33.皇子様方の趣味をゲットですわよ
「そう言えばさ、さっき趣味がどうとか言ってた気がするんだけど。
キャサリンさんは、何か趣味があるの?」
突然、エドワードが話を振ってきた。
「えっ、私の趣味ですか?」
3人、いやヴェンの母も含めて4人が、一斉に注目する。
(化学実験なんて言ったら、引かれるし話題も続かない。
イケメンを愛でることです、なんて言えるわけない。
なんて答えるのが正解かしら?)
「ど、読書ですかね」
「へえ、さすが貴族のお嬢様らしい趣味だね。
何かお薦めの本とかあるのかな?」
ゲオルグが、興味深げに聞いてくる。
「この間までカサイという所に行っていたのですけど、結構日中の余った時間に読書いたしましたわ。
そのとき読んだ本の中で面白かったのは、『転生したら慎重すぎる村人だったので、スローライフでレベル999を目指します』ですかね」
「最近帝都では、そういう長い題名の小説が流行っているらしいな。
そんなに面白いのか?」
エドワードに聞かれて、キャサリンは答える。
「意外と面白いですわ。
でも、狭い系小説と揶揄されるらしくて、趣味の範囲の狭い人用みたいに言う方がいらっしゃるようですね」
「フーン、知識層の人たちの考えることは、よく分からないな。
ゲオルグ兄さんの音楽は、趣味の域を超えてるよな」
「僕は、昔から体が丈夫じゃ無いからね。
テディみたいに、剣術や格闘技みたいな本来皇族に求められる技能が無いんだ。
宮廷にある楽器を弾いてたら、上手くなっちゃったんだよね」
「へえ、ゲオルグ様は音楽、エドワード様は武術がご趣味なんですね」
「ねえねえ、趣味ってなあに?」
ヴェンデリンが、話に入れないので聞いてくる。
「仕事じゃなくって、自分から楽しんでやることかな。
そういう意味では、テディの武術は楽しんでないか」
「そうだな、貴族としての義務みたいなもんだからな」
エドワードは、斜に構えてティーカップを持った。
(すごい! 少女漫画なら、エドワード様の周りは花だらけのシーンだわ)
キャサリンは、その余りに神々しい出で立ちに感動している。
「そう言えばテディは、最近絵を始めたじゃないか。
あれは、趣味になるんじゃないか?」
「えっ、絵をお描きに?
一度見せていただきたいですわ」
(エドワード様の描く絵なら、きっと素晴らしいに違いないですわ)
「いや、この間から始めたんだけど、とても見せられるようなレベルじゃないよ。
人物画とか難しいんで、今度森の風景を描きに行こうと思ってるんだ」
「へえー、エドワード様のお描きになる絵かあ。
完成が楽しみですね」
「ああ、じゃあ上手く描けるようになったら見せるよ」
「ねえねえ、ボクは美味しいものを食べるのが好きだよ。
これ、趣味?」
ヴェンデリンが、何とか話に入って来ようとする。
「美味しいものを食べるのも趣味の一つよね。
ヴェンデリン様、小さいのに趣味を持っているなんてさすがですね」
キャサリンに言われて一瞬喜んだものの、ヴェンデリンはふくれっ面になった。
「もおーっ。
キャサリンおねえちゃん、ボクは小さくないよ」
「ごめんなさい。
ヴェンデリン様は、私の騎士になって下さるんですものね。
それで、おいしいものって何かしら?」
ンフフー とヴェンデリンが満足そうに笑う。
「あのねえ、ボクこの前までお肉が世界で一番おいしいものだと思ってたんだ。
でもお城の料理長がね、生クリームの乗ったケーキを作ってくれたんだ。
甘くてフワフワで、口に入れたら溶けちゃうんだよ。
あんなおいしいものがあるなんて、ビックリしちゃったよ」
「ああ、俺達も一緒に食べたけど、確かにあれは美味かった」
「確かにそうだね」
エドワードもゲオルグも同意した。
「そうかあ。
作ってあげたいけど、おねえちゃんはお菓子作り苦手なんだよね」
3人というか、ヴェンデリンの母を含めて4人がポカーンとキャサリンを見る。
(あっ、そうか。
貴族令嬢が、自分でお菓子を作ったりなんかしないんだ。
ちょっと失言だったけど、そういう前世での女性の嗜み的なものが求められないのは助かるー)
そうこうするうちに、ノーベル公爵夫妻が皇帝陛下との打ち合わせを終わらせて、応接室にやって来た。
「どうだ、キャサリン。
どっちと結婚するか決めたか?」
「いやですわ、お父さまったら」
キャサリンは、ポーズではなく本当に困った様子を見せる。
「どっちじゃないよ。
おねえちゃんは、ボクと結婚するんだから」
ヴェンデリンが口を尖らせる。
「いえいえ、僕たちもそんなに簡単にお嬢様を諦めたりしませんよ」
ゲオルグが、片手を前に出して公爵に礼をする。
「こういう風に、スマートに行動出来ないうちはお前の負けだな」
エドワードが、ヴェンデリンの頭を撫でるが、
「今に見てろよー」
と言って、ヴェンデリンは走って行って母の後ろに隠れた。
その子供らしい仕草に、場は笑いで包まれた。
今回はヴェンデリンの助けもあって、話が弾んだ気がした。
そして、ゲオルグとエドワードの趣味も知ることが出来た。
「よしっ」
キャサリンは、隠れてガッツポーズを取った。
次に会うまでに、この世界での絵と音楽の状況を調査して、ヴェンデリンの助けなしでも話が弾むように対策を打つ。
キャサリンの瞳に、メラメラと炎が揺らめいた。
「いよいよ爆薬令嬢として、本格的に活躍する日が近づいてきましたわ。
立てば爆薬、座ればドッカン、佇む姿は決死の花。
決め台詞も用意しましたし」
※その決め台詞は、恋愛に役立つことは無いと思われる。




