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ばくやく令嬢しか勝たん  作者: 御堂 騎士
第4章 ばくやく令嬢 婚約するも、命の危険におびえる
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73.主人公の性癖に探りを入れる

「じゃあ、キャサリンちゃんもお元気でね」

 お別れのあいさつに来たクララが、キャサリンの手を握って泪の溜まった目で見つめてくる。


(な、なんて愛らしいの?

 こんな目で見られたら、それはエドワード様もサナンダも、一発で魅了されてしまうわよね。

 私も危ないわ。

 百合エンドにならないように気を付けないと)


「ぜひ、ぜひ、ご無事でね。

 絶対に、前線には近寄らないで下さいね。

 龍族は、すごく恐ろしいと聞いています。

 もし、クララさんの身に何かあったら……」


 キャサリンは、そう言いながら

(もしクララの身に何かあったら、私のゲーム世界での心配事は解消……

 いや、そんなことを考えてはダメ!

 こういう考えが、クララへの意地悪な行動につながるのよ。

 ゲームストーリーの強制力に負けてはダメ!)

 必死で、心の奥に浮かぶ悪魔のささやきを打ち消していた。


 その言葉に詰まる様子を見て、クララはさらに感激している。

「キャサリンちゃん。安心して!

 私は絶対に無事に帰ってくるから」






 クララとの泪の別れの後、キャサリンは自分の部屋で、ウサギのアジーンを膝に乗せて幸せに浸っていた。

 うさみみのモフモフ感は、まさに至高のメニューである。




 クララの連れてきたアナちゃんは、本当によく気が付く。

 また、ソフィアがしっかりと教育するので、すごくよく出来るメイドになってきた。


 直衛としてソフィアがついているが、彼女は世話係ではない。

 アナに身の回りの世話をしてもらうことが多くなってきた。


 とてもしっかりしているのを感心していたが、よく考えるとキャサリンの一つ年上だ。


 キャサリンも子供らしくないと思われていることが、実感できてしまった。


「でも、ここにアジーンがいるのよね。

 リズが言っていたけど、ツノウサギは怖い人や危ない人には近寄らないし、良い人には懐くから、悪人善人の診断が出来るのよね。

 サナンダとかも、今度診断してやろうかしら」


 ニヤリと笑ったキャサリンは、ふと思い出した。




 そう言えば初対面の時、クララはウサギたちに有り得ないほど恐れられていた。


 プラスティック爆弾のC-4のことも知っていたことを考えると、アメリカ軍の軍人だったのかも。

 マッチョで口ひげな、おっさん軍曹が頭に浮かんだ。


 ゲオルグのプロポーズを断ったり、エドワードのイケメンさに興味を示さない様子も、元軍人のおっさんが転生してきたとしたら、辻褄が合う。

 まだ11才の子供だから、異性に興味がないだけかも知れないが。




 でも、中身がそんな元軍人のおっさんだったら、百合エンドの気持ち悪さ百倍だ。

 彼女は前世から、マッチョ好きではないのだ。


 うれしいシチュエーションは、理知的な背の高いスマートな紳士が……

 頭に浮かんだ、サナンダのイメージを振り払う。




(大体、クララの中身がマッチョのオヤジじゃ無ければ、済む話ですわ)


 思わず、部屋の掃除をしていたアナに聞いてしまう。

「クララさんは、日頃の生活はどうでしたか?」


「普通の女の子でしたよ。

 ただ、貴族としては変わっていましたね」


(変わっている?

 やはり、元軍人の性癖が出ていたんだろうか?)

「どういう所が、変わっていましたの?」


 アナは、目をランランと輝かせて、語り始める。

「貴族のお嬢様なのに、美味しいお菓子を色々作ってくれるんです。

 この間なんか、色々な形のカスタードプリンを作って、メイドのみんなに振舞ってくれたんです。

 私のは、ヒヨコの形をしたプリンだったんです。

 とっても美味しかったです。

 おめめがチョコレート味なのも、アクセントになっていました。

 くちばしを表現するために、わざわざクッキーを焼いて作ってくれるんです」


「えっ? ヒヨコの形のプリン?

 名古屋駅に売っている奴を真似したのかしら」


「なごやえち? なんですか、それ?」


「あ、あの、ヒヨコの形のプリンを見たことがあるので、ついお店の名前を言ってしまったのよ」


「へえー。あんな美味しくて可愛いものを、売っているお店があるんですね。

 他の人には、ペンギンとかイルカとか色々な形のプリンを出していました。

 エレナさんは、自分でクマの形を作って自慢していましたけど」

 アナは、夢見る少女の顔になっている。




「何だか楽しそうね?」


「はい、とっても。

 孤児院にいる時には、想像も出来なかったほど楽しい日々でした。

 あっ、ごめんなさい。

 キャサリン様の所にきて、楽しくない訳では無いです。

 ここでは、楽しいというより安心できます。

 クララ様は、とても良い人なのですが、何だか危なっかしくて」


「どういう所が危なっかしいのかしら?」


「エレナ様もそうなんですが、背伸びしているというか。

 私達は、普通に安心して暮らしていけるのを望むのですが。

 クララ様は、危険スレスレの所で何かをつかみ取らないと、満足しないような危なっかしい感じがしました。

 クララ様と一緒にいて感じる幸せは、どうしてもずっとは続かないような気がして」


(この子、すごく頭が良いわね。

 私が持っていた、クララへの違和感を分かり易く言い当てているわ)


「アナさん。

 あなた、色々な家事の仕事は一旦お休みして、しばらく私のお側付き専門で働いて下さらないかしら」


「それは、望んでもいないことでございます。

 キャサリン様、ありがとうございます」


 お側付きのように分かり易い担当に付けば、簡単には首にならない。

 アナは、先輩から聞いていた意地悪な貴族たちとは違う、威張らない雇い主の所で働き続けられそうなことに喜んだ。


(クララの事をよく知っていて、この観察力、頭の良さ。

 学園編に突入した時に、大きな武器になるかも知れないわ)

 キャサリンは、満足げにうなずいた。




 彼女は完全に、クララ対策を転生者前提で考えることにしていた。

(マッチョな軍曹は、スイーツを作らないはずよね)


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