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ばくやく令嬢しか勝たん  作者: 御堂 騎士
第4章 ばくやく令嬢 婚約するも、命の危険におびえる
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71.直接の接触をしたい、かわいい妹アイリーン

 アン夫人が出産した。

 思いの外安産で、忙しく飛び回っていたノーベル公爵も一安心だ。


 可愛い女の子だった。


 名前はアイリーンに決まった。


 キャサリン、アイリーンのリンリン姉妹になった。


 赤ちゃんに髪の毛が無かったのでキャサリンは心配したが、そのうち生えてくると聞いて安心した。




 数か月後には、巻き毛の金髪が生えてきてドンドン可愛くなっていく。


 首が座っていないので、抱っこするのも気をつかうのだが、母(アン夫人)と姉(キャサリン)が着せ替え人形のように毎日違うベビー服を着せている。


 二人のウキウキした様子に、ノーベル公爵は少しあきれ気味だ。




 そんな幸せな日々に、キナ臭いニュースが飛び込んできた。


 ナードハート帝国本国の北、ノルド公国との国境沿いにある城塞都市の城壁が、ダイナマイトで破壊された。

 恐らく、「攻城軍撃退演習」で奪われたダイナマイトを用いたと考えられた。




 以前聞いた話だと、帝国の東西の砦が危ないという事だった。

 東西の砦から帝都まで、馬車で1カ月以上かかる。

 戦闘になっても、敵の軍隊が到達するには、帝都までは一進一退しながらだと何カ月も、あるいは数年かかるはずだ。


 しかし、本国の北側からだと馬車で一週間かからない。

 本来、北側はノルド公国があるので、北の守りは手薄だった。

 万一、ノルド公国が裏切って巨人族と共に攻め入ってくるとしたら、一大事だ。




 帝都にいるノルド公国の関係者に対する警戒感が高まる中、エスパーダ地区のノルド公国の区画の駐留軍がほんの少ししかいないといううわさが流れた。


 それが本当なら危ない。


 万一公国軍が裏切った場合に備えて、エスパーダ地区は、魔法を封印して閉鎖できるようになっていた。

 帝都にいたはずのノルド公国軍は、帝国内のどこか別の場所に隠れているのかもしれない。




 そして、ある日エドワードがキャサリンを訪ねてきた。


「うちの妹、アイリーンに会いに来たの?」

 キャサリンは、妹を見せたくて仕方がない。


「違うよ、君に会いに来たんだよ」


(いきなり、この顔で言われると本当にドキッとするわ。

 このイケメン過ぎるのは、何とかならないのかしら。

 無理して婚約解消しなくていいかと、思ってしまうのよね)


 キャサリンが複雑な顔をしているのを見て、エドワードが付け足す。

「婚約解消は、出来ない状況になったからね」


「それは、一体どういう?」


「戦争が始まった。

 この間城壁を破壊された城塞都市が、巨人族に攻め込まれて占領された。

 と同時に帝国連邦の4つの公国の一つ、ノルド公国が宣戦布告してきた。

 非常事態だから、皇室とファルマイト公国の連帯を意味する僕と君の婚約は、絶対に必要なものだ」

 エドワードは、真っ直ぐキャサリンの目を見つめる。




「でも、ノルド公国だけでは、そんなに長く戦えるものでもないでしょう?

 戦争は、すぐ終わるってことは無いんですの?」


「ノルド公国の後ろに、巨人族の国ボルケーノランドがついている。

 巨人族は、数が少なくても戦いが強い。

 そして、やはりファビオさんの予想通り、東西の砦に総攻撃が始まったそうだ。

 巨人族は何らかの手段で、西の龍族と東の魔人族との連携をとったみたいだ」


「東西の砦で戦いが始まってしまったという事は、戦争に爆薬が使われてしまうという事ですね」


「ああ、すでに北方で城壁の破壊に使われてしまっている。

 そして、巨人族への警戒のために、ノルド公国にはそこそこの量のダイナマイトを割り当てていたんだ。

 北の戦いは、双方が爆薬を使用することになるだろうね」


 エドワードの言葉を聞いて、キャサリンは考え込んでしまった。

(この世界に爆薬を持ち込んだことは、果たして良かったのかしら?)




 考え込んでいるキャサリンを見て、エドワードは不安になったようだ。

「まさか、あのダービーとかいう奴のことを、考えているんじゃないだろうな」


「いえ、彼は単なるビジネスパートナーですわ」


「そ、それなら良いんだが……

 でも、君は俺の婚約者なんだから、他の人を好きになることは道義上許されないことだからね!」


 エドワードが、やけに一生懸命だ。


(その言葉、数年後のあなたに聞かせてやりたいわ。

 もしかして、ライバルがいることで対抗意識を燃やして、私の事を大事にしてくれるようになるとか。

 いやいや、油断してはダメよ。キャサリン。

 この世界では、悪役令嬢キャサリンは不幸になる運命なんだから)

 キャサリンは、しっかり自戒じかいした。


 エドワードは、とにかく戦争の始まりを告げに来ただけみたいだ。

 彼も、まだ子供とは言え皇帝の直系の皇子だ。


 出陣式など、沢山の行事に出ないといけないらしく、慌ただしく去って行った。




 戦争が始まったと言っても、まだ遠い場所でのことだ。

 前の世界のように、飛行機で敵国を爆撃とかは無いと思われる。


 キャサリンには今一実感が無かったが、父の慌てようから大変な事態になったことだけは分かった。


 戦争が始まって、ダイナマイトの需要はかつてないほど高まっている。

 特に緒戦ちょせんで、城塞都市の城壁が簡単に破壊されたことで、需要増に拍車がかかっている。


 帝都での販売責任者であるダービー子爵は、自由都市カサイとの間を早馬でとんぼ返りしていて、ほとんど捕まらないらしい。

 長男のサナンダは、キャサリンと同じ11才の子供であるにも拘らず、事務処理をガンガンこなしていると、ノーベル公爵が褒めていた。


(サナンダがいるお陰で、お父さまが少しは楽になっているようですから、感謝はしないといけませんね)

 キャサリンを前面に出すのは父が嫌がったので、彼女は裏方で活躍している。


 公国で掘り出した珪藻土は、全てダイナマイトに使われるようになり、キャサリンが売ろうとしていたバスマットやコースターには、回ってこない様子だ。


 さらに、しばらくは製造や物流のためのインフラ整備に莫大な費用がかかる。

 一朝一夕には、ファルマイト公国は大国化できない。


(しかし、ゲームの舞台が始まる前に戦争があったなんて、想定外でしたわ。

 ファルマイト公国は、大儲けして最終的には大国になるでしょうけど、『死の商人』とか言われちゃうんでしょうね)

 妹を抱っこしたアン夫人と午後のティータイムを過ごしながら、キャサリンはため息をついた。


次回更新は、いつも通り10月29日(木)15時の予定です。


引き続き、よろしくお願いいたします。

沢山の方に読んでいただいて、モチベーションが上がります。

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