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ばくやく令嬢しか勝たん  作者: 御堂 騎士
第5章 食事は貧相で不自由だけど、ちょっとうれしい森での共同生活
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88.残念、そこはシジクレイだ!

 キャサリン、エドワード、ヴェンデリン、キキ、ララの4人と一匹なのか、5人なのか。

 とにかく走りに走って、ヴェンデリンがとらわれていた検問所からある程度離れることが出来た。




 一定の距離を離れた所で、キャサリンがもう走れないとばかりに止まる。

「ハアハア。もう、これ位逃げれば大丈夫でしょう」


 みな、キャサリンに言われて、そこで足を止めた。


「キャサリンお姉ちゃーん。会いたかったよー」

 落ち着いたところで、ヴェンデリンが抱きつく。


 キャサリンは、よしよしと頭を撫でるが、エドワードが不機嫌だ。

「ヴェン。いくら子供とは言え、兄の目の前でその婚約者に裸で抱きつくとは、うらやま……

 いや、良くないことだぞ」


「お兄ちゃん、ごめん。

 キャサリンお姉ちゃんもゴメン。

 あれっ? お姉ちゃんの胸がおか……」

 ドンッとエドワードのひじ打ちを食らって、ヴェンデリンは言葉が止まった。


 ヴェンデリンが、エドワードの方を見ると(その件には触れるんじゃない)と言わんばかりに首を横に振っていた。




「とにかく出発しよう」

 エドワードが着ていた上着を脱いで、ヴェンデリンの上半身を覆った。

 出発しようとすると、声がする。


「残念だったな。

 ここは、俺の管轄なんだ」


 そこには、2メートル近い大男 特殊部隊「黄色い熊」の一員シジクレイが立っていた。

 スキンヘッドの頭が、木漏れ日を受けて不気味に光る。


 5人が微妙に動くのに対して、素早く小刻みに位置取りを修正してくる。

 絶対に一人も逃がさないという、強い意志が感じられる。



「どうして、あなたがここに?

 『黄色い熊』は、帝国に潜んだのでは無かったのですか?」

 キャサリンは、動揺している。


「逆に、俺の方が聞きたいよ。

 子供二人が捕虜収容所から逃げ出したと聞いて、呼び戻されたんだ。

 子供だけで軍の施設から逃げられるなんて、はっきり言って有り得ない」


 この男とは、ノルド公国まで護送されてくる間に、ずっと一緒に旅していた。

 特殊部隊「黄色い熊」の中でも、格闘技ではナンバーワンの強さを誇り、隊長とこの男が部隊の戦力を大きく底上げしていると聞いた。


 そのシジクレイが、彼女たちの前に立ちふさがったのだ。


「でも、おかしいわよ。

 あんた相当強いみたいだけど、魔力は感じない。

 隠密魔法をかいくぐって、あたい達を見つけるなんて。

 どうやったの?

 何か、秘密があるんじゃ無いの?」

 ララが、納得できない様子だ。


「まあな。俺は鼻が利くんだ。

 一週間も一緒にいた嬢ちゃんと坊っちゃんだ。

 近くに居れば分かるのさ」


「匂いで分かったと言うのか?」

 エドワードが、みんなの前に出て行き、剣を抜く。


 お猿のキキは、みんなの陰に隠れた。


 シジクレイは、エドワードの剣に目もくれない。

 腰に剣が刺さっているが、抜こうとしない。




「何だか人数が増えているが、大人しくもう一度捕まってくれねえか?

 巨人の王は子供を喰いたがるが、俺達がいれば大丈夫だ」

 さとすように話しかけてくる。


「絶対に嫌だ!

 ぼ、僕は、本当に食べられそうになったぞ。

 龍人の肝を食いたいとか、聞いたんだから」

 ヴェンデリンが、強く拒絶する。


「嫌がる弟の前で、そして愛する婚約者の前で無様な姿は見せられないな」

 エドワードが剣を構える。


(い、今、愛する婚約者って言った?

 言ったわよね。キャーッ、私も絶対負けませんわ)

「屋敷の時と違って、今回はあなただけですし、こちらの人数も多いですわよ」


 キャサリンの言葉に、シジクレイは呆れたように答える。

「いやいや、子供が何人いたって関係ないだろう。

 俺は、あの屋敷で大人を何十人もふん縛ったんだぜ。

 あいつらは、帝国の精鋭なんだろう?」


「確かに『黄色い熊』の戦闘力がすごい事は、よく分かっている。

 俺達も見事にさらわれて、ここまで連れて来られたんだからな。

 でも、ここは絶対に引けない場面なんだ!」


 剣を構えるエドワードの横で、キャサリンがカバンから何かを取り出す。

 シジクレイは、その動きを注視している。

 不審な動きがあれば、エドワードの剣をいなして、彼女を取り押さえるつもりなのだろう。


 だが、少し油断もあるのだろう。

 まだ剣を抜かない。




 ズッドーン


 そこへ、予想外にヴェンデリンの無詠唱の爆裂魔法が炸裂する。


 煙が立ち込めた後、風が吹いて煙が晴れた所に、シジクレイは何事も無かったかのように立ちふさがっていた。

「驚いたぜ。

 小さな子供から、こんな強力な魔法を食らうとはな。

 俺じゃ無かったら、大けがをしていた所だ」


 ヴェンデリンが、すごく悔しそうだ。

「やっぱり、僕の力ではお姉ちゃんを助けることは、出来ないんだ」




 ザザザザザ


 素早い獣の足音のようなものが、聞こえる。


「いや、そうでも無いぞ。

 その音で、お嬢さまの居場所が分かったんだから」


 みな、声をする方を見る。


 木々をかき分けて、シジクレイよりさらに一回り大きな人影が現れる。

「お嬢様。私が来たから、もう大丈夫です」


「ソフィア!

 来てくれたのね」

 懐かしい顔を見て、キャサリンは涙ぐむ。


「ソフィア?

 帝国連邦でも指折りの強さだというソフィア・セレステか?

 相手にとって不足はない」


「ソフィア・リオナ・セレステだ。

 リオナは公爵閣下が下さった、大切な名前だ!」

 ソフィアが叫ぶ。


 シジクレイは、その場で跳躍してソフィアの後ろに回り込もうとする。

 常人には、ついていけない速さだ。

 この動きの速さで、別邸での誘拐に誰も太刀打ちできなかった。


 だが、ソフィアはそれを上回る速さでシジクレイのさらに後ろに回り込む。


 後ろからシジクレイを羽交い締めにすると、首の血管を圧迫して、シジクレイの意識を刈り取ってしまった。


「『黄色い熊』の主要メンバーを、一撃で落としてしまった」

 エドワードが驚愕する。


「お嬢様を助けるためなら、私は野生の熊でも絞め殺しますよ」

 ソフィアが笑いながら、気を失ったシジクレイを縛り上げる。


 強力なオークは、野生の熊と素手で戦っても勝つと聞いたことがある。

 ソフィアの言葉は、ハッタリではなさそうだ。

 邸にソフィアがいたなら、『黄色い熊』は本当に撃退されていたかも知れない。

次回更新は、11月28日(土)を予定しています。

読んでくださいね。

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