表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ばくやく令嬢しか勝たん  作者: 御堂 騎士
第4章 ばくやく令嬢 婚約するも、命の危険におびえる
57/543

57.ばくやく令嬢は、毒薬は苦手

 クララが心配そうに、エドワードを気遣う。

「本当に大丈夫?

 でも、毒は吐いたし、私の治癒魔法をかけたのに起き上がれないなんて、本当に殺す気の毒だったのね」


「ああ、本当に助かったよ。

 突然、目の前が真っ暗になって、体から力が抜けた。

 ドンドン体中が冷たくなっていく感覚は、本当に死の一歩手前って感じだった」


 彼は、寝ていろと言われたから寝ていると言っていたが、本当に起き上がれないようだ。


 エドワードの説明を聞いて、エレナが分析する。

「その症状から考えて、北方に生える毒草サリーナを盛られた可能性が高いですね。

 サリーナは、ほのかに甘い味がするそうなので、ジュースに仕込むには最適です」


「すごいな、エレナさん。

 そんなに毒に詳しいなら、自分で仕込むことも可能なのか?」


 エドワードに聞かれて、エレナは表情を変えずに答える。

「勿論可能です。

 ただ、私はパーティー会場に足を踏み入れておりません。

 私が用意した毒を、クララ様がエドワード様のグラスに仕込んだと疑われる可能性は考えられますが」


「どうしてそんな、自分たちが疑われるような話をするの?」


 キャサリンの質問に、エレナは当たり前という態度で答える。

「それは、キャサリン様。

 あなたとは、敵対したくないからです」


「私と敵対って、どういうこと?」


「私が一番恐れるのは、あなただという事です。

 クララ様のお話を聞く限り、テーブルの上にあったジュースは2つ。

 エドワード様とキャサリン様がその席に座ることは、あらかじめ決まっていた。

 もしエドワード様を狙うなら、両方のジュースに毒を盛ることになります」


 キャサリンは、驚く。

「えっ?

 じゃあ、私が毒を飲んでいたかも知れないってこと?」


「その通りですが、あなたの手の者が犯人だった場合、飲む可能性はゼロです」


 そのエレナの言葉を聞いて、壁際にいたソフィアが音もたてずにスッと話を続けるエレナの後ろに立つ。


「私は、あくまで可能性の話をしています。

 ただ、キャサリン様は魔法と薬を効果的に融合させて、新しいものを創り出すのがお得意ですよね?」


「わ、私の得意なのは、爆薬とかで、毒薬は専門外で……」

(この世界では、化学と薬学が違うとか言ったって、分かってもらえないよね)


 エレナは、さらに続ける。

「北方の毒草が使用されたことは、帝国の南方にお住みの方にとって疑いを晴らす言い訳にも使えますが、頭の良い方の場合、かえって疑いの目で見られることもあります。

 お聞きした所、キャサリン様は婚約破棄を匂わせる発言をされたとか」


「えっ? そ、それは……」

(前世でやったゲームの中で、婚約破棄をしたかったエドワードが私を殺すから。

 なんて、言えるわけない)


 エドワードが、勢いよく半身を起こす。

「キャ、キャサリン。

 まさか、君。ボクとの婚約が不本意なのか?」


「いえ、そ、そんなこと……」

(今の私、最高に怪しい。

 世の中の冤罪えんざいって、こうやって生み出されるのね)




 エレナの声が、低くなる。

「さて、エドワード様の体の中にはまだ毒草サリーナの成分が残っています。

 毒物活性化の魔法をかければ、とどめを刺すことが可能です。

 今この部屋にいる戦力は、お嬢さまの味方が圧倒的です。

 魔法の事を黙っていれば、容態ようだいの急変で片付けられます。

 どうされますか?」


「エレナさん、待って!」

 キャサリンは、エレナが魔法を発動してもエドワードに当たらないように、二人の間に割って入った。


 エレナがニッコリ笑う。

「これで、キャサリン様の無実が証明されましたね」


「ええっ?

 もし本当にキャサリン様が犯人だったら、私たち皇子殺しの仲間になってたってこと?」

 クララが焦ったように聞く。


「と言うより、今の行為はたとえハッタリだとしても、僕に対する殺人未遂じゃ無いのか?」

 エドワードが、もっと焦っている。


「無実の証明の為でしょう。

 確信があるから、あそこまで突っ込めた。

 まあ、万一お嬢様が犯人だったら、私が血路を開いて逃げることも可能ですが」

 ソフィアは、事も無げに言う。


 エレナが、表情を崩す。

「大丈夫ですよ。

 私は、毒物活性化みたいな魔法を使えませんから」


(本当かなあ。

 魔法が使えないことって、証明できないよね)

 キャサリンは、ゲームの中でエレナが冷徹なキャラだったので、警戒は緩めない。




 エレナが解説する。

「殺人には、動機が重要です。

 本当にキャサリン様が婚約を取りやめたいなら、今日のパーティーをお断りすれば良いだけです。

 証拠が残る毒を用いて、そんな危ない橋を渡る必要はございません。

 ただ私は、過去のいきさつを知りません。

 エドワード様を、殺したいほど憎んでいるなら別ですが」


(そ、それって、やっぱり私が犯人の可能性も考えていたってことよね。

 その上で私と敵対したくないって、エドワード様を殺す準備は出来ていたってことじゃない?

 やっぱり、エレナさんは恐ろしいわ)


 キャサリンが肝を冷やしていると、エレナは話を続けた。

「キャサリン様、あるいはその配下の仕業しわざで無ければ、犯人はエドワード様とキャサリン様を同時に狙ったことになります。

 皇室と公爵家を同時に敵に回す、非常に危険な行為です」


「確かに、毒は証拠として残るし、当日にグラスに近寄らないと毒を仕込めないんだからとても危険よね」


 考え込むキャサリンの横で、エレナの説明が続く。

「一番厄介な可能性が消えた以上、残る可能性は2つです。

 一つ目は、皇室や公爵家とも戦える強大な組織による計画的な陰謀です。

 もう一つは、個人的な恨みから来る衝動的な犯行ですね」


「私が犯人だと、何故一番厄介なの?」


 キャサリンの質問にエレナが明快に答える。

「現場には、3人しかいませんでした。

 キャサリン様が犯人で、エドワード様がお亡くなりになった場合、間違いなくクララ様が犯人にされて、事件は解決となってしまいます」


「あ、そういうことかあ。

 キャサリンさんが犯人じゃなくて、良かったあ。

 確かに、私が二人のグラスを触っていたって、公爵令嬢に証言されちゃったら逃げられないね」

 クララが、胸をなでおろす。


 エドワードが、怪しむ目でクララを見る。

「お前、本当に触って無かったか?」


「触って無いよ!

 テディは、私が現れて茶化した後直ぐに倒れたんだよ。

 グラスに触る暇なんてなかったよ」

 クララが、エドワードをきつくにらむ。


「そんな、にらむなよ。

 冗談で言ったんだから」

 エドワードが笑っている。


(やっぱり、この二人は会話も弾むし、仲が良いわ。

 私は、いつでも引けるようにしておこう)

 キャサリンは、少し悲しい気分で胸が痛んだ。


次回更新は、10月1日(木)になります。

引き続きお読みいただけたら、嬉しいです。

よろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ