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ばくやく令嬢しか勝たん  作者: 御堂 騎士
第4章 ばくやく令嬢 婚約するも、命の危険におびえる
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62.お絵かきサロン

 エドワードの全快祝いの数日後、ノーベル公爵が領地に向かって旅立って行く。


 つわりが終わらないアン夫人は、キャサリンと一緒に帝都に残る。


「アン、くれぐれも無理はしないで下さいね。

 キャサリンの事もよろしく」


「わかりました、あなた。

 気を付けていってらっしゃいませ」


「キャサリン、お前は優秀な娘だ。

 お母さんのサポートをしっかり頼む。

 くれぐれも言っておくが、エドワードの毒殺未遂犯を探すとか危険なことは止めておいてくれよ」


「わかりましたわ。お父さま。

 ベテランのメイドたちに聞いたところ、つわりは後数か月以内でおさまることが多いそうです。

 毎日レモンジンジャーティーを作りますよ。

 その間の行事の出席などは、私にお任せください」


「いや、10才のお前が行事に駆り出されることは無いよ。

 ちゃんと、今から3か月間は公式行事に参加できない旨を皇帝陛下に上申してある。

 家で大人しくしておいてくれよ」


「それでは、婚約者のエドワード様にも会いに行けませんわ」

(15才までに婚約破棄してもらう予定なんですから、今のうちにご尊顔を目に焼き付けておかないと)


「心配だなあ。

 ソフィア、本当にキャサリンの事を頼むよ。

 オークの村の出来事みたいなのは、ご免だからね。

 今回は特に、市街地に帝国があずかり知らない戦車チャリオットを持ち込むような連中が、跋扈ばっこしている。

 この子が首を突っ込まないように、しっかり制御をお願いするよ」


「承知いたしました。旦那様」


 公爵は心配そうな様子で、妻と娘にキスをしてから馬車に乗り込んだ。

「春のキャサリンの誕生日までには、またこちらに戻って来るからね」



 街道途中の自由都市カサイは、順調に大きくなっているとの情報が届いている。

 城塞都市セメンタイトも、グラント男爵の領地経営が上手くいっているようだ。

 それに伴って、公国内の街道の治安もグングン良くなっているそうだ。


 公爵は、速度の遅い戦車チャリオットやしきに置いて、最小限の隊列で出発した。

 そのため、前回までの半分の日程で領地に帰れると言っていた。






 さて、さらに数日後、キャサリンはお城にいた。


 クララが貴族になってしまったので、絵の授業は終了という事になった。


 だが、エドワードはようやく絵の基本が分かってきたところで、楽しかったらしい。

 ファビオと一緒に頼み込んで、週に一回お絵かきサロンをお城で開催することになった。

 これは、エドワード、キャサリン、ファビオ、クララが絵を描いて、交流するという名目だが、実質クララが絵を教えることになりそうだ。



※サロン

 語源は、ヨーロッパ(特にフランス)で 17~18世紀に流行した、上流貴族の婦人達の主催する社交的集会。

 地球では、クラブには女性が参加できなかったので、男女の別なく、さらに生まれに関係なく参加できるサロンが中世以来、政治や文学で重要な役割を果たしている。


 この世界(ジークガルト)では、単なる社交的集会の様だ。

 地球でも、フットサルの語源はサロンでやるフットボールという説もあり、上品な集まりであれば何でもありなのかも知れない。


 なお地球での説明には諸説あります。

(間違っていると、チコ〇ゃんに叱られるので書いておきます)




 第一回目のサロンの始まりには、ファビオがいなかった。


 遅刻してでも参加したいとの伝言が来た。

 サロンに間に合わなくても絶対にお城に行くから、キャサリンとソフィアはお城で夕食を食べて欲しいとまで書かれていた。


「我々の夕食まで指定するとは、本当にやりたい放題だな」

 ソフィアが呆れている。


「でも、仕事が忙しくて来れないんですから、許してあげましょうよ。

 ソフィアさんが絡まなければ、いつもは真面目に仕事しているらしいですよ」

 エドワードがフォローする。




 ここで、クララが遠慮がちに提案する。

「絵の授業の時いつも、エレナさんが興味深そうにしていたのに気づいてたんだ。

 エレナさんも参加して良いかな?」


「そ、そんな、貴族の方たちのサロンに私など参加できませんよ」

 エレナが、辞退しようとする。


「おい、アラン。

 お前も、いつも興味深そうだったな。

 お前も参加しろよ。エレナさんが参加しやすくなるから」


「まあ、そういう理由でしたら」

 エドワードの護衛のアランもお絵かきに参加することになった。




「じゃあ、ソフィアも参加ね」


「お嬢様。私には、そんな文化的なことは無理です」


「いつも暇な時に難しい本を読んでいるじゃない。

 ソフィアは絶対文化的よ。

 エレナさんのために参加していただけないかしら?」

 ソフィアも渋々OKした。



 今日は、クララが作って来たシュークリームの絵を描くことになった。


 さすがに、ずっと絵の授業を横で見ていたエレナのデッサンは、クララ以外の5人の中で抜きんでていた。

 絵の才能も、すごいのだろう。


 クララは一人だけ、いきなり絵の具で絵を描いているが、シュークリームの絵は厳しそうだ。

 多分、クララがデッサンをしてもエレナさんに負けていただろう。

「絵の授業を終わりにしておいて、良かったあ。

 私の絵の実力がエレナさんに負けていることがバレたら、大変だったよ」


「クララ様、そんな訳ございません。

 私には天使の絵なんて、どれだけ練習しても描ける訳ありませんから」




 二人で謙遜し合っている横で、エドワードが声を潜めながらキャサリンに話しかける。

「今日ファビオ団長が来れないのは、帝都内の工作場を臨検しに行っているかららしい」


「えっ、それって、この間の襲撃事件の関係ですか?」


「ああ、押収した戦車チャリオットが、帝国のものと随分違うらしいんだ。

 帝都の門を通った形跡も無いので、部品で持ち込んで帝都内で組み立てたらしい。

 それで、帝都内の工作場を全て調べて犯人を捜すんだそうだ」


「へえ、犯人たちはすごい証拠を残したんですね」


「それと、ファビオ団長が護衛していることに驚いていたそうなんだ。

 護衛は直前で交代したから、帝国騎士団との繋がりが浅いと情報がつかめない。

 これも手掛かりになるだろうって言っていたよ」


 突然、クララが割り込んでくる。

「ファビオ団長、やるじゃない。

 戦車チャリオットも、ほとんど無傷だったらしいし。

 護衛交代の情報の伝達を手掛かりにしたり、意外と出来る男なんじゃない?

 ねえ、ソフィアさん」


 話しかけられたソフィアは、絵を描くのに必死になっていて、聞こえていないようだ。

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