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ばくやく令嬢しか勝たん  作者: 御堂 騎士
第5章 食事は貧相で不自由だけど、ちょっとうれしい森での共同生活
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89.上を向いて歩こう

「ソフィア。

 あなたがいてくれたら、百人力よ。

 もう巨人族も怖くないわ」


「お嬢様。巨人族の戦闘能力は、けた違いです。

 油断なされないように、お願いします」


 謙遜けんそんするソフィアに、エドワードが敬礼する。

「あの強力な『黄色い熊』のメンバーを前にして、子供ばかりの僕たちは、本当に熊の前の野ウサギみたいなものだった。

 その熊を赤子の手をひねるように倒してしまうんだから、まさにキャサリンの騎士ナイトだね。

 その役割は、俺がしたかったんだが」


「勿体ないお言葉です。

 エドワード様は、すぐお嬢様に相応しい騎士ナイトになられますよ。

 私は、お嬢さまにとって空気のような存在でありたいと願っています」


 謙遜けんそんするソフィアに、キャサリンがからかうように言う。

「空気は、生きていくために必要なものなのよ。

 私は、ソフィアなしでは生きていけなくなってしまいますのね」


「い、いや、そんな恐れ多いことを考えてはおりません」


 焦るソフィアを見て、みんなで笑っていると、また木々をかき分けてやって来るものがいる。




 すごい速さで近付いて来て、みなの前に姿を現す。

 『黄色い熊』の隊長、バブンスキー少佐だ。


「爆発音がするから様子を見に来てみれば、うちの最強パワーを誇るシジクレイが無力化されて拘束されている。

 これは、どうやら油断ならない敵が現れてしまったようだね」



 ソフィアが、子供たちを抑えて少佐の正面に立つ。

「貴様らがお嬢様をさらって、こんな所まで連れてきた張本人か?

 ただでは済まさんぞ!」


 お互いに剣を抜いて、にらみ合う。


「ソフィアさん。そいつは『黄色い熊』の隊長だ。

 素早い動きとトリッキーな剣使いに気を付けて」

 エドワードが注意を促す。


 キンキーン


 バブンスキーは、いきなり目にも留まらない速さで剣を打ち出すが、ソフィアはその太刀筋を全て剣で受け流す。


「うむ、ソフィア・リオナ・セレステ。

 聞きしに勝る剣の腕だな。

 お前が護衛していたら、二人を誘拐する時に屋敷の使用人を殺さないことは、無理だったかも知れんな」


「何を言う。私がいれば、貴様らは目的を果たせずに、軽く撃退されていただろう」

 ソフィアは、自信満々で受け答えする。


「言ってくれるわ!」

 バブンスキー少佐の連続攻撃を、ソフィアは次々と剣でいなしていく。

 エドワードもヴェンデリンも、その二人の踊るように優雅な剣のやり取りに、思わず見とれてしまっていた。


 まさに互角の勝負が、延々と続くかに思えた。


 しかし、間違いなく人間とハーフオークの種族の違いによる体力差が、存在していた。


 何合か打ち合った後、一瞬出来た隙にソフィアが強く打ち込む。

 少佐は、剣で受けたが受け切れない。


 パワーの違いを見せつけるかのように、少佐の体は吹っ飛んでいく。


 ドーン


 バブンスキー少佐は、背中を木の幹に打ち付けて息が詰まった。

 その瞬間、ソフィアの剣の切っ先が少佐の顔の前に止まる。


「なるほど、これ程完膚(かんぷ)無きまでに負けるとは、私の人生で初めての体験だ。

 今回は、私の負けを認めよう。

 しかし、もし今度戦闘ではなく、普通の男女として会った時には、覚悟しておいてほしい」


「戦いの最中に、貴様は何を言っているんだ?」


 いぶかしむソフィアに、少佐は微笑みかける。

「あなたのその究極に鍛え上げられた肉体、剣の技。

 そして、あるじのために敵の真っただ中に一人で飛び込んでくる勇気。

 全てが、私の心を奪ってしまった。

 あなたの筋肉に乾杯!」


 そう言うと、どこからか煙がただよってきて、少佐の姿は消えた。


 いつの間にか、シジクレイもいない。

 姿を隠した敵に、回収されたみたいだ。


「さすが、ノルド公国が誇る特殊部隊だな。

 幻術のような行動は、本当に一筋縄ではいかないな」

 そう言いながら、ソフィアは剣を収めた。


「でも、最強と言われる二人を、ソフィアさん一人で撃退した。

 これで、そうそう襲い掛かっては来ないでしょう」

 エドワードが安心したように、剣を収めた。


(もしかして、ファビオさんの恋のライバルも誕生してしまったのかしら?)

 キャサリンは、考え込んだ。




「ごめんなさい、キャサリンお姉ちゃん。

 僕のせいで危ない目に合わせてしまって。

 もっとちゃんと考えて行動していれば、敵に捕まったりしなかったはずだよね。

 僕は、お姉ちゃんが言っていたタオヤマのキムさんみたいに、なりたかったんだ」


「タオヤマ? キムさん?

 ああ、トーヤマね。

 その人も普段は、遊び人なんだから。

 無理しなくても良いのよ」

 キャサリンは、納得顔でヴェンデリンの頭を撫でる。


「グスッ、僕は本当にダメなやつだ」


 キャサリンは膝を曲げて、うつむくヴェンデリンの顔の高さに目線を合わせて言う。

「ヴェン、あなたはよくやったわ。

 もっと自信をもって。

 それで、うつむいていちゃダメ。

 下を向いていたら、空にかかった虹も見えないわよ」




「お、俺も実力差を見せつけられて、ショックだったかな?」

 エドワードもキャサリンに優しくして欲しくて、甘えてみようとする。


「あんたは、十分活躍してるじゃない。

 しっかりなさいよ」


 横からララに慰められて、エドワードは不機嫌だ。

「なんで、そんなに上から目線なんだよ?」


「みんなが無事なのは、あたいのお陰だからさ。

 あたいの隠密魔法無しじゃ、すぐ敵に見つかってしまうわよ。

 いくらソフィアがすごい戦士でも、軍隊に囲まれたら、どうしようもないからね」


 自信満々のララに、ソフィアがつぶやく。

「だが、『黄色い熊』の奴らには見つかっていた。

 結局奴らは健在だ。

 私も、ここにいるという確信を持ったら、みんなを発見できた。

 そんなに、油断はできないな」


「ええ、そうね。

 それで、帝国軍はいつになったら、あの国境を破って攻め込んでくれるの?」


「それなんだが、あのバベルの塔が邪魔でな」


 困り顔のソフィアに、キャサリンが聞く。

「バベルの塔?

 あの巨人の塔が、何か邪魔ですの?」


 ソフィアが、真面目な顔になる。

「はい、あの塔の上からだと、国境線が丸見えなんです。

 そういう風に建てたんでしょうけど。

 巨人の王は、あの塔の上から巨人の遊撃隊を自在に指揮できるうえに、モノを瞬間移動テレポートできる奴がいるみたいで」


瞬間移動テレポート

 そんなに厄介な能力なのですか?」


 納得いかないという顔のキャサリンに、ソフィアが付け足す。

「こちらの軍が国境に近付くと、石つぶてを頭上に転移させてきます。

 石と言っても、そこそこ大きい。

 頭に当たった兵士は、兜をかぶっていても気絶する。

 さらに、ノルド公国に割り当てられていたダイナマイトを大量に、塔のてっぺんに貯蔵してあるみたいなんです」


次回更新は、11月30日(月)15時の予定です。

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