50.ドキドキ 楽しいピクニック
さて、ピクニックの当日。
お城の門の前の待ち合わせ場所に、ゲオルグ、エドワード、エリザベス、キャサリン、ソフィア、クララ、エレナ達が集まった。
皆集まったので、馬車に分乗して出発しようとすると、もう一台馬車がやって来る。
帝国騎士団の馬車だ。
「おーい、待ってくれー!
俺も行くからなー」
ファビオ団長だ。
「あれ?
今日って騎士団は、あれじゃありませんでしたっけ?
ゲオルグ兄さんのプリンス拝命式の予行演習」
エドワードが聞く。
「ゲオルグ殿下の先導をするのは、最近皇帝陛下がお気に入りのお猿のキキに決まった。
キキが俺の代わりに、正装して行進することになったので、俺は練習が必要無くなったんだ」
「また、そんなことを言って。
さぼりましたね」
ゲオルグに指摘されて、ファビオは頭を掻く。
「まったく、この男は。
大事な式典の練習を、団長自らすっぽかすなんて信じられんな」
ソフィアが冷たく言い放った。
「ソフィアさん。そんな。
あなたと一緒に過ごすために、万難を排して登場したのですよ。
騎士団のみんなも、俺の今日の目的を聞いて応援してくれてるんだぜ」
ファビオの言葉に騎士団の馬車の御者も、ウンウンとうなずく。
馬車を連ねた一行は、帝都の門を出てしばらく走り、公園の入り口で停車した。
ヒマール 国立公園。
帝都近郊で、一番人気の観光スポットだ。
ソフィアとエレナ以外の付き人と御者たちは、駐車場で待機する。
その他のみんなで遊歩道を歩いて行く。
本当にサボって抜け出してきたのだろう。
ファビオは、軍服姿のままだ。
帽子だけテンガロンハットで、執務中ではないことをアピールしているつもりだ。
ゲオルグも軍服っぽいデザインのダークグリーンの上下だし、エドワードも動きやすいようにカーキ色のボーイスカウトのような格好だ。
二人とも、緑のベレー帽をかぶっている。
貴族の子供達が、ちょっと冒険に出た感を出したくて軍服ぽい格好しているのを、護衛しているように見えなくもない。
周りには他に客もいないので、サボっている団長の事はバレないだろう。
キャサリンは、凛々しい二人の姿を見れて、しめしめと喜んでいた。
クララは、白地に水色の水玉模様のワンピースで、麦わら帽子をかぶっている。
(中身はクソ度胸で、ミート爆弾をかますような娘なのに、可愛いわ。
まさか、ワンピースだから麦わら帽子をかぶっているなんてことは無いでしょうね。
もしそうなら、完全に転生者だわ)
エレナは、ベージュのブラウスに紺色のレギンスをはいている。
まだ11才のはずだが、大人の女性のように見える。
(スタイルも歩き方も、モデルさんのようだわ。)
エリザベスは、白のパンツドレスにいつも通り沢山のアクセサリーを付けて、ジャラジャラ言わせながら歩く。
(よく貧乏貴族だって自分で言うけど、服やアクセサリーがちっとも貧乏くさくないのよね。
どういうことなのかしら?)
「お嬢様、みんなのファッションを採点しておられますね。
どうですか? 今日の私は」
(私はそんな目で、みんなを見ていたかー)
感じ悪いかもと反省しきりのキャサリンの横で、クララが脱いだ帽子を手に持って、クルクルと回って見せる。
ワンピースのスカート部分が、遠心力でひらひらと舞い上がる。
「オオーッ」
男性陣が歓声をあげる。
「爆薬令嬢でも可憐なキャサリンちゃんは、そのままだけどな。
がさつなクララは、うまく化けてるよな」
エドワードが酷い事を言う。
「クララ様は、がさつではありませんよ。
ケーキの飾り付けを見ておられるでしょう」
エレナが抗議する。
「本当だよ。ちょっとそこ! 減点1だからね。
減点3で、次のケーキのイチゴを一個没収するからね」
クララに言われて、エドワードがおどけて見せる。
「おーこわ。
俺のケーキには、わさびとか仕込まないでくれよ!」
おのおの馬車から降ろした荷物を分担して、歩き始めた。
ソフィアは、大量の荷物を担ぐ。
「ソフィア。ピクニックなんだから、自分の荷物は自分で持つよ」
キャサリンが、ソフィアの荷物を取ろうとすると、ファビオが奪い取った。
「レディーの荷物は、わたくしめにお任せください。
荷物を運ぶために、力を振り絞るソフィアさんを見るのも捨てがたいのですが、男としてこのまま見過ごすわけにはいきませんから」
「また、貴様という奴は私の筋肉がどうこうと言うつもりだな。
お嬢様、例の秘密兵器を出しましょう」
「えっ? 秘密兵器?」
戸惑うファビオを無視して、ソフィアがポンチョを着る。
フードをかぶって、完全にソフィアの肌の露出はゼロになった。
「これで、私の筋肉は見たくても見れまい」
「ええっ? 今日の俺の参加目的が一つ、完全に潰されてしまった」
ファビオが無残なほど、しょんぼりしている。
「こんなに思われているのに、冷たすぎるんじゃないですか?」
クララが、少し強い目に抗議する。
「私をからかうために、大事な式典の練習をサボるような輩だ。
これくらい厳しくしないと、調子に乗るからな」
「ソフィアさん。
俺は、あなたをからかうつもりなんか無い。
俺は、本当にあなたに会いたかったから、ここに来たんだ。
それだけは、分かって欲しい。
あなたの為だったら、式の本番でもすっぽかしますよ」
「おいおい、僕の前でそれは失言だよ」
ゲオルグが大笑いする。
「でも、こんなに素敵な人に、ここまで思われるなんて、わだしも羨ましいです」
エリザベスが、夢見るような乙女の表情だ。
1時間ほど歩いて、目的地の湖の横の芝生に到着した。
麻のような素材で出来たレジャーマットを敷いて、荷物を降ろす。
「フーッ。秋とはいえ、さすがに未だ暑いですね」
ソフィアがポンチョを脱いだ。
「汗をかいたソフィアさん、素敵だ。
今日は来て良かった。本懐を遂げた気分だ」
荷物をタップリ持ったファビオが、水筒の水を飲みながら、すごく嬉しそうだ。
「ポンチョは、お前のために着たんじゃないからな!」
ソフィアが、必死で叫ぶ。
みんなの荷物を運んで、ファビオは汗だくだ。
汗をぬぐうファビオが、意外と爽やかなせいか、ソフィアは真っ赤だ。
「ソフィアさん、真っ赤ですよ」
クララに指摘されて、ソフィアが大声を出す。
「暑い、暑い!
未だ暑いから、血の巡りがすごく良いんだな。
なんか、おかしな目で見るやつがいるから、私はむこうで涼んでくる」
ソフィアが皆と離れて、木陰に隠れてしまった。
「もう、クララ。ダメじゃない。
ソフィアは素直じゃ無いんだから」
キャサリンに窘められて、クララが謝る。
「ゴメンゴメン。次からは気を付けるよ」




