46.3兄弟にお仕置きを!
キャサリンは、エリザベスからクララの武勇伝を聞いて、背中に寒いものが走った。
(猟犬をけしかけられて、撃退できるって、一体どれだけの戦闘能力なのよ)
「猛獣は敵だったら怖いけど、味方だったら本当に頼もしいんだなあ」
エリザベスは、すごく嬉しそうに教えてくれた。
(クララは本当に、絶対に敵に回したくないわ。
大体、あんなに恐れていたウサギを、いつの間に手懐けたのかしら?)
今回は、伯爵家の犬に怪我をさせたが、貴族に手は出していなかった。
ただ、暴言を吐いたという事でお城の地下牢に一晩泊められて、クララは釈放された。
リックドム伯爵は、ヴェンデリンの時同様今回も皇帝に抗議したが、クララは教会の入り口に展示された絵の作者だ。
一応、教会の関係者という事で、平民だからと油断してこれ以上彼女とトラブルを起こさないように、皇帝から言い含められた。
クララが逮捕されたので、キャサリンとファビオの絵の授業も一回ずつお休みになった。
伯爵家には、帝国騎士団からも意見書が届いた。
「あのクララという娘は、皇帝も気に入っているし教会も絡んでいる。
これ以上関わるんじゃない」
伯爵も危険を感じて、子供たちに注意をした。
だが、3兄弟は分かっていなかった。
「おれたちが直接絡むのはやめよう。
でも、犬たちが傷つけられた。
犬たちが勝手にお返しするのは知らないよな」
「お、兄貴。
ずる賢いな。
じゃあ、その線で行こうか?」
「あいつの得意技は、投石みたいだ。
今度は、最初から3匹とも兜をかぶらせておけば、石の攻撃は効かないよ」
皇子二人への絵の授業が終わって、クララとエレナが二人でお城の横の寮の庭に来た。
またもや3兄弟が現れた。
「ハーフエルフ!
この間、犬に怪我をさせただろ!
犬に謝れ!」
「嫌だよ!
犬に謝るのは、お前らの方だよ。
犬は、命令通りに働いただけなんだから」
「何だ、お前。
平民のくせに、俺達にそんな暴言を吐いてタダで済むと思っているのか?
ついこの間地下牢に入れられたのに、懲りてないのか?
頭悪いから、理解できないのか?」
3兄弟は、今度は最初から兜を装備した犬たちの首輪を取った。
「ガイア、オルテガ、マッシュ!
あの生意気女をやっつけろ!」
犬たちはグルルルとうなるが、クララがニヤリと笑うと逃げて行った。
「えっ、この間の戦いでビビってしまったのか?
そんなにひどい目に会ったとは思えないんだが」
クララが、腕を組みながら言う。
「アンタ達さあ。
猟犬を、女の子にけしかける意味わかってる?
手足を食いちぎっちゃうかもしれないんだよ。
頭悪いから、理解できないのかな?」
「ハッ。貴族はなあ、平民相手に何やっても罪にならないんだよ」
「でも、前回は貴族のエリザベスちゃんにも、けしかけたよね」
「あいつは、田舎貴族の男爵家なんだよ。
俺達は格上の伯爵家なんだから、ちょっとくらいケガさせたって問題無いんだよ」
「おっ、言質もらっちゃったぜ。
格上の貴族からは、手足がちぎれるようなケガをさせられても不問なんだな?」
クララたちの後ろからエドワードが現れた。
「エドワード!
お前、将来は知らないけど、今は皇帝の7男坊なんだぞ。
今は爵位は無いし、皇族に加われるか確定して無いんだ。
俺達は、リックドム伯爵家の正式な跡取りだ。
お前が格上ってことは無いからな!」
「お前ら、ヴェンデリンにもそんなこと言ったのか?
大けがしたって聞いたけど、誰も傷一つ残って無いじゃねえか。
大げさに言いやがって。
今日は、言葉通り大けがしてみるか?」
兄弟は、エドワードに必死で言い返す。
「ヴェンデリンなんか、半分亜人じゃないか。
あんな奴、皇室の人間かもしれないが、貴族ですらないぞ」
「ふーん、地位が上なら下の人に何しても良いんだ。
じゃあアンタ達、公爵家の跡取りには何されても良いんだ」
クララが言うと、エレナが続ける。
「立てば爆薬、座ればドッカン!
はい、続きをどうぞ」
急に振られて、ドギマギしながらキャサリンが締める。
「佇む姿は、決死の花!
爆薬令嬢、キャサリン参上!」
「さあ、キャサリンお嬢様。
こいつらを、お望み通り五体ばらばらに、ふっ飛ばしてやってください!」
エレナが、けしかける。
「その前に皆さん、あの石像を見ていただけますか?」
キャサリンが指さした先に、リックドム伯爵の大きな石像が立っている。
キャサリンが、雷魔法を石像に向けて発射すると、仕掛けられた爆薬が爆発した。
ドッカーーーン、ガラガラガラ
石像は、バラバラに飛び散り、砕け落ちた。
「伯爵の石像は、公爵家の人に破壊されても文句言えないんだよな。
お前らそう言ったよな!」
エドワードが言う。
抗議するもクソも無かった。
3兄弟は爆発の現場を初めて見たのか、ビビッてしまって言葉も出ない。
「あんな丈夫そうな石像が、一撃でバラバラ。
あの爆薬を人に使ったらどうなるのかしら?
兄弟が3人。護衛が6人。
9人も手足バラバラの現場に居合わせることになるんですね。
エレナ、怖いですわ」
エレナが、可愛い子ぶる。
ここで剣を抜くと、公爵家に向かって剣を抜くことになる。
しかし、本当に爆破されたら命は無い。
大体、素手で猟犬を追い払う相手に剣で闘えるのか?
護衛の者達も、剣を抜こうかどうか迷っている。
「試作品なので、どんな結果になるか分かりませんけど。
これを、差し上げましょう」
キャサリンが、白くて丸い筒を、兄弟の方にコロコロと転がした。
一見、火のついたダイナマイトのように見える。
「うわー! 助けてくれー!」
護衛の者達は、兄弟を置いて逃げ出した。
兄弟は、腰が抜けているのか動けない。
「ヒャアー」
と、小さな悲鳴のような声をあげるだけだ。
コロコロコロコロ
ドッカーーーン
大音響が辺りを包んだ。
キャサリンが説明する。
「風の魔法よ。
爆発の音だけを再現してみたの。
色々なものに付与できるのよ。
臨場感がすごいでしょ」
だが、3兄弟は聞いていない。
気を失ってしまった。
お漏らしも、してしまったようだ。
辺りが臭くなった。




