表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ばくやく令嬢しか勝たん  作者: 御堂 騎士
第5章 食事は貧相で不自由だけど、ちょっとうれしい森での共同生活
77/543

77.ばくやく令嬢 生命の危機

 シュケル・バブンスキー少佐。

 ノルド公国軍特殊部隊「黄色い熊」の隊長だ。


 隊長以下12名は開戦後、いくつかの潜伏任務をこなしていた。

 その後、帝都のエスパーダ地区にあるノルド公国公邸の地下シェルターに隠れて、指令を待っていた。


 彼らの任務は、ファルマイト公国の公爵令嬢もしくは重臣を誘拐すること。

 人質は一人いればよいので、標的以外は殺しても構わなかった。

 例えば、ダービー子爵を確保すれば、キャサリンを殺しても問題なかった。


 その時、アン夫人と娘のアイリーンには絶対に傷をつけないことが徹底されていた。

 彼女の父の伯爵が寝返れば、ノルド公国の勝ち目が無くなるからだ。


 任務が発動されれば、いつでも行動できるように準備は整っていた。




 その日、御用聞きに来た商人に化けたスパイが、ノルド公国公邸の地下への秘密の入り口にアクセスした。


「今日、アン夫人と娘のアイリーンが帝都の外へ移動した。

 今晩の警備は手薄な上に、デリケートな障害が不在となる。

 ターゲットは、公爵令嬢と婚約者の皇子。

 どちらか最低一人は確保して、帝都を脱出、ノルド公国への国境を越えろ」


 指令が下された。




 スパイ3名を加えて15名となった特殊部隊は、夜の闇に乗じてノルド公国公邸からファルマイト公国別邸まで徒歩で移動した。


 確かに警備が手薄だ。

 門に2名、庭に3名警備しているが、彼らを排除すれば、建物の入り口まで障害が無い。


「傷つけることが許されないアン夫人はいない上に、警備は手薄。

 まさに、千載一隅のチャンスの日だったわけだ」

 バブンスキー少佐が、笑いをかみ殺してつぶやく。


 彼らは音もたてずに門扉に近付くと、2名の警備兵の意識を同時に刈り取った。


 庭の3名も楽々と処理すると、窓ガラスを魔法の炎で溶かして、開けた窓から次々と邸内に忍び込んだ。


 一階の各部屋に寝ていた使用人たちに、猿ぐつわをして縛り上げた。

 2階にいた、交替の警備兵たちもほとんど抵抗を受けずに縛り上げることに成功する。


 3階に上がると、皇子直衛の剣士が3名扉の前に陣取っている。

「そこに皇子がいるな」


 吹き矢で、一人を眠らせる。

 残りの2名は、飛んできた吹き矢を剣で叩き落した。

 かなりの手練てだれだ。


 だが、特殊部隊「黄色い熊」も精鋭ぞろいだ。

 しかも人数が多い。

 6対2の戦いになり、二人とも切り伏せられた。


「皇子、敵襲です!」

 一人が、倒れる前に声を出す。




 部屋の中では、皇子直衛のアランが起き上がって、素早く行動を始める。

 皇子をベッドの下に隠して、自分はベッドに腰掛ける。




 隠密行動は終わったとばかりに、黒装束の賊はドーンと扉を蹴破った。


 ベッドの前に剣を持った若い男が立っている。


 襲い掛かる賊たちは、声をかけて攻撃を始める。

「生け捕りにしろ!」


「捕縛魔法、蜘蛛の網(スパイダーウエブ)


 多少の蜘蛛の糸は剣で切り払ったが、次々と2方向、3方向からねばねばした魔法の網が投げつけられる。

 若い男は、身動きも取れないほどにからめとられた。


「いや、こいつ大人だ。皇子じゃない」


「よし、邪魔になるから殺しておくか」


 直衛騎士のアランの命の危険に、隠れていたエドワードが逡巡しゅんじゅんする。

 賊たちは、エドワードの性格を調べた上でアランを殺すことを示唆しさしていた。


 結局ベッドの下から転がり出て、窓のカーテンの後ろからエドワードが飛び出してくる。


「アランを殺させはしない! ウオーッ」


「ああっ、エドワード様。

 私なんかの命は、捨てて逃げて下さい」

 動けないアランが、叫ぶ。


「お前を犠牲にして、逃げうせるなんて騎士道精神に反する!」


 エドワードは、剣の腕を存分に振るって、先頭に立っていた敵を怯ませる。

 しかし、多勢に無勢だ。


 3合ほど打ち合った所で、指示が飛ぶ。

「ダンブリー、下がれ!」

 先頭の敵が後ろに下がり、バブンスキー少佐が前に出てくる。



 突き刺そうと前に出した剣を避けたバブンスキー少佐の当て身をくらって、エドワードは気絶させられた。


「よし、皇子を確保した」

 エドワードとアランは、別々に縛り上げられた。




 皇子の部屋の扉に続けて、隣のキャサリンの寝室の扉も蹴破られていた。

 皇子の部屋に押し入ったのとは別の5名が、警戒しながら入っていく。


 当然、騒ぎは聞こえていたはずだ。


 ベッドの上で、女の子が一人震えている。

「おい貴様、公爵令嬢のキャサリンか?」


「い、いえ、違います。

 私は、お側付きのアナです」


「本当か?

 我々は、公爵令嬢の身柄を拘束しに来た。

 邪魔だてするなら、殺してもいいんだぞ」


「た、助けて。ウッ、グスッ …… エーン」

 殺されると聞いて、アナは泣き出した。


「こいつは、本当に公爵令嬢じゃ無いな。

 キャサリンっていうのは、ばくやく令嬢と呼ばれている凄いお転婆らしい。

 猟犬3匹に怖気づかずに撃退して、伯爵の息子3人を一人でやっつけたって噂だ。

 こんな所で、無抵抗で泣いているような玉じゃ無いはずだ」




 ズドドーン


 その時、大音響の爆発音が響いた。

 黒装束の賊たちは全員何事かと身構えたが、何も起きていない。


 どうやら、机の上に置いてあったゲーム「恐竜木端微塵きょうりゅうこっぱみじん」からの音の様だ。


恐竜木端微塵きょうりゅうこっぱみじん

 キャサリン製作の手作りゲーム。

 平和が続いていれば、売りだしていたと思われる。

 39.主人公クララの影を参照してください。




 キャサリンの部屋にいた者たちは、その机の上に注目した。


 ハアー


 ため息をつく声が聞こえたので、そちらを見ると、机から少し離れた窓の側にキャサリンが立っていた。


「確かに私は、ばくやく令嬢と呼ばれています。

 でも、猟犬に怖気づかないとか何とか、明らかに別人クララの話と混じっていますわよ」


 キャサリンは敵の姿を一瞥すると、窓の下を眺めて何かつぶやいた。

 魔法を発動させたようだ。


 パンッ


 窓の下で乾いた爆発音がして、白い袋が風船のようにふくらんだ。


 キャサリンは、その白い袋に向かって飛び降りた。

 上手い着地では無かったが、無事に地面に到達した。


「お、おい、ここは3階だぞ」


 飛び降りたキャサリンを見て、窓に駆け寄った兵士が窓の下を見る。


 何か白いものにキャサリンが着地しているのが見えた。


次回更新は、11月9日(月)です。

続けて読んで下さいね。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ