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ばくやく令嬢しか勝たん  作者: 御堂 騎士
第4章 ばくやく令嬢 婚約するも、命の危険におびえる
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58.静かなお見舞い

 ナードハート城の中層階にある、エドワードの部屋。

 この城は、中世ヨーロッパのゴシック調の重厚な城だ。


 城塞都市の中心の高台の上に、その威容を称えている。

 その大きさも、塔の高さも、キャサリンの前世には無いほどの規模のモノだった。

 長期の籠城戦ろうじょうせんにも耐えられるように、居住性もかなり良い。


 7男とはいえ、エドワードは皇帝直系の男子だ。

 その部屋の住み心地は、この世界では最高級のものになる。

 ゲオルグも出て行って、実は直系男子で城に住んでいるのは、皇帝とエドワードだけになっていた。


 窓から秋の風が吹いてきて、涼しい。

 そろそろ冬も近付いて来て、朝夕は肌寒いくらいだ。


 ベッドに横になったエドワードの横に椅子を置いて、キャサリンが座っている。

 エドワードは寝入っていた。

 まさに、この世界(ジークガルト)で最高の空間に二人(+付き人)は、いる。


(ウフフフ

 寝顔が素敵ですわ。

 今日は、この寝顔をしっかり目に焼き付けて帰りますわよ)




 少し強い目の風が吹いて、カーテンがパタパタと音を立てた。

 エドワードが目を覚ます。

「あっ、キャサリン。

 ゴメン、眠ってしまったようだ。

 せっかくお見舞いに来てくれたのに、申し訳ない」


「いえいえ、気にされる必要はございませんわ」

(私とでは退屈でしょうし。

 私の方は、至福の時を過ごせました)


 エドワードの声を聞いて、執事が部屋に入って来た。

 彼が目を覚ますまで、扉の外で待っていたのだろう。

「エドワード様、キャサリン様。

 事件の捜査進捗を探ってまいりましたので、ご報告いたします」


「ああ、頼む」

 エドワードも捜査の様子が気になって、探りを入れていたようだ。



 執事は、メモを見ながら直立不動で報告する。

「やはりエレナ様のおっしゃっていた通り、キャサリン様のグラスからも毒が検出されました。

 北方の山の中で採れる毒草サリーナのようです」


(やっぱり私も危なかったんだ。

 症状から毒の種類も見破っているし。

 エレナさん、どれだけ優秀なのよ)

 キャサリンは、心の中で呆れていた。


「そして、当日の配膳係のうち数名が行方不明の様です」


 エドワードが、顔をしかめる。

「そいつらが毒を入れた可能性が高いんだな。

 でも、行方不明では誰の指示だったか分からないな」


「そ、それが昨日夜から、ヴェンデリン様とウリヤーナ夫人も姿を消しているのです。

 憲兵隊は、重要参考人として行方を追っているようです」


「ヴェンたちも、いなくなったのか。

 巻き込まれたのかな?

 無事だったら良いけど。

 企みに加担したなんてことは、無いと信じたいが」

 エドワードは腕を組んで考え込む。


「ヴェンが企みに加担する訳無いから、間違いなく巻き込まれているわ。

 本当に心配ね」


「あ、ああ、そうだな」

 エドワードは、うつむきながら答えた。


(この顔は、ウリヤーナ夫人は企みへの加担も有り得るって考えてる顔ね)




 二人ともそのまま沈黙してしまったので、キャサリンはそろそろ帰ることにした。


「あ、あの、お体にさわりますから、あまり毒薬の犯人の事は考えずに、お体を大事にしてください。

 私は、これで失礼いたします」

(美しい寝顔もタップリ見れたし)


「そ、そうか。もう帰るのか」


「ええ、お休みになるのに邪魔になってもいけませんから」


「邪魔だなんて、そんなことは無いよ。

 まあ、おしゃべりなクララとかだと、寝にくいけどな」


「また、そんなことをおっしゃって」


「いやいや、エレナさんは昨日俺を殺す気があったんじゃないか?

 ちょっと、殺気を感じたぞ」


「考えすぎですよ。

 ウフフフフ」

(でも、私も危ないと思ったから、間に入ったんですよね)


「キャサリン。

 俺は、君がいると安心できるから、寝ていられるし体も休まるんだ。

 また、来てくれよな」

 エドワードは起き上がって、ベッドの横に立つキャサリンの手を取った。


 キャサリンは、少し照れた。

「まあ、お上手ですね。

 そんなことをおっしゃったら、毎日来ますよ」


「ああ、頼むよ」


(本当にお上手ですわ。

 クララさん達が来た時と違って、退屈でしょうに。

 でも、許可をもらっちゃったから、毎日ご尊顔を目に焼き付けに来ますわよ。

 寝込んでいる間は、婚約破棄とか考えられないだろうし)




 帰りの馬車で、ソフィアがつぶやく。

「お嬢様、くれぐれも気を付けてください。

 皇室を敵に回す覚悟の敵が、隠れている訳ですからね」


「でも、皇室主催のパーティー会場の飲み物も危ないなんて、防ぎようがありませんわ」


「確かにそうですね。

 私も、武力で攻めてくる敵ならば対処できるのですが、毒とか変な魔法とかだと対応できません。

 こういう時は、エレナさんの頭の良さが羨ましいです」


「あっ、そうだ。良いこと思いつきましたわ。

 ソフィア、外での私の食事の毒見をお願いします」


(今まで、ソフィアはお茶菓子を薦められても、絶対手を出さなかったものね。

 こうすれば、クララのスイーツとかも一緒に楽しめますわ。

 私の安全も高まって、一石二鳥。

 いえ、ソフィアが毒見してくれるとなると、皆も安心できるから一石三鳥ね)


「分かりました。

 でも、毒の効果が確認できるまでは、食べるのを待っていただきますよ」


「はーい、分かりましたあ」

 馬車は、夕日に向かって走って行く。


 ソフィアには、キャサリンが彼女に美味しいものを食べさせたくて、毒見などと言い出したことは、分かり切っていた。


 だからこそ、このお嬢様を守り切らないといけないと固く心に誓っていた。


次回更新は10月3日(土)です。

読んで下さいね。

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