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ばくやく令嬢しか勝たん  作者: 御堂 騎士
第5章 食事は貧相で不自由だけど、ちょっとうれしい森での共同生活
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82.ばくやく令嬢 脱獄する

 キャサリンたちは、ノルド公国内の国境からすぐの場所にあるとりでの地下に幽閉された。


 彼女たちは、捕虜用のオリに入れられていた。

 窓もない地下に設けられた牢屋で、何日か経つだけで時間感覚が奪われていく。


 二人は、オリの見張りの兵士たちのうわさ話を聞いて、総攻撃が成功したこと、帝国軍がノルド公国内に攻め入ってくる準備を着々と進めていることを知った。


 確かにその状況なら、キャサリンたちのような人質は、帝国軍の侵攻を遅らせるために重要なカギになるはずだ。


 お昼ご飯に消費して良いような、どうでもいいエサのはずは無かった。




「多分、俺たちを人質としてこの砦にとらえていることで、帝国の侵攻を防ぐつもりなんだろうな。

 戦争を長引かせる原因に、なってしまったかも知れないな。

 あの巨人のエサになるのよりは、随分ましだろうけど」

 エドワードが、残念そうに言う。


「そうとは、限りませんわ」


 キャサリンの自信たっぷりの声を聞いて、彼は元気なく答える。

「キャサリン。

 それは、俺たちの価値はそれほど高くないから、ファルマイト公国以外の軍は躊躇ちゅうちょなく攻め込んでくるという事か?

 それとも、それでも巨人たちは俺達をエサにしようと迫ってくるという事かな?」


「いいえ。

 そういう事も言えるかもしれませんが、私は以前言いましたよね。

 隙をうかがうと」


「敵に隙があるという事だな?」


「ええ。

 私たちではどうにもならないレベルの『黄色い熊』は、どこかへ消えていきました。

 この天井の低さでは、巨人たちは地下に入って来れません。

 それに比べて、ここの見張りたちは、人質に詳細な戦況の情報を漏らしてしまうし、装備も貧弱に見えます。

 きっと、主力部隊は帝国領内に展開していたのでしょう」


 エドワードは、少し考えてから答えた。

「見張りのレベルは低いかも知れないけど、この頑丈なオリの中からでは、何かできるとは思えないんだが。

 それと、逃げるなら絶対に捕まらないようにしないと。

 捕まる相手によっては、そのまま巨人のエサにされてしまう」


「大丈夫です。

 今ならレベルが低いだけでは、ありません。

 ここの見張りは、すっかり安心しきって緩んでいます」


「つまり、その隙が出来た時という訳だな」


「そうです。

 そして、いつまでも巨人たちのエサにならない保証もありませんから、急がないと。

 今晩、このオリを破壊して逃げます。

 お昼のうちにしっかり寝て、体力を蓄えておきましょう」


「でも俺達は、寝室から拉致されたし、拘束されるときに一通り身体検査をされただろう。

 いくら君でも、道具なしではどうしようもないんじゃないか?」


「いいえ。私は、ばくやく令嬢ですわよ。

 ちゃんと、道具はありますわ」


「よく分からないが、何か手があるんだな。

 でも、時間はどうやって知るんだ?

 こんな地下の牢獄では、昼か夜かすら分からないぞ」


「一日2回食事を運んでくる時間は、朝と夜のはずです。

 軍隊ですから、時間には厳格でしょう。

 点呼の声が聞こえるのが朝と考えると、今はお昼ごろでしょうか。

 次のご飯のあとお腹がこなれてくる位のタイミングで脱獄します」


「分かった。

 じゃあ、俺は寝るよ。

 ここから逃げた後、絶対に君を守るから」


「頼みますよ。

 逃走中も戦闘中も、私はポンコツですから」


「ハハハ

 頼りにしてくれ。

 君をポンコツとは思わないけどね」


 *****


 夕食を食べてから、お腹がこなれてきた。

 沢山のオリがあるが、キャサリンたち以外のオリは空だ。

 子供二人なので、見張りの兵士たちも油断しきっている様子だ。


 キャッ


 キャサリンが、小さな声で悲鳴を上げる。

 30秒ほど待って、兵士が来ないことを確認する。


 キャーッ


 少しだけ悲鳴の声を大きくする。


 やはり兵士は来ない。

「この位の声では飛んでこない位、近くにはいないようですわね。

 来ても数名でしょう。

 エドワード様、少し向こうを向いていて下さい」




 キャサリンは、こっそり作業をしてから、しばらくしてもう一度小さな声で悲鳴を上げた。


「何だ、どうした?

 トイレなら、さっき済ませただろう」


 佩刀はいとうして、警備棒を持った兵士が二人やって来た。


「いえ、何かそこのカギがおかしいんです」


 キャサリンに言われて、オリの扉に付いている大きな南京錠を一人が確認する。

「な、なんだ?

 カギに、何か変なものが付いているぞ」


「変なものだと?」

 もう一人も、横から南京錠を確認しようとする。


 その時、その変なものが爆発した。


 パンッ


 南京錠は飛び散って、破片が二人の兵士の体に強くぶつかる。

「うわっ」

「ぐわっ」


 二人とも飛び退いたが、そこそこの怪我をしている。


 カギの無くなった扉をエドワードが押し開けて、落ちていた警備棒で兵士を殴って気絶させる。


 剣を奪うと、彼らのベルトで手を拘束して、オリの中に放り込んだ。

 隣のオリに付いていた開いた南京錠を、ガチャリと閉めた。


 トイレの時は一人ずつ外に出せるように、見張りの兵士はカギを持っていたので、それを奪い取った。


「さすがは、ばくやく令嬢。

 どこかに爆薬を隠し持っていたんだね」


「ええ、ここまで敵に見つからなくて、助かりましたわ」




 二人はそろそろと、オリのある一角を通り抜けて、またカギのかかった扉の前に来た。

 扉のこちら側には、見張りはいない。

 扉に付いた窓からのぞくと、向こう側には二人立っている。


 エドワードが、さっき奪ったカギ束の中のカギを順番に鍵穴に差し込んで回してみる。

 ガチャリ


 鍵の開く音がする。

 扉の向こうで、その音を聞いた兵士が聞いてくる。

「何だ?

 そこに誰かいるのか?」


 キャサリンが暗がりで、奪った剣のさやと柄をぶつけて音を出す。


 カン、キン、カン


「何だ?

 何の音だ?」

 二人の兵士が扉を開けてこちらに入ってくる。


 扉の陰に隠れていたエドワードが、扉のこちら側を調べに来た兵士の後ろに、ソーッと近付く。

 警備棒で一人ずつ素早く頭に一撃食らわして、気絶させる。


 今度の二人は、軍服を脱がせた。

 その服を着たが、エドワードはともかく、キャサリンはぶかぶかの上に小柄過ぎる。


「それでも、遠目にはごまかせるだろう。

 そですそを折って、とりあえず動けるようにしてくれ」


「近付いたら、一発でバレるんじゃないですか?」


「大丈夫だ。

 沢山の兵士には近付かないし、数人なら今みたいに倒していけばいい。

 俺は、これでも未成年としては帝国で最強の剣士だから」


「頼りにしてますわよ」


「おう、任せておけ!」


 キャサリンは、その格好いい台詞に、クラクラしてしまう。

(頼りがいのあるイケメン、無敵ですわね)


次回更新は、11月17日(火)15時の予定です。

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