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ばくやく令嬢しか勝たん  作者: 御堂 騎士
第4章 ばくやく令嬢 婚約するも、命の危険におびえる
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63.戦車の出どころ

 良い時間になったので、お絵かきは止めてティータイムになった。


 当然、いつも通りに絵のモデルのシュークリームを食べる。


「美味しいですね。クララ様は、こんなスイーツを自分で作られるんですね。

 ところで、これシュークリームって名前なんですか?

 初めて見ました」

 エドワードの護衛のアランが頬張りながら聞く。

 彼は、絵の教室の時には見ているだけだったので、初めて味わったのだ。


「このパフ(シュー生地)が、シュー(フランス語でキャベツ)みたいだからシュークリームなんですよ」

 クララが答える。


(英語でパフケーキというのは知っていたけど、本来の意味はクリーム入りキャベツだったとは知らなかったわ。

 地球での言葉との相関がよく分からないけど、シフォンケーキと言い、シュークリームと言い、転生者の疑いはドンドン深まるわね)

 キャサリンは、食べながら思っていた。




 みんなで食べて談笑していると、ファビオが現れた。


「みなさん、お待たせしました。

 白馬の騎士が、ソフィアさんを迎えにやってきました」


「白馬になんて乗って無いじゃん」


「いやあ、クララさん。

 俺の純粋な心(ピュアハート)が、白馬なんですよ。

 そんな心を持った騎士と思っていただければ、幸いです」


「また、訳の分からないことを」

 ソフィアが呆れていると、ファビオはお菓子ではなくキャンバスの方に歩いて行く。


「おお、今日はみんな石ころの絵を描いたんですね」


 デッサンは白黒なので、確かに石ころに見えなくはない。


「石ころじゃないよ。

 シュークリームというお菓子だから」

 クララに否定されても、ファビオはひるまない。


「おおっ、この絵はすごく上手いな。

 クララ先生の絵かな?」


「違うよ、それはエレナさんだよ」


「なるほど、エレナさんはこんな才能を隠し持っていたんだ。

 うおおっ!

 この力強い絵は、ソフィアさんですよね?」


 クララは、ちょっとあきれている。

「そうだけど、よく分かったね」


「それはもう、絵のタッチひとつひとつに力強さが宿ってますよ。

 ソフィアさん、この絵をいただく訳には参りませんか?」


 急に話を振られて、ソフィアがヤレヤレという感じで答える。

「そんな絵でよければ、くれてやるが、何の値打ちも無いぞ」


「いやいや、大事に飾らせていただきますよ」


 この後、実際にファビオは応接間にこの絵を飾り、意外と評判が良かったそうだ。






 クララ達は帰って行ったが、キャサリンとソフィアはファビオからの伝言を見て、夕食は食べて帰ることを家に連絡していた。


 図らずも、皇室の夕食に招かれる形となった。


 皇帝陛下、皇后陛下、お猿のキキ、エドワード、キャサリン、ファビオ、ソフィアの順に並んで座った。


(お猿のキキは、エドワード様より上座に座るのね)

 キャサリンは、少し呆れてしまった。


 夕食の席で、エドワードはファビオに尋ねる。

「今日は、工作場の査察だったんだよね。

 どうだった?」


「いやあ、どこの工作場にも戦車チャリオットを組み立てたような痕跡は、ありませんでした。

 あんな大きいものを作ったら、目立つはずなので隠し通せるものではありません。

 地区の間を通り抜けたという、目撃情報はありません。

 エスパーダ地区のどこか広い場所で、組み立てられたのでしょう」


「広い場所って言っても、外から見えない必要があるのよね」


 キャサリンの質問に、ファビオは真剣な面持ちになる。

「工作場で無く建物の中で組み上げた場合、外へ出せません。

 高い塀に囲まれた大きな庭で組み立てたのではないかと、考えています。

 外から見えない大きな庭となると、4つの公国の公爵か、少なくともかなり上位の伯爵の家という事になります」


「つまり、それは4つの公国のうちどれかが、裏切っているという事なのか?」

 エドワードが尋ねる。


「その可能性は高いですね。

 というか、皇室を恐れていないことや、エスパーダ地区の市街地で戦おうとする所など、公国レベルのバックが無いと、辻褄が合わないでしょう。

 どこかの公国が裏切っているなら、かなりヤバイですね」


「ファルマイト公国はターゲットになっている訳ですから、残り3国のうちのどれかですわよね?」

 キャサリンが、自分達では無いことをアピールする。


「まあ、裏切っている国が一つとは限らないですけどね。

 下手すると、残り3国がみな敵の可能性もある」


 自慢げに話すファビオを、ソフィアがたしなめる。

「いいのか?

 そんな話を私たちに聞かせて。

 軍事機密のように思えるんだが」


「陛下御夫婦と皇子に聞かせるのに問題は無いでしょう。

 後は、皇子の婚約者とその直衛騎士ですよ。

 逆に、どの公国が敵か味方かは重要です。

 味方であるファルマイト公国の代表ともいえるキャサリン様に、不信感を持たれては一大事です。

 ここは、包み隠さずお知らせすべきと存じます」


 ファビオの言葉に、皇帝もうなずく。

「ワシもファビオの意見に賛成だ。

 ソフィア殿、そなたも公爵令嬢の直衛騎士。

 そのように忌憚きたんなく意見を述べる姿勢、素晴らしいことだ」


「恐れ多い言葉をありがとうございます。

 恐れながらお聞かせ願いたいのですが、4つの公国は帝国の平和のいしずえのはず。

 そこが盤石ばんじゃくでないとしたら、大きな危機のように思えるのですが?」


 ソフィアの質問に、皇帝陛下は言い難そうに答える。

「今回の一連の事件は、相当根が深いと思っている。

 エドワードが狙われる動機が、分からんのだ。

 長男と次男は、東西の防衛のかなめで、命を賭して頑張ってくれている。

 3男から6男までは、すでに爵位と領地を持って独立しておるのだ。

 7男のエドワードは、ファルマイト公国に婿入りすることになるだろう」


「そうと決まったわけでは無いと思いますよ」


 異議をさしはさんだファビオに、皇帝陛下は理解できない様子だ。

「しかし、エドワードは領地を含めて貴族としての生活基盤がないぞ。

 婿入りするのが、普通の道だと思うのだが?」


「今のままなら、そうかも知れません。

 しかし、それでもゲオルグ殿下の治める2つの地方のうちの一つは、誰が領主になるか未確定です」


「つまり、そこを狙うものにとっては、エドワードは邪魔者という事か」


「そうです。

 そして、帝国の東は魔人の国、西は竜の国です。

 同時に攻め込んできた場合、長男次男のお二人同時にお亡くなりになる可能性があります。

 というより、それを狙っている者がいた場合、エドワード様、次にゲオルグ殿下が狙われることになります」


「ええっ?

 どうして、いきなり俺が狙われることになるんだ?」

 エドワードは、驚きを隠せない。


次回更新は、10/15(木)になります。


ポイントとブックマーク有難うございます。

ついに、過去作品比ほぼ最高ポイント達成しました。

モチベーションが上がります。

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