 御堂 騎士
第5章 食事は貧相で不自由だけど、ちょっとうれしい森での共同生活
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93.狭まっていく可能性

 警備隊が持っていた魔法探知機を試してみる。


 方位磁石の針のようなものが、魔法が使用された方向を指す。

 魔法を使わなければ、体内で高めた魔力などには反応しないようだ。




 隠密魔法を使うララから少しずつ離れてみると、100メートルほど離れると方向が怪しくなり始めて、150メートル離れると検知しないことが分かった。


 ヴェンデリンに火の玉の魔法を、手のひらの上でキープしてもらった。

 その横でララに隠密魔法を使ってもらって、二人の間に距離を取ってもらうと、針が揺れ動いた。

 この探知機の感度が、あまり良くないことが分かった。


 元々、複数の魔法を検知することは、考慮されていないのだろう。




「現物が手に入ったのは、ラッキーでしたね。

 これで、隠れ続けることが出来る可能性が、グッと上がりました」

 キャサリンは満足そうだ。


「こうやって、実験して確かめておけば安心できるね。

 さすがお姉ちゃんは、すごいや」


 感心するヴェンデリンの横で、エドワードが自分の事のように胸を張っている。

「そうだろう、俺の婚約者だからな!」


(なんだか、美少年二人に褒められて誇らしいですわ。

 こんな生活も良いかもとか、思ってしまいそう)


 逃亡生活に少し慣れかけたキャサリンは、思い直して次の作業に入る。




 ソフィアの持っていた目覚まし時計の声を、キキの猿の鳴き声に差し替えた。


「ああ、せっかくのお嬢様の声が……」


 お屋敷に帰ったら、また新しいのをあげるからということで、ソフィアをなだめたキャサリンは、隠密魔法を使うララから離れた位置で、目覚まし時計を作動させる。


「キキッ、キキッ、ウキキ」


 声がすると、魔法探知機は方向が乱される。

「やはり、作動している魔法自体に反応するみたいですね。

 魔法具を作動させても、そちらを検知するから、特性を知っていればそんなに怖くありませんわ」


「私が持って来た時計が、みんなの役に立つという事で納得しておくことにします」

 ソフィアが、元気なく答える。




 そしてもう一つ、大きな発見があった。

 この辺りの捜索部隊は、もれなく魔法探知機を持って捜索していた。


 敵が魔法探知機を動作させると、検知できるのだ。

 こちらの魔法探知機も、検知されていることは予想できる。


 当然、魔法を検知して捜索部隊が近付いてくると分かるので、やり過ごすことが出来た。


 場合によっては、目覚まし時計を作動させてキキに運ばせて、あらぬ方向に誘導することも出来た。


 敵はキキを見つけても、森に住んでいるお猿さんと思っているので、気にも留めない。



 3日間ほどは、それで少し落ち着いて隠れることが出来た。


 街への街道の捜索が、順調に? 進んだのだろうか、森の中への捜索隊の頻度が増えてくる。


 夜通し、捜索隊がやって来るので、おちおち寝ることも出来なくなってきた。

 このままでは、何日も持たない。




「しかし、どの捜索隊もこの探知機を持っているんだから、すごいよな。

 巨人たちにこんなものは作れないから、ノルド公国にも君のお父さんみたいに発明家がいるんだろうな」


 エドワードが感心しているが、キャサリンは何かに気付いたようだ。

「これだけの部隊に行き渡っているという事は、よほど沢山作っていますわね。

 最近開発されたにしては、行き渡り過ぎていますし。

 どうして、国境近くの警備隊は探知機を持っていなかったのかしら?」


 それを確かめたいキャサリンの提案に従って、一同は国境の方に移動していった。




 道々、キャサリンが思いついたように言い出した。

「でも、よく考えたら、街に逃げ込んでも、ここにいるより大変かもしれませんでしたわ」


「街に行ったら、店もあるし、食事も普通に取ることが出来るんじゃないか?」

 エドワードが当然のことように答える。


「私たちは今、お金をあまり持っていませんわ。

 ソフィアとヴェンの手持ち分くらいでしょう。

 それに、知り合いも一人もいないんじゃありませんこと?」


「確かに、あの街に知り合いは、いないや。

 でも、僕を警備隊に通報した商人たちは、僕の顔とかを知っているよ」


 ヴェンデリンの言葉を聞いて、エドワードが顔をしかめる。

「味方になってくれる知り合いじゃ無くて、敵に回る知り合いしかいないってのか。

 指名手配の貼り紙も、されているかも知れないしな。

 こりゃ、確かにヤバイな」


「それに、街中でキャンプは張れませんね。

 恐らく、宿屋に泊まると通報される危険性が高いので、かくまってくれる知り合いがいなければ、立ち行かない所だったかもしれません」

 ソフィアも話に入ってくる。


「まあ、街に向かわなくて正解という事ね。

 あたいも、さっきみたいに追い回されるから、街には近付けないわ。

 早く気付いてくれて良かったみたい」

 ララは、一人喜んでいる。




 国境に近付いていくと、いきなり警備隊に出くわしそうになった。

 先頭に立っていたキャサリンが持つ探知機に反応が無かったので、かなり近くでララが気配に気づいたのだ。


 彼らは、魔法探知機を持っていない。


 キャサリンは、ララに言って隠密魔法を使用してもらった。


 目と鼻の先まで来ているのに、警備隊はキャサリンたちに気付かずに素通りして行った。


「これで間違いないですわ。

 国境近くの警備隊は、探知機を持っていません」


「どういうことだ?」

 確信ありげなキャサリンに、エドワードが質問した。


「恐らく、もう少し国境に近付けば分かると思いますわ」

 キャサリンは、妙に自信満々だ。




 魔法探知機を持って先頭を歩いていたキャサリンが声を上げる。

「やはり、思っていた通りでしたわ」


「えっ? 何か分かったの?」

 不思議そうな顔のヴェンデリンに、キャサリンが探知機を見せる。


 針が国境の方を向いて、ピクリとも動かない。


 反対側で、ララやヴェンデリンが魔法を使ってみても同じだ。


「国境の柵の周りに、強力な結界が張ってあるとのことでした。

 この結界は、魔力も範囲も大きいから、遠くからでも魔法探知機の針を吸い寄せてしまうんです。

 これなら、安心して隠密魔法を使って休むことが出来ますわ」


 ここ数日、安心して寝ることが出来なかった一行は、すぐに近くの川で捕まえた魚を料理して食べると、隠密魔法を使って、交替々々に睡眠をとった。




 しっかり休養して、みんな万全では無いが、そこそこ元気にはなった。

 国境に近付いたおかげで、ララも国境の向こうの妖精フェアリーとテレパシーで連絡を取り合えるようになった。


「これで、随分状況が改善したな」


 ホッとした様子のエドワードを、ララがたしなめる。

「いいえ、国境の向こうでは、状況悪化しまくりみたいよ」

次回更新は、12月7日(月)15時の予定です。

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